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2冊の柳澤桂子さん書籍から環境問題を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]


いのちと放射能 (ちくま文庫)

いのちと放射能 (ちくま文庫)

  • 作者: 柳澤 桂子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/09/10
  • メディア: 文庫


2007年出版だけど最初に上梓されたのは1988年


チェルノブイリの少し後。


アメリカで生活をされていただけに


アメリカの原発事故のことも


ご存知で、さらに科学者の視点をお持ちだから


原子力への警告って他の方にないものがある。


自分は昨今、他の方の環境問題本を


読み漁ってきたので違う視点もといった思いもあり


かねてより心から尊敬している


柳澤さんの本も購入して拝読。


私たちはすでにいろいろな化学物質で

地球をよごしてきました。

けれども放射性物質による汚染は、これまでの化学物質に

よる汚染とは比較にならないほどおそろしいものです。

しかもそれがチェルノブイリの事故のように空高く

噴き上げて地球中に降ってくるのです。

また私たちは、捨てかたもわからないごみを自分たちの

欲望や快楽のためにどんどんつくり出して、

地球をよごしているのです。

人間は原子力に手をだしてはいけません

原子力は禁断の木の実です!

 

  要するにどうすればいいか、といふ問いは

  折角だどった思索の道を初にかへす。

  要するにどうでもいいのか。

  否、否、無限大に否。

  (高村光太郎「火星が出てゐる(1927年)」より)


「あとがき」から抜粋


ここ数年の間に、放射能や原子力発電の恐ろしさに

ついて書いた本がたくさん出版されました。

けれども、放射能の恐ろしさを生命科学的な

観点からしっかりと説明した本がないことに

私は気がつきました。

放射能のほんとうの恐ろしさは、突然変異の蓄積に

あると思います。

原子爆弾や原子力発電の事故によって、

地球が壊滅してしまわない限り地球は汚染され、

全ての生物において突然変異の蓄積が進みます。

その結果、何が起こるのかということを

予想するのは難しいでしょう。

生命の自然の歴史に、

人為的な因子を加えることは、

わたしたちの快適な環境を損なうことに

なるでしょう。

進化の方向が狂ってしまうかもしれません。

いずれにしても、40億年の生命の歴史のなかで

生きるように作られてきた現在の生物にとって、

それは好ましいことではありえません。

これから生まれてくるたくさんの子孫に、

美しい地球を残すには、快楽のため無制限に

放射性物質を使ってはならないことだけはあきらかです。


余談だけど、この本の帯は、音楽家の坂本龍一さんで


「放射能はなぜ怖いか。その理由がわかります」



いのちと環境: 人類は生き残れるか (ちくまプリマー新書)

いのちと環境: 人類は生き残れるか (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 柳澤 桂子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2011/08/08
  • メディア: 新書


