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斉藤美奈子さん著作3冊から日本を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]

こういう表現の潔さとか視点って


私の感覚だけかもしれないけれど


女性視点じゃないとできない。


大人の男性ってどこかで


やっぱり気遣いとか媚びてしまう、とか


ひよってしまうのかなあ。


大人って何って議論は置いておいて。


■1■ 文壇アイドル論(2002年)


「はじめに アイドルはつくられる」から抜粋


(略)

80年代、90年代というものは、

大人の論理と子供の論理、

文学のことばと非文学のことば、

女の発想と男の発想などなどが、

激しくスパークした

(またはしそこなった)時代だったように思います。

何が新しくて何が古いのか。

対立する二つの言説の、

どちらに理があるのか。

すぐにはわからないことも多く、

簡単には結論が出ません。

ただ、ひとついえるのは、

異なる論理が激突するからこそ、

人気者をめぐる言説はおもしろい、

ということです。


本文では、以下各作家への独自の研究論文ともいうべき考察がなされる。


村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真理子、


上野千津子、立花隆、村上龍、田中康夫


すごいメンツ。


そしてこの書籍の締めくくり。


「アイドルたちのその後ー


文庫版のあとがきにかえて(2006年)」から抜粋


賞賛があれば批判もある。その意味で、

毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい「文壇アイドル」は、

批評の自由が保証されているかどうか、メディアが健全に

機能しているかどうかを計るバロメーターのような役目も

果たしているのかもしれません。


いやあ、もうすでに大御所となっている方達に


異論を唱えるって、


なかなかできないですよ。


まず読まないと始まらないですからね。


この方達の書籍の全てではないとしても、


代表作だけでも相当な量と高い質の


読書力を要求されるよ、論じるに。


って感想を書いても仕方ないけど、


ってそういうブログなんだけど、


とにかくビビったってことで。


次です。


若者向けの政治に関心を持ってもらうために、


ひらたい表現で語りかけるこの書籍は、


政治に疎い自分にも分かりやすくてありがたかった。


選挙前に読みたかった、


今度の選挙のとき、読み直そう。


 


■2■ 学校が教えないほんとうの政治の話(2016年)


「原発に賛成?反対?」から一部抜粋


(略)

原発推進派はいいます。

万全の準備をしておけば原発は安全なんだよ。

そのために原子力規制委員会があるんじゃないか。

だいたい日本は原発なしにはやっていけないんだからな。

どうやって安定したエネルギーを供給するんだよ。

火力発電はコストがかかりすぎるし、

地球の温暖化を促進させるんだぜ。

電力料金がはねあがってもいいのかよ。

一方、原発反対派はいいます。

原発に絶対安全なんかないって、福島の事故で

わかったじゃないか。

規制委なんか信用できるかよ。

事故が起きたときのリスクは、

ほかの発電の比じゃないんだぜ。

使用済みの核燃料の処分場もないんだぜ。

だいたい日本の電力は足りているじゃないか。

原発が一基も動いていなかったときだって、

日本は電力不足にならなかったじゃないか。

 

あなたはどちらの考え方に賛成でしょうか。

原発は経済の問題ともからんでいます。

原発の企業城下町と化した原発立地地区では、

原発なしには経済がまわらないという

現実もあるのです。

 

それでも私は、原発はやめたほうがよいと思います。

一般の人が1年間にあびてもいい放射線量の限度を、

国際放射線防護委員会(ICRP)

年間1ミリシーベルトとしています。

一方、原発労働者の被曝限度は、

どのくらいだと思います?

通常作業の場合は5年間で

100ベルシーベルト

年間50ミリシーベルト)。

それだって十分高いけど、

緊急時の上限は年間100シーベルト

通常の100倍です。

いや、ちがうわ。

2016年4月から、緊急時の被曝限度

年間250ミリシーベルト

引き上げられたので、250倍

政府や電力会社はもちろん、

「作業員の健康には十分配慮する」

というでしょう。

だけど、国家も電力会社(資本家!)も

信用していない私には、

とうてい信じられません。

労働者の健康と引きかえにしないと

維持できない経済って何?

