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ヒトはどこまで進化するのか:エドワード・O・ウィルソン著/長谷川眞理子解説/小林由香利訳(2016年) [’23年以前の”新旧の価値観”]


ヒトはどこまで進化するのか

ヒトはどこまで進化するのか

  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2016/06/28
  • メディア: 単行本

存じ上げない学者さんの書籍だったけれど


解説の方の文章に惹かれて、ざざっと拝読。


ウィルソンさんは、残念ながら昨年の12月に


亡くなられてしまわれたようです。


I 人間が存在する意味

歴史学は先史学を抜きにしてはほとんど意味をなさず、先史学は生物学を抜きにしてはほとんど意味をなさない。先史学と生物学の知識は急速に増加し、その結果、人類がいかにして誕生し、なぜ私たちのような種がこの地球に存在するのかに光が当たっている。


II 知の統合

自然科学と人文科学という学問の二大分野は、人間の描き方こそ大きく異なっているが、いずれも創造的思考という同じ源から生まれてきた。


III アザーワールド

人間の存在の意味を理解するには人類という種を対局的に捉えるのが一番だ。そのためには、人類を想像しうる他の生命体と比較し、太陽系外に存在するかもしれない生命体とさえ推論によって比較するべきである。


IV 心の偶像

人間の知性の弱点をフランシス・ベーコンが指摘したことは最初の啓蒙主義の主要な功績のひとつである。現在は、それを科学的説明によって定義し直すことが可能だ。


V 人間の未来

テクノサイエンスの時代に自由は新たな意味を獲得している。子供から大人の世界に足を踏み入れようとしている人間と同じように、私たちの選択肢はこれまでよりはるかに広がっているが、その分、リスクと責任も増している。


解説


長谷川眞理子(行動生態学)


人生の意味と自然科学 から抜粋


私たちには両親がいます。

その両親にも両親がいます。

というふうにどんどん先祖にさかのぼっていきましょう。

一方、アフリカの森に住んでいる一頭のチンパンジーにも両親がいます。

その両親にも両親がいます。

というふうにどんどん先祖をさかのぼっていくと、およそ600万年さかのぼったところで、祖先どうしが同じ生き物になります。

それが私たちの共通祖先です。

同じように、庭先にいる一羽のスズメにも両親がいます。

その両親にも両親がいます。

というふうにどんどんさかのぼっていき、二億数千万年さかのぼると、やはり祖先どうしが同じ生き物になります。

というふうにさかのぼっていくと、大腸菌も硫黄細菌も、人間も、スズメもイチョウも、すべての生物は三八億年ほど前の共通祖先にいきつく、ということなのです。

これは素晴らしいことだと思いませんか?


ウィルソンは、1975年の『社会生物学』執筆当時はもちろんのこと、ごく最近まで、血縁選択にそった議論をしてきたのですが、なぜか最近、この理論をひどく攻撃しています。


そのような注意点はありますが、本書には、それも含めて、かなり斬新で挑発的な考えがちりばめられています。

ここから出発していろいろな考えが生まれ、皆さんで議論に花を咲かせていただければと思います。

今の日本は、考えの違う人どうしが真剣に議論し合うという雰囲気が薄くなってきていると思います。

まるで、同じ考えですよとうなずきあうことだけが「和」であるかのように思われていないでしょうか?

でも、それは違います。

多様な考えの人たちが多様な議論を展開し、そして、基本的に他者に寛容であること、それこそが、よりよく、より強い社会を作る原動力だと思います。


ウィルソンは、もうずいぶん年をとっていますが、本書は、ウィルソンから若者への挑戦かもしれません。これを受けて、未来は若者が切り開くものです。


まったくそのとおり、異論はございませんが


蛇足ながら付け加えるとすると、


中高年もまだまだ


尽力させていただきたく存じます。


最後に訳者のあとがきから抜粋。


長年にわたり生物学の研究に打ち込んできたウィルソンは、自らの知識と経験を基に、人間による自然破壊・生物多様性の崩壊が急速に進む現状に警鐘を鳴らしています。

自然科学と人文科学の統合を呼びかけている点や同族意識をあおる宗教の危険性を指摘している点も、国立大学の人文系学部の縮小などという話がでてくる日本の風潮や、世界各地で宗教がらみのテロや内戦が相次いでいる現状を思うと、大いにうなずけるものがあります。


がちがちの文系でアナログ人間の訳者が、「包括適応度」だの「真社会性」だのといった専門用語にひるみながらも本書の翻訳を引き受けた背景には、そうしたメッセージへの共感もありました。

ところどころまぶされた、そこはかとないユーモアの隠し味も含めて、著者の意図がすんなり伝わるような訳を心がけましたが、いかがでしょうか。


そういうことか、ET(地球外生命体)の論考を


かなり多くのページに費やされているのは、って思ったり。


いや、その方面は好きではあるんですけどね、自分は。


この訳者あとがきを読み、さらに著者の雰囲気が伝わり


もう一度読んでみたくなる本でちょっと難しかった。


余談だけど、ウィルソンさんも昆虫好きなご様子で


学者さんって昆虫好きな人多いですなあ。


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