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LIFE SPAN(2020年)と養老先生たちの2冊の見解から [’23年以前の”新旧の価値観”]



LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2020/09/01
  • メディア: Kindle版


原題の副題が


 Why We Age-and

 Why We Don’t Have To


翻訳すると


 なぜ私たちは老化し、

 なぜ老化する必要がないのか


なので邦題の「老いなき世界」はちと違うのでは。


不死身になれるわけではないのだし。


正確性よりも浸透性の方を


優先されるのは世の常でございます。


ということで本書の内容と関連してなくて、


どもすみません!言いたいだけでした。


まえがきの前から抜粋


可能性に溢れた場として世界を見ることを教えてくれた

祖母のヴェラへ

 

自分を二の次にして子どもたちのことを考えてくれた

母のダイアナへ

 

私の拠り所である

妻のサンドラへ

 

そして私の孫の孫たちへ

君たちに会うのを楽しみにしているよ


孫たちに「おばあちゃん」とは呼ばせなかった祖母のヴェラさん。


「ばあば」とか親しみを込めた呼びかけも気に入らなかったという。


はじめにーーいつまでも若々しくありたいという願い


「いい人生」を教えてくれた祖母の晩年 から抜粋


もちろん、いい子どもも年をとり、いつまでもそんなことばかりかまけてはいられなくなる。

そして大人は、彼らが学校に行き、やがて働き始め、パートナーを見つけ、貯蓄をし、家を買ってもらいたいと願う。

なぜなら、時間は刻々と過ぎていくからだ。

だが、そんなふうにしなくてもいいのだと、初めて教えてくれた大人が私の祖母だった。

言葉で説いたというより、身をもって示したというべきかもしれない。

祖母はハンガリーにうまれて育ち、夏は自由気ままに過ごした。

バラトン湖の冷たい水で泳ぎ、役者や画家、詩人などが集う湖北岸の保養地に滞在して山々をハイキングした。

冬にはブダ丘陵でホテルの仕事を手伝っていたが、やがてそこはナチスに接収され、親衛隊の中央司令部へと姿を変えられた。


ヴェラは「運転っていうのはこうやるのよ」といって、車線を全部またいでジグザグに走らせたり、カーラジオから流れる音楽に合わせて車にダンスを踊らせたりしてみせた。

若さを楽しみなさい、若いという感覚を味わい尽くしなさい。

それが祖母の口癖である。

大人って奴らは、物事を台無しにする。

大きくなるんじゃないよ。

絶対に大人になんかなるんじゃない。

六十代をすぎて70歳をゆうに超えても、ヴェラはいわゆる「気持ちの若い」女性だった。

友人や家族とワインを楽しみ、美味しいものに舌鼓を打ち、面白い話を語って聞かせ、貧しい人や病気の人、恵まれない人を助け、オーケストラを指揮する真似をし、夜遅くまで大きな声で笑う。

誰の目にも「いい人生」の典型であるように映った。

しかし、そう、時間は刻々と過ぎつつあったのである。

八十代半ばのヴェラはもはや抜け殻のようになり、人生最後の10年間は見るもつらいものだった。


第一部 私たちは何を知っているのか(過去)


