クーン博士の難解な”構造”の周りを読む [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]
50周年記念版に寄せて
イアン・ハッキング
から抜粋
古典的名著といえる本は、そうそうあるものではない。
本書はそんな名著のひとつだ。
読めばそれとわかるだろう。
この序説は飛ばして読み始めるといい。
今から半世紀前に、本書がいかにして生まれたのか、本書の影響はどのようなものだったか、本書に主張されていることを巡ってどんな論争の嵐が吹き荒れたのかを知りたくなったら、ここに戻ってくればいい。
今日における本書の位置付けについて、ベテランの意見が聞きたくなったら、戻ってきてほしい。
ここに述べることは本書の紹介であって、クーンと彼のライフワークを紹介するものではない。
クーンはつねづね本書のことを『構造』と呼んでいたし、会話の中ではただ「例の本(the book)」と言っていた。
私は彼の使い方に倣うことにする。
『本質的緊張』は、『構造』の刊行直前か、またはその後まもなく発表された哲学的な(ここでは哲学的を、歴史的に対する言葉として使っている)論文を集めたもので、たいへん参考になる。
そこに収められた論文はいずれも、『構造』への注釈、ないしその拡張とみなすことができるので、併読するにはもってこいだ。
ひとつ、あまり語られていないことがある。
あらゆる古典的名著がそうであるように、本書は情熱のなせるわざでもあり、ものごとを正しく理解したいというひたむきな願望の表れだということだ。
第1節序論冒頭の控えめな一文からさえ、そのことははっきりと見て取れる。
「歴史は、もしもそれを逸話や年代記以上のものが収められた宝庫とみなすなら、現在われわれの頭にこびりついている科学のイメージに、決定的な変化を引き起こすことができるだろう」。
トマス・クーンは、科学についてのーーーすなわち、良きにつけ悪きにつけ、人類がこの惑星を支配することを可能にした活動についてのーーわれわれの認識を変えようとした。
そして彼はそれに成功したのである。
訳者あとがき から抜粋
周知の通り、単行本としての『科学革命の構造』は1962年にシカゴ大学出版会から原書が刊行されたあと、1971年に中山茂訳の日本語版がみすず書房から刊行され、以来日本でも半世紀以上にわたって広く読まれてきた。
『科学革命の構造』の内容は第二版の刊行を持って定まり、第三版では本文の改定はなされなかった。
しかしクーンの没後、2012年に刊行された原著第六版は、刊行50周年を記念してイアン・ハッキングによる序説を巻頭に収録し、これからの読者に向けて装いを新たにするものとなった。
ハッキングの序説ではクーンのこの著作によって広められた「パラダイム」「通約不可能生」「通常科学」などをはじめとする重要語・概念について、今日的な視点からの解説がなされ、その意義が歴史的に位置付けられている。
ハッキングは自分の序説を飛ばして読みはじめるようアドバイスしているが、『科学革命の構造』がどういうものかをあまり知らずに読みはじめる人にはとりわけ、今回追加された序説は良い手引きになるだろう。
2022年11月 青木薫
青木先生ご指摘のように、読んだほうが良い
ハッキンスさんの序説は
CDでいえば、質の高いライナーノーツのようで
当時の世相や社会状況、この書の生まれる時代背景等
書かれていてクーン先生のことをイメージしやすい
って、ライナーノーツはねえだろう、例えとして
って思っております。
肝心の中身は難しすぎてわからないところが
多かったが、単語や人名等ひっかかるものがあり
機会があれば、ないかもだけど改めたい所存です。
ちとこれは高いハードルすぎるのかもしれない。
余談だけれど、日本版の本の装丁のデザインが
とても良いと思った次第でございます。
それにしても低気圧だからなのか頭が痛い
自然と身体の関係という構造を感じざるを
得ない平日の休日の午前中でございました。