繊維女工や炭鉱労働者の時代と

何も変わってないじゃないの。

原発の是非については、他の政治的トピックと

すこしちがったテーマですから、

従来の左派と右派のようにグループ分けは

できていないはずです。ですが、3・11当時の

政権だった民主党政権は2020年代までに

原発ゼロをめざして、徐々に脱原発を

ベースロード電源とすると決定。

国内で新しい原発を建設するのは

もうむずかしいと判断したのか、

国内の原発メーカーといっしょに、

外国に原発の売り込みに行ったりもしています。

おそらく、国家の方針を支持する

右派の人たちは、原発に賛成し、

国家を信用していない左派の人たちは

反原発、脱原発に傾く。

原発の再稼働に反対する

毎週金曜日の国会前デモで政治に

目覚めたという人も

いるくらいですから、

原発の是非こそ、

いま「国家と個人」の対立関係をするどく

反映しているのかもしれません。


「選挙公約より政党で選べ」から全抜粋


2016年現在の日本を騒がせている

政治的トピックを、

ここまでランダムに拾ってきました。

右派(保守)はこう、

左派(リベラル)はこう、

と無理矢理まとめましたが、

ひとりひとりの考え方はちがうので、

ここで書いたような意見がすべての

右派、左派に

当てはまるわけではありません。

Aの案件は右派の考えに近いけど、

Bの案件は左派に賛成だな、ということも

あるでしょう。

では、あなたの意見を政治に

反映させるにはどうするか。

もちろん選挙に行き、あなたの考えに

近い候補者や党に投票するのです。

しかし、

選挙のとき、あなたはガッカリするはずです。

安全保障政策も、

憲法も、

領土問題も、

歴史認識も、

原発も、

ここで取り上げたようなトピックは、

おそらく選挙の争点に

なっていないからです。

なんだよなんだよ、だまされた!

騙したのではありません。

選挙とはそういうものなのです。

左右の意見がするどく対立するトピックを争点に

したらどうなります?

考えが違う人の票は確実に逃すでしょ。

どんな党でも(与党はとくに)幅広い層から票を

集めたいので、そんな面倒は避けて、誰もが

納得するような政策しか公約にしないのです。

「景気をよくします」とか

「社会保障をしっかりやります」とかね。

公約が破られたり、公約になかった

重要法案が提出されることも

珍しくありません。

「選挙に行け」と若者に説教する人は

「政策をよく見て候補者を選びなさい」

といいますが、

それはタテマエオタメゴカシです。

いいことしか書いてない家電製品の広告と同じで、

公約を見て候補者を選択するのは不可能なのよ。

ではどうするのか。棄権するのか。

そうじゃなくって、ここは党派で選ぶのです。

与党か、野党か。野党だったら、

どの党を選ぶのか。


「エピローグ リアルな政治を選ぶには」から抜粋


なんでワタシがこんな目に

遭わなくちゃいけないわけ?

どうして彼や彼女がああいう境遇に

置かれているわけ?

そう思った瞬間から、人は政治的になる。

その後の政治的リテラシー

(読み書き能力、ものごとを批判的に見る力)

は勝手に磨かれていくだろうと思います。

情報を集め、人と話し、

本を読んで、ニュースも見る。

結局はそういうことの積み重ねしかないのですが、

私憤と義憤と二人連れだと、

おもしろいパワーがでる

すべてのスタートは「こんちくしょう」です。


「政治家のやることはただ一つ、


目標を数値化して達成すること、


それができなかった政治家を辞めてもらう」


と言ったのは村上龍氏。


それがなんでか、昔から


できないんだよな、日本は。


選挙視点に話を戻すと、


かのジョン・レノンも


「選挙は行った方がいい、


少しでもマシな方に票を入れるんだ」


と言ってたから自分はそれを守っている。


最後、斉藤さんの真骨頂で締めたいと存じます。


 


■3■ 忖度しません(2020年)


「続・裸の王様」から全抜粋


アンデルセンの『裸の王様』には続編が

あるのをご存知だろうか。

「これはバカには見えない布で作った服です」と

いう仕立て屋の言葉にだまされ、

裸でパレードをした王様。

みんなが王様万歳を唱える中、

とりの少年が叫んだ!

王様は裸だ!それを聞いて人々も叫んだ。

裸だ裸だ。

以上が『裸の王様』。

 

『続・裸の王様』はその翌日からはじまる。

不機嫌な王に側近が進言した。

「すまぬ、私がウソをついていた」。

そうおっしゃれば民衆は納得します。

だが王は耳を貸さず

「パレードなどはしておらぬ」といいだした。

「私や王妃がパレードに関係していたと

いうことになれば、

それはもう間違いなく退位する」。

さあ、大変。

側近は役人を呼んでパレード関係の文章を

破棄か改竄するよう命じ、市中には

「以降パレードという語を口にした者は逮捕する」

というおふれを出した。

 

驚いたのは例の少年である。

傲慢な王。

隠蔽に走る側近。

忖度で動く役人。

なんだこの国は!

長じて彼は王政の打倒を目ざした。

協力を申し出たのは仕立て屋だった。

愚かな王に仕立て屋も

内心あきれていたのである。

 

続編は童話ではなく大人向けの短編で、

作者はアンデルセンの甥。

検閲から逃れるべく地下で出版され、

明治末期には邦訳もされている(訳者不明)。

邦題はなぜか『桜の王様』。

理由はわからない。

(東京新聞「本音のコラム」2020年4月1日より)


さすが東京新聞、忖度ないなー。


60、70年代のロックの香りする。


余談だけれど、この「続・裸の王様」が


掲載されているページがユニーク、


書籍の表紙めくっての


いわゆる表2・見返しといわれる、


本文に入る前、中表紙さえも前の


見開き2ページにあるのだけど


ここにも斉藤さんのメッセージが


込められているのは、深読みしすぎか。


立ち読みでも読んでいいよ、短いから、


これにビビッときたら、あなた、買ったらどう?


といわれている気がした。


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