第一章 老化の唯一の原因ーー原初のサバイバル回路


生命の誕生 から抜粋


地球と同じくらいの大きさの惑星を想像してほしい。

その惑星と恒星との距離は、地球から太陽までの距離はほぼ等しい。

自転のスピードは地球よりわずかに速く、1日はおよそ20時間である。


比較的大きな島に熱水噴出孔が点在していて、その脇に水が溜まっていた。

地表はどこもかしこも有機分子に覆われている。

これは、隕石や彗星に付着して降ってきたものだ。

乾いた火山岩の上に載っているだけなら、分子は分子のままである。

しかし、温かい水に溶けたあと、水溜まりの縁で濡れたり乾いたりを繰り返すうち、特殊な化学反応が起きた、

核酸が生じ、その濃度が高まり、分子同士がつながっていく。

ちょうど、海辺の潮溜まりで水が蒸発すると、塩の結晶ができるのに似ている。

これが世界初のRNA(リボ核酸)分子だ。

のちにDNA(デオキシリボ核酸)へとつながる物質である。

池に再び水が満ちたとき、この原始の遺伝物質は脂肪酸に閉じ込められ、微小な石鹸の泡のようなものができた。

細胞膜の誕生である。


極めて小さく、壊れやすい生命は、日に日に進化して複雑な形態をとるようになる。

そしてしだいに川や湖へと広がっていった。

そのとき新たな脅威が訪れる。

乾季がいつもより長引いたのだ。

それまでも、泡の膜に覆われた湖の水位は寒気になれば大幅に下がっていた。

しかし、雨が戻って来れば必ず元通りに水が満ちた。

ところがこの年、はるか彼方で異様に激しい火山活動が起きた影響で、毎年同じ季節に降っていた雨が落ちてこない。

雲はただ通り過ぎていき、湖は完全に干上がる。


大量の細胞の塊は最低限の栄養と水分を求めて争い、どうにか命をつなごうとする。

それでも、死滅への道をたどりつつあった。

増えたいという根源的な欲求に応えるべく、個々の生命は奮闘する。

やがて一風変わった生命が現れた。

仮にそれを「マグナ・スペルステス(Magna supertes)」と呼ぶとしよう。ラテン語で「偉大なる生き残り」の意味だ。


生殖か、修復かーー厳しい環境を生き残るための仕組み から抜粋


アダムとイブがそうであるようにマグナ・スペルステスも実在したかどうかはわからない。

だが、過去25年に及ぶ私の研究を踏まえるなら、今日私たちの周りにいるすべての生物がこの「偉大なる生き残り」から、または少なくともそれとよく似た原始生物から生まれたと考えてよさそうだ。

生物の遺伝子には、いわば原初のサイバイバル回路の基本形を(多少の差異はあるにせよ)今なお抱えもっていることがわかる。

どの植物も、どの真菌も、どの動物も。

もちろん、人間も、だ。


この回路はじつに単純にして、じつに堅牢な仕組みである。

おかげで、生命が地球上に存在し続けられるようになっただけでなく、回路を親から子へと伝えることができた。

その過程で変異を繰り返し、着実に改善されながら、宇宙から何がもたらされようと生命を助けて何十億年も存続させてきた。

その一方で、ともすると個々の生物が必要をはるかに超えて長く生きることにもつながった。


人体とは完璧とはほど遠く、今も進化の途上にある。

しかし、高度なサバイバル回路が備わっているために、生殖年齢を過ぎてからも何十年と生きられる。

なぜヒトが長い寿命を獲得したのかは、なんとも興味深い謎だ(祖父母として部族の教育を担う必要があったからというのが一つの心惹かれる仮説である)。

だが、分子レベルの化学反応がじつに無秩序であるのを思えば、命を落とさずに30秒間いられるだけでも不思議というほかない。

ましてや生殖年齢まで生きながらえるのも、80歳に達する人が大勢いるというのも、信じがたいことである。

なのに私たちは現にそうしている、

驚くべきことに。

まるで奇跡のように。

それは、果てしなく長い「偉大なる生き残り」の系譜に私たちも連なっているからだ。

だから私たちは生き残ることが大得意なのである。

だが、それには代償が伴う。

というのは、一番遠い祖先に生じた一連の遺伝子変異を、つまり原初のサバイバル回路を受け継いでいることこそが、私たちの年を取る原因でもあるからだ。

そう、敢えて「こそ」といったのにはわけがある。

それが唯一の原因だからである。


第二部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)


第六章 若く健康な未来への躍進


山中伸弥が突き止めた老化のリセット・スイッチ から抜粋


2006年、日本の幹細胞研究者である山中伸弥は、世界に向けて重大な発表を行なった。

遺伝子の組み合わせをいくつも試した結果、4つの遺伝子(Oct4、Sox2、Kjf4、c-Myc)が成熟細胞を「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」に変えることを発見したというのである。

iPS細胞は未成熟な細胞であり、誘導すればどんな種類の細胞にも変身できる。

4つの遺伝子から作られるのは、転写因子という種類の強力なタンパク質だ。

4つの転写因子は、それぞれが別の遺伝子群を制御しており、その遺伝子群は、胚の発生時にウォディントンの「地形」の中で細胞をあちこちに動かす働きをしている。

4つの遺伝子は、チンパンジー、サル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、魚、カエルなど、ほとんどの多細胞生物で存在が確認されている。

要するに山中は、細胞を若返らせることが培養皿の中でできるのを示したわけだ。

この発見により、山中はジョン・ガードンと共に2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

今では、この4つの遺伝子は「山中因子」と呼ばれている。


第三部 私たちはどこへいくのか(未来)


