柴谷篤弘博士の”驚愕”の料理本を読む [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]
- 作者: 柴谷 篤弘
- 出版社/メーカー: 径書房
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 単行本
目次 に挿入されている訓示的な短文から
あなたがどんなものを食べているか
言ってみたまえ。
あなたがどんな人物か言ってみせよう。
ー
[伝]フランスの美食家
アンテルム・ブリヤ-サラヴァン
A.Brillat-Savarin(1755-1826)
柴谷博士のプロフィールが他にないものだったので
引かせていただきます。
”職歴”や”著作”はWikiの方が詳しく出ております。
学位
理学博士、医学博士
専門領域
昆虫分類・形態学、動物学、細胞生物学、分子生物学、発生生物学、理論生物学(構造主義生物学・進化論)のほか科学批判、自然保護、差別論、隠蔽研究(政治・社会・文化論)など広い範囲にわたる
こんなに広い専門領域ってすごいのだけど
ご本人的には地続きなものなのか。
”昆虫分類”が”隠蔽研究”と地続きではないよなあ。
まえがき から抜粋
私は生物学者で、料理の研究家でも食品や料理店の専門家でもない。
ただ、ながいあいだ、外国生活をしたため、日々の生活を送るうえでの日常的な意識と、外から日本を見る目が、一般の「日本男子」とちがってきたようだ。
それに生まれつき好奇心が旺盛なために、外国住まいのあいだ、いろいろな国や民族の言語にも料理にも興味を持った。
それがオーストラリアという多文化主義の国で、自分の日常生活のなかに入り込んでしまい、我が家の食卓は、すっかり多文化主義的になった。
1989年以来日本に住みつくようになり、このごろは年齢のせいか億劫になり、一頃は仕事で多忙を極め、また退職金は資金が豊かでないため、旅券も期限が切れたままで、あまり外国へ出ていく習慣がなくなってきたようだ。
レストラン事情や食品事情はそのあいだ、日本でも外国でも急速に変化しているはずである。
だからこの本で書いた私の経験には、時代遅れの面も多いだろう。
だが、「食」は私たちの日常生活にはりついて、時とともに、また地域によっても文化によっても、大きく変わる。
また変わらずにはすまない。
ことに、このごろのように、いろいろの国の料理と食べ物が生活の中に入ってくると、同じものを外国から受け入れるやり方にも、国柄・文化の違いが出てくるだろう。
だから、私は時代と地域といろいろ行き来しながら、日本での現在の外国の食文化を受け入れ状況と、それをさらに学国から眺めたらどう見えるだろうか、というようなことまで、この本で書いてみようとした。
できれば、日本でのわれわれの現在の食事情における偏りを、すこし広い観点から描いてみたかった。
だから「オーストラリア発」なのであり、「世界料理」であって、あえて「民族料理」とか「エスニック」とかを、鍵言葉にしなかったのである。
つまり、いろいろな時期の諸国の料理事情を書きながら、たえず、様々の次元での現在の日本との差異を意識してきたのであった。
つまりは、私は1997年末における日本の食事情のことを、裏側から書いたのかもしれない。
柴谷先生が書く料理本なので、
一筋縄ではございませんで様々な国の
食事情たる随筆や日本の差異を記されているのは
”まえがき”にある通りなのだけれども
まさかの”レシピ”もあり、また手に入りにくいから
日本の食材で代用するなら、ここで買えるとか
日本で食べれるレストランなどの当時の一覧も
掲載されている。
随筆の中には、ここは安い(コーヒー付き800円)
なども!
さらに驚愕するのは”あとがき”に
四半世紀近く台所を一緒に使い、買い出し、料理と
後片付けの実践の中で助言・批判をし、また諸外国・日本各地の料理店での経験をわかちあってくれた伴侶
としての奥方への感謝の言葉を記されている。
柴谷先生らしくないといえば、これほど
らしくない本も他にないだろうという意味でも
貴重な雰囲気を醸し出している書なのですが
そろそろ朝の買い物に出かけないと、と
家の雰囲気が醸し出してきた朝の空気感の
我が家でございました。