知の旅は終わらない:立花隆著(2020年) [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]
知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと (文春新書)
- 作者: 隆, 立花
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2020/01/20
- メディア: 新書
立花ゼミは文系の生徒が多かったという。
高校で物理を取らなかった人と挙手いただくと
予想以上に多くてびっくりされたそう。
21世紀のインテリジェンスの
必須キーワード「バイオテクノロジー」だからだそうです。
「人類の新しい知的到達点」から抜粋
その人たちのほとんどが生物をやっていないはずです。
その人たちには中学レベルの生物の知識しかありません。
分子生物学の知識はもちろんないことになります。
基礎生物学だけでなく、医学、薬学、農学、食品科学など、いわゆるバイオ系といわれる全ての分野がそうです。
バイオの知識なしには、21世紀の知的活動、経済活動の大半がわからなくなるんです。
ですから、理系の人は専門課題に進む中で、それぞれの領域において、最先端のことがわかるところまで強引にキャッチアップさせられます。
しかし、文系の人は、自主努力の積み重ねで自分でキャッチアップしないと、現代の科学技術社会の流れから完全に取り残されてしまう。
学生時代の間に、大変な努力をする覚悟を持たなければならない。
そんな話をしました。
それで一年目の講義で取り上げた理系のメインの項目(多くの固有名詞や事項も触れましたからそのごく一部)は、次のようになります。
宇宙、ニュートン、脳、アインシュタイン、利根川進、相対性理論、分子生物学、CP スノー。
「二つの文化と科学革命」の著者で小説家でもあり物理学者でもあったスノーのように、理系と文系の両方に跨った人もいます。
文系のメインの項目は、キェルケゴール、「荘子」、ポール・ヴァレリーの「カイエ」「テスト氏との一夜」、小林秀雄、デカルト、ヴィトゲンシュタイン、エラスムス、ルター、TSエリオット・・・、
こんな感じでした。
とにかくあらゆることをしゃべりました。
元々、何らかのまとまった知識の伝授を目指したわけではなくて、知的刺激を与えることが主目的でした。
人類の新しい知的到達点に立ってみると、世界がどれほど違って見えてくるか、また、そのような時代に生まれてどのような生を選択するべきなのか、そういうことを考えるのに資するであろうことを、次から次へ片っ端からしゃべったという感じですね。
あっちへ飛び、こっちへ飛びしてある意味では、支離滅裂に見えるかもしれないけれど、「人間の現在」という筋は一本通したつもりです。
将棋の羽生さんとノーベル賞の山中さんの会話と関係があるのかもしれない。
羽生さん・山中さん曰く。
アメリカで「アポロ計画」「ヒトゲノム計画」に次ぐ巨大プロジェクト、前々大統領オバマが2013年に「ブレイン・イニシアティブ」を推進。
アメリカに対抗してヨーロッパでも、巨大脳科学プロジェクト「ヒューマン・ブレイン・プロジェクト」を推進中。ローザンヌ連邦工科大学の主導で、EU(欧州連合)の資金で、スーパーコンピューターを使って最終的にヒトの脳をシミュレーションすることを目標。
「バイオ」と「脳科学」だとちょっと違うのか、
よくわからんけど、若い人はどちらも要注意ワードだろう。
自分は残念だが、その能力も体力もなさそうだけれど。
あと余談になるのかもしれないけど、昨今、第二の
田中角栄待望論を聞くことがあり、また自分も
今の日本の政治家よりはいいのだろうと
思っているところあったのだけど、
自戒の意味を込めて立花さんの言葉を引いておきまする。
「ロッキード裁判批判との闘い」から
角栄政治がもたらしたものを冷静かつ客観的に評価するなら、基本的に害毒以外の何ものでもありません。
角栄の時代がよかったなどというのは、競馬で身上を潰した男が30年前に大当たりを二、三度取ったことを思い出して、「いやあ、あの頃はよかった。天才的な予想屋がいて、その通りに買ったら当たり続けだったよ」などと懐かしがるのと同じです。
実際にはその予想屋もハズレが多くて、その通りに買ってトータルするとマイナスになっているのに、ハズレはみんな忘れてしまうみたいなものです。