2011年3月、東日本大震災が起き


何かに突き動かされ書かされたのだろう。


買う前にちらと立ち読みした時「環境問題」は言うに及ばず


「京都議定書」「IPCC」「原発反対の理由」など


最近自分の中で看過できないキーワードがあったため


購買意欲を決定まで押し上げたということは


どうでも良いけど付記します。


京都議定書は2002年に発効する予定でしたが、

2001年にアメリカは批准を拒否して

条約から離脱しました。

世界最大のエネルギー消費国が加わらないことになり、

世界は動揺しました。オーストラリアも

離脱を表明しました。

議定書は無効になってしまうかと思われましたが、

受け入れの判断を見送っていたロシア連邦が2004年に

批准したので、京都議定書は2005年に国際法として

発行しました。

離脱していたオーストラリアも2007年の政権交代後に

批准しました。

COPはその後も毎年開かれています。

2008年、ポーランドのポズナニで

おこなわれたCOP14では、

2050年までに世界全体の排出量を少なくとも

50パーセント削減するという長期目標を決めようと

日本をふくむ主要先進国側が提示しましたが、

先進国が2020年までの中期削減目標を

示すのが先だという、

発展途上国側からの強い反発が出て、

会議は合意にいたらずに終わりました。

2009年、デンマークのコペンハーゲンで

おこなわれたCOP15は、京都議定書に続く

あらたな議定書の採択を

目指していました。

京都議定書には2013年までの目標しかないため、

それ以降の先進国の新たな削減目標を決め、

京都で見送った途上国にも削減目標へ

参加してもらうこと、

そして法的な拘束力をもつものにしようと

議論が交わされました。

2010年、メキシコのカンクンでおこなわれた

COP16は、洪水や干ばつなど温暖化による

被害を受けやすい途上国への

資金援助をするための基金の設立や、次の議定書を

つくるため先進国・途上国両者が譲歩することを決めました。

一進一退、というべきなのかどうか、

どうしても筆がためらわれます。

結局のところ、各国が自国の利益を主張していて、

なかなか話がまとまらないのが現状です。

COPは締約国会議と翻訳されていますが、

もとの英語は

Conference Of the Parties、

つまり当事者国会議という意味なのですが、

気候変動の当事者であるという意識が

あまりにもないことにあきれてしまいます

COP15で、温室効果ガス排出量世界一である

中国は「自主的」な削減目標を発表しています。

非協力的だとは思われたくないけれど、約束して

他国にどうこう言われるのはいや、

という態度に見えます。

排出量二位のアメリカは、オバマ大統領が

温暖化対策に向けて積極的な姿勢を見せています。

クリントン政権が合意した京都議定書には

縛られたくないと、あっさり離脱を決めた

前任のブッシュ大統領の態度と

比べれば前進といっても良いでしょう。

同じCOP 15の開会式で、当時の鳩山首相が

「日本は2020年までに1990年比で25パーセントの

温室効果ガスを削減する」と宣言し、

世界の注目を集めました。

しかしこの発言は、日本の産業界などからは

批判されました。

そんなことをしたら世界の経済競争に

負けてしまうというのです。

どこの国も他国に負けたくないと思っています

そのように争っているうちに、

地球は生物の棲めないところに

なってしまうかもしれないのに、

それでも国の経済がたいせつなのでしょうか?

非現実的だという批判もありました。

たしかに日本は高い省エネ技術を持ち、

はやくから省エネに取り組んできていますから、

京都議定書で定めた削減業務である

マイナス6パーセントの達成すら危うく、

逆に排出量は増加しているくらいです。

実現がなかなかむずかしいことは

わかっています。

鳩山前首相になにか具体的なアイデアが

あったわけでもなければ、

ほんとうに覚悟があったのかどうかも

わかりません。

けれども非現実的であったとしても、

現実的なことしかしなければ、この豊さは

持続できないというのが現実なのです。

私たちはほんとうに地球の現状を知って

精一杯の努力をしているのでしょうか?


アメリカの流れ、この後トランプ氏の


アメリカファーストとなり


バイデン大統領で少し譲歩があるのかと


思ってたところに


コロナ・ウクライナだからな。


先行き、見通しは暗いと感じさせる。


京都議定書もパリ協定に引き継がれたのか?


いずれにせよ、時の流れを感じるが


柳澤さんのおっしゃることは普遍的だ。


悲しむべきことと思うけど


あまり好転してない印象の環境問題。


「おわりに」から抜粋


私たちは地球を壊してしまいました

その原因は人口の増加と産業がさかんに

なりすぎたことです。温室効果ガスも増えています

いずれにしても私たちは今の生き方を

考え直さなければなりません。

けれども二酸化炭素の削減をとってみても、

国は自国のことばかり考えていて

譲り合おうとしません。

砂漠化にしても、森林破壊にしても

地球規模で相談して、

なんとかしなければ間に合わないところまで

来ているのに、話し合いは進みません。

人口問題だけが進展しはじめましたが、

遅きに失した感があります。

本書で述べてきたように、

私たちの意識の進化の

レベルが低すぎるのだと私は思います。

(略)

まだ、今すぐみなさんにできることがあります。

まず自分の意識レベルを上げるような勉強をしてください。

いい芸術に触れることをお勧めします。

特に優れた文学を読みよく考えてください。

あなたの周囲の人の意識レベルを上げるような

会話をしてください。

(略)

今日一日幸せに過ごせたら、感謝しましょう。

そして電気をはじめ、すべてのものをたいせつに

使いましょう。

人類の成熟に向けて日々努力しましょう。


なんか、美輪明宏さんと同じことを


おっしゃっているような。


行き着くところは、同じなのかな。


でも、全人類的な視点って必要だと思う、と言うと


みんな笑うんだよね、今の社会って。


自分の言い方にも多分に問題あるのだろね。


センス、感性を磨くこと、これ以外に選択肢は


ないように感じる秋の虫が大合唱する夜にて。


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