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石坂公成先生の書から”結婚・幸福”を考察 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

普段そんなことを考えませんが


昨日、とある年配の知り合いの方と話し


プライベートなことなので詳細は


伏させていただきますが


伴侶との永遠の別れをお聞きするに及び


人生を自分なりに深く思うと同時に


この書に巡り合ってさらに考えた。



結婚と学問は両立する: ある科学者夫妻のラヴストーリー

結婚と学問は両立する: ある科学者夫妻のラヴストーリー

  • 作者: 石坂 公成
  • 出版社/メーカー: MOKU出版
  • 発売日: 2002/07/01
  • メディア: 単行本


まえがき から抜粋


このところ、生命科学では遺伝子が大はやりである。

クローン特集などというものが確立されたので、マスコミはマイケル・ジョーダンやイチローをたくさんつくることができるようなことを言っている。

日本のマスコミによってつくられた風潮は、

”人の一生は遺伝子によって決まってしまう”

ということらしい。

ところが、幸いにして、人間の一生はもっと面白いものである。

我々自身の人生から明らかなことは、人間がどこへ行って、何をするか?

ということは、遺伝子ではなく、運命(偶然)によって決められているということである。


前著『我々の歩いて来た道』に書いたように、私は二つの偶然が重なった結果、学生時代の夏休みに伝染病(現在の東大医科学研究所)へ行くことになり、さらに二つの偶然が重なって、中村敬三先生の教室へ行った。

もし、そのうちの一つの偶然でも欠けていたら、私は先生の教室へは行かなかっただろうし、したがって、大学を卒業してから免疫学をやることにはならなかったであろう。

照子が次の冬休みに中村先生の教室へ行って実習を受けたのは、彼女の親友の家が先生の家の隣にあったからである。

つまり、半年の間に起こった五つの偶然が重なった結果、私と照子は顔をあわせることになった。

照子の言葉をもってすれば、それは運命の神のなせる業(ワザ)である。


こうしてみると、我々の人生は偶然によって支配されていたことになる。


私は身なりにまったくかまわない男である。

ことに学生時代は、戦争の影響もあって、父のお古のカーキ色の服を着て、兵隊靴を履いていたから、どう見ても、女の子にアピールするような格好ではなかった。

そんな私に照子が熱を上げたのは何故だったのか?

不幸にして、私はそのわけを知らない

我々夫婦は、何でも話し合えたはずなのに、50年の結婚生活の間に、私がその理由を照子に訊ねなかったのは一生の不覚であった。


しかし、照子自身も、その理由はわからなかったかもしれない。

人間の感情などというものは、遺伝子が全部わかっても、いかに脳神経科学が進歩しても、なかなかわからないであろうし、たとえメカニズムがわかったとしても、それは人間にとってあまり役に立たないものかもしれない。


I 我々の背負った宿命


から抜粋


照子が学生時代からもっていた悩みは、どうしたら学問と結婚を両立させることができるか?

ということだった。

女学校から女子医専(医学専門学校)を通してずっと首席だった照子にとっては、職業をもって、世の中に貢献することは、自分の背負った宿命であったし、人生の目的であった。

しかし、50年前の日本の社会では、それは極めて困難な課題だった。

そのうえ、男の兄弟のない照子は、婿養子をとって家を継ぐことを期待されていた。

しかし照子は、親も家も財産も捨てて、無一文の私の腕のなかに飛び込んで来てくれた。

したがって、照子に学問と結婚を両立させることは、私の人生の目的でもあった。


ものすごい強い結束のパートナーシップ。


お互いがイーブンでフラットな関係、


もちろん時代が違うから封建的な態度も


あったであろうけれども、良い関係を


キープできたのはお二人を繋いだ


”仕事(学問)”で、力を合わせての


”成果”だけがものをいう実力の世界だったから


かな、と。


そういうのは、夫婦が同じ仕事だとすると


本当に稀だなあと思いつつも、一転、


多くの夫婦が異なる仕事、または一方だけが


仕事を持つ中でも、”良い夫婦”の条件って


多かれ少なかれ、そういうものなのかも


しれないなと思ったり。


その流れもあり、自分としては


照子夫人の結婚についての考えを述べられた


手紙が興味深かった。


「…学者の家が、とかくすると冷たい家庭になりやすい家…そして陰にFrau(妻)の大きな犠牲が横たわること。

私はHeiraten(結婚)に対しては、決して一方の犠牲の上に立った一家の形成であってはならないと思います。

お互いに切磋琢磨し合い、おぎないあい、そしてあたためあってお互いが何等かの形で成長し、向上してゆく所に始めてHeiratenの意義があるのではないでしょうか?

また、それが私の結婚の理想です。

こういう云いつつも、現実に家庭がうるおいのないものになってきたら、私は学問を捨てて、家庭に入って了い、良い家庭を作るために専念する様になるでしょう。

でもそれは私にとっては本当の幸福を味わい得ない生活だろうと思います。


私は出来たら一生御勉強したい

そして同時に、人間として明るいあたたかな生活が(物質的ではなく精神的に)したい

それだけです。」


照子が言っていることは概念的だったが、これが自分の結婚についての彼女の理想だったのだろう。


あとがき から抜粋


私と照子は、デンバーでも同じ研究室で働いた。

ジョンス・ホプキンスに移ってからは、二人は別々の研究室を持っていたが、それらは同じ研究棟の同じフロアにあった。

照子は、

”貴方は忙しい時にお昼を食べ忘れてしまうから…”

と言って、昼食の時は、毎日私を食堂へ引っ張って行った。

また、照子は長い間自分で運転しなかったから、出勤する時も、帰る時も一緒だった。

私は夕食後、再び研究室へ戻ることがしばしばだったが、少なくとも3度の食事は照子と一緒だったし、買い物に行くのも一緒だった。

こうしてみると、一生を通じて我々くらい一緒の時間を過ごした夫婦は珍しいのではないかと思う。


そんなにいつも顔をつきあわせている夫婦が、毎年、2、3度カードを交換するということは意味のないことなのかもしれないが、それでも、照子がそれを要求したのは、彼女がロマンティックであるのと、”わかっていても証拠がほしい”という心理状態によるものだったのだろう。


照子もカードを書くことで幸福感を味わった様だし、時によっては、それを書くことで、自分の決意を自分に言い聞かせていたように思う。

また、何でもしゃべりあっている夫婦でも、面と向かって言い難いこともあるが、書くのなら真意を伝えることができる。

私はものぐさで、忘れっぽい人間だから、照子が”カードショップへ寄って、カードを書いましょう”と言わなければ忘れてしまうことが多かったのではないかと思う。

したがって、私にはそんなことを言う資格はないのだが、私は新婚のご夫婦や、これから結婚する人たちにはカードを交換することを勧めたい。


この後、日本の夫婦は男や女はかくあるべし、


という固定観念に縛られていると


いうことを指摘される。


そのような日本の習慣から言ったら、ワイフのラヴレターを公開することなどはもっての他であり、私のしていることは、(日本の)社会人としては、するべからずことだったのかもしれない。

照子も、”しょうがない人ね、はずかしいじゃないの!”と言うかもしれない。

それでも照子は私を許してくれるだろう。

彼女は自分の人生を誇りに思っていたはずである。

しかも我々は50年のうち、35年をアメリカの社会のなかで過ごした夫婦だし、その上我々夫婦は愚直である。

その意味で私の非常識は大目に見ていただきたいと思っている。


ものすごく読みやすい簡素な表現で


この書全体が記され、この著者は


本当に世界的な学者なのだろうか


という無駄な疑問。


ちょっと略歴を調べれば分かる事でございます。


それにしても奥様との馴れ初めからを綴った


あえて苦戦・苦闘と言わせてもらいますが


いろいろな辛いことも含めての


”愛”としかいいようのない石坂先生の人生は


楽しそうで本当に読んでいて愉快な気分に


なることが多かった。


これまた、本当に世界的な学者なの?


とまたまた無駄な思考。


しかも業績(lgE)を読んでもまるで理解できない


浅学非才っぷりは、我ながら


もはや如何ともできない。


それは一旦置いておいて石坂先生の書に戻るが


偉い人ほど偉ぶらないと言うやつで


石坂先生の場合、諸々無頓着だったゆえ


自分が見えてなかったのかもしれないし


世間の流れには興味がなさそうなことは明らか。


仕事(研究)と奥様(家庭)のこと以外は


頭になさそうだなと読んで思った次第。


そんな不器用で愚直な人間であればこそ


この書のような人生を歩んだことは


想像に難くない、とはわかったような言い方で


あんた何様なのよ、と自分に問うけれど


一つだけ言わせてほしいのは


パートナーによって大きく人生が変わるのは


本当にそうなのよ、と言うこと。


そしてそれを幸せと感じることが出来たら


それはもう幸せなんだよね、と言うことで


石坂先生の書からあらためて”結婚・幸福”を


考えた、夜勤明け休日の午前中でございました。


もちろん、結婚が全てではないし、独身でも


幸福な人は沢山おられるでしょうけれども


自分は、って話でございますことを


付記させていただきたいと思っております。


 


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