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無垢の歌:ウィリアム・ブレイク著:池澤春菜・夏樹訳(2021年) [’23年以前の”新旧の価値観”]

■煙突掃除

お母さんが死んだ時、ぼくはちっちゃな子供だった。
まだ舌ったらずで「えんとちゅしょうじ」だって言えなかったのに
お父さんはぼくを売り払った。
だから僕は煙突をきれいにして、煤だらけになって眠る。
ちっちゃなトム・ディカーは、
髪の毛を子羊みたいに剃られた時泣いたけど
でも、ぼくは言ったんだ
大丈夫だよ、トム。だって坊主頭なら、君の白い髪の毛が
煤で汚れることもないもの
トムは泣き止んだ
でもその夜、眠った後で、トムは夢を見た
たくさんのたくさんの仲間たち、ディックにジョー、ネッドにジャック、
みんながみんな、真っ黒なお棺に閉じ込められているのを
そしたら、キラキラ光る鍵を持った天使がやって来て
お棺を開けて、みんなを出してあげた

(中略)

天使がトムに言うには、いい子でいたら
きっと神様がお父さんになってくれる、そしたら毎日楽しい事ばかり

(中略)

だってね、もしみんなが自分のお役目を果たしたら
なんにも心配することなんてないんだよ

ブレイクといえば、ドアーズ(ジム・モリソン)のイメージが 強すぎてこの詩集の作品群は、全く予想外。 先入観って怖い、無知蒙昧な自分を恥じる。 タイトルのように、そういう作品を特に 意識したのかもしれないけれど。 ただ、こういったイノセントな詩に触れつつも もしかしたら、この裏に何か潜んでいるのか?といった 怖い印象も若干するのは、自分だけだろうか。 なおかつ、示唆に富んでいるというか。 「詩人」と「吟遊詩人」の違いもわからない自分なんで 適した感じ方じゃないかもしれないけれど。 余談だけれど、キリスト教文化がわからない自分には 作品に対しての「注釈」や全体の「解説」があって、 この本は、とてもありがたい。 (人によっては「そんなのは蛇足だ!」って人もいるだろうけれど 19世紀のイギリスで「煙突掃除」が何を意味しているかなんて、 説明がなければわかる訳がない) この作品と対になっている「経験の歌」と言うのもあるらしい。 さらに余談だけれど、つげ義春さんの漫画で「おばけ煙突(1958年)」ってのを 大昔、「ばく」と言う雑誌が80年後半に再掲載していた。 こちらは生きているのが嫌になる救いや容赦のない漫画だった。

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