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中村先生たちの訳・監修本から”DNAの警鐘”を見る [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]


細胞の分子生物学 第6版

細胞の分子生物学 第6版

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2017/09/15
  • メディア: 大型本

翻訳にあたって

2017年7月 中村桂子・松原謙一


から抜粋

1983年。

”Molecular Biology of the Cell”と表紙に書かれた教科書の登場に驚き、その内容の見事さに感銘を受けた時のことは今も忘れない。

DNAを遺伝子として捉えることで生命現象を解明できると考えていた分子生物学者が、生きることを支えるのは細胞であることに気づいたのである。

もちろんそれは、”Molecular Biology of the Gene”が進展した結果であり、学問は地道な積み重ねの上にしか飛躍はない。


以来30年以上、「細胞の分子生物学」の進展にはめざましいものがあり、本版のまえがきには、第五版以来これまでに500万を超える論文が発表されたとある。

これを読みこなし、この分野の全体像を作ることがいかに難しいか。

研究の進展は理解を深めると同時に、問いをたくさん生み、時に謎を深めてもいる。


新しい知見を盛り込んだ大部の著書の翻訳はとても大変な作業であり、新版を前に迷ったが、内容の充実ぶりに押されて取り組んだというのが正直な気持ちである。


各版を追うと、その時代の研究の動きが見えて興味深い。

当初は細胞といっても植物と神経には独自なところがあると捉え、これらを別に扱っていた。

しかし、研究が進むにつれて、基本は同じという考え方にまとめられた。

ある時は、近年関心が薄れてきていた感染症の問題が浮かび上がり、そこでそれまであまり眼を向けられていなかった先天性免疫が一項目として取り上げられるようになったこともある。


そして第6版である。

ゲノムをもつ細胞に関する生物学がみごとに整理されたといって良い。

特に近年、新しい研究方法の開発・改善や細胞の可視化によって研究が急速に展開しており、具体的な研究の進展が細胞の理解を進めたことがわかる。

教科書としてもこれだけ版を重ねる必要があったわけだが、30年を越える研究によって細胞の分子生物学の基本はできたといってもよいのではないだろうか。


もちろん、まだわからないことはたくさんある

各章の最後にある「まだわかっていないこと」を見ると、ここにこそ面白いテーマがあることがわかる。

ここに読者がこの問いに答えようという気持ちになってほしいという願いが込められている。


さらに大きなテーマもある。

「まえがき」にあるように、今や私たちの眼の前には、ゲノム解析をはじめとしてタンパク質相互作用、遺伝子発現などについてのデータの山がある。

しかもデータベースには日々更なるデータが入ってくる状況である。


ビッグデータの時代である。

そしてこれは「細胞とは何か」を知るための宝の山と言ってよい。

しかしそれをどう生かすか。

残念ながらそれは見えてこない。

「新しい細胞の生物学」とよんでもよいかもしれない学問を構築しなければ、細胞はその本当の姿を見せてはくれないだろうという状況になっている。

これこそ本書で学ぶ若い人たちの仕事である。


本書が新しい生物学を生み出す研究に生かされることを心から願っている。


PART 1 細胞とは


細部とゲノムから抜粋


地球上の細胞が共有する特徴

ゲノムの多様性と生物の系統樹

真核生物の遺伝情報


地球は生物、つまり周囲から素材を取り入れて自己を複製する複雑な組織を持った不思議な化学工場で満ちている。

生物はとてつもなく多様に見える。

トラと海藻、あるいは細菌と木ほど違うものがほかにあるだろうか。

ところがわれわれの祖先は、細胞もDNAもまったく知らないまま、そこに何か共通するものがあることを感じ、その”何か”を”生命”と呼び、それに驚嘆し、定義しようとし、それが何ものであり、どう働くのかを、物質との関連で説明しようとしてきた。


前世紀でなされた多くの発見で、生命の本質にまつわる神秘は取り除かれ、今では、生物はすべて細部からなることがわかっている

細部は膜で囲まれた小さな単位で、化学物質の濃厚な水溶液で満ちており、成長しニ分裂して自分の複製を作るという優れた能力を持つ。


細胞は生命の基本単位なので、生命とは何でありどう働くかという問いへの答えは細胞生物学(Cell biology)に求めることになる。

細胞とその進化をより深く理解することにより、地球上の生命の神秘的起源、驚くべき多様性、広範な生息場所といった、壮大で歴史的な問題に取り組むことができる。


かつて、細胞生物学の始祖の1人、E.B.Wilsonが強調した通り、”生物学のあらゆる問題の鍵は細胞に求めなければならない。なぜなら、すべての生物は一個の細胞である(あるいは一個の細胞であった)からである”


外見の多様性とは裏腹に、生物の内部は基本的によく似ている。

生物学は、生物個々を特徴づける驚くべき多様性と基本的機構にみられる驚くべき恒常性という二つの主題を対照させる作業といえる。

この章ではまず、地球上の生物に共通の特徴を考え、次に、細部の多様性を概観する。

そして最後に、あらゆる生き物の仕様を記述する分子の暗号(コード)が共通であるおかげで、仕様を読み、計測し、解読することによって微生物から巨大な生き物まで、あらゆる生命体を統一的に理解できるようになったことを見ていく。


ここまで分解され詳細を解説・分析している


細胞の本は、おそらくないのでしょう。


”まだわかっていないこと”というのも


中村先生ご指摘されているけれども


今後生物学を志す若い人たちへの指針に


なろうというものではないかと推察できる。


それはそれとして、自分もいろんなDNA本を


読んでみたものの門外漢の自分がここまで


学術的な書を読むことの必然性のなさに


驚きを隠す事を禁じ得ないのでございまして。


それはともかく、本日ブックオフに


行ったらこの書籍の第五版だったか、があり


その表4の写真が、ビートルズの


”A Hard days night”のデザインだったのに対し


この第六版は、”Please Please Me”だったのは


ちょっと気になった次第で


チームとかクリエイティブとかという意味での


DNAの継承を表現されているのかなと


思ったことはどうでもよい言いたいだけで


ございましたことを謹んでお知らせいたします。


 


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