第九章 私たちが築くべき未来


科学者による未来予想 から抜粋


私は現在50歳の科学者だ。

輝かしい経歴の持ち主と呼ぶ人もいるかもしれない。

少なくとも、教え子たちには絶対に私を研究室から締め出したいはずだ。

だとすれば、自分の予言に自信があるとはいえないものの、未来を予想してもいいだけの資格は十分にもっているように思う。

私はときどきアメリカ連邦議会の議員などから、これからの科学技術について質問を受けることがある。

どのような飛躍的進展があるか、それはどのように活用ないし悪用されるおそれがあるか。

数年前には、未来における生命科学の進歩のうち、国家の安全保障に関係するもの上位5つについて意見を述べた。

内容は教えられないが、あの場にいたほとんどの人はサイエンスフィクションだと思ったに違いない。

おそらく2030年を待たずに実現するだろうとそのときは説明したが、半年と経たずに5つのうちの2つが科学的事実(サイエンスファクト)となった。


125歳のハードルを超える人がいつ現れるのか、具体的なところはわからない。

だが先駆けとなる人がつねにそうであるように、最初の一人は間違いなく例外的な存在だろう。

しかし、わずか数年で仲間が一人増える。

それからさらに数十人、数百人と続いていく。


22世紀のどこかの時点では、世界初の150歳が登場してもまったくおかしくはない(そんな馬鹿なといわれそうなので伝えておくが、今日アメリカで生まれる子どもの半数は、2120年の大晦日を祝うと考える研究者もいるのだ。例外どころではない。半数だ)。

そんなことが起こるわけがない問い思う人は、科学を知らない。

さもなければ信じたくないのだ。

どちらにしても、ほぼ確実に間違っている。

物事の進展が非常に速いので、生きているうちに自分の誤りを悟る人も少なくないのではないだろうか。


「私が実践していること」


と言う中で、いくつかご提示されているけれど、


ここではすべては引かず、一つだけ抜粋。


・健康寿命を延ばすうえで最適の範囲内にBMI(体重[キログラム]を身長[メートル]の二乗で割った数値)を保つことを目指している。

私の場合はそれが23~25である。


こちらで自動計算できるページございます。


余談だけど私の場合は、それが「20.08」だった。


大切な家族とずっと一緒にいるために から抜粋


長く生きても、周りに家族や友人がいなければ何の意味もない。


健康寿命のための方法があるとしても、どうせ大変すぎて守れないに決まっているーーそう思っている人が多い。

そんなことはない。

私の家族にだってできている。

みんな、一日を何とか乗り切ろうとしているだけのごく普通の人間だ。

ただ私は、今という時間をできるだけ意識しながら生活をするようにし、気分が良くなることに注意を向けている。


やりたいことがたくさんある。

助けたい人が大勢いる。

私はこれからも人類の背中を押して、私が信じる道へと進ませていきたい。

その道の先には、より一層の健康と幸福と、繁栄が待っている。

そしてその道を振り返ることができるほど、長く生きていきたい。


この書籍を知ったきっかけは、いつもで大変恐縮です。


養老先生だったのでした。


養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

  • 出版社/メーカー: エクスナレッジ
  • 発売日: 2022/11/24
  • メディア: Kindle版


第二章 養老先生、東大病院に入院 中川恵一


養老先生が医療の考え方を変えた? から抜粋


今回、養老先生が大病を経験したことによって、先生の医療に対する考え方を変えたのではないかと私は思いました。

その理由の1つが白内障手術で入院していた8月に読んでいた『ライフスパン』という本の感想です。

出版社から送っていただいた発売される前の見本をいち早く読まれたようです。(発売は2020年9月発行)

この本の著者の一人、デビット・A・シンクレアは、ハーバード大学医学大学院の教授で、老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる世界的に有名な科学者です(起業家でもある)。


養老先生は、この本にずいぶん興味を持たれたようで、私に「中川君、老いは自然じゃなくて病気なんだよ」と言われたように記憶しています。


養老先生のお話や本によく出てくるのが「都市と自然」という概念です。

都市というのは人工物であり、人工物は脳が作り出したものです。

自然は変化しますが、人工物である都市は不変です。

夏でも冬でも同じ室温に調整された高層ビルの中に一日いると、季節の移ろいゆく自然を感じることができません。

都市は自然を排除しようとするのです。

人工物の象徴である都市を作り上げた大脳も、自然を避けようとします。

その最も忌避すべきものが「死」です。

死は自然であり、大脳も自然(身体)の一部であることを教えるからです。

この「大脳の身体性」こそが、現代社会の最大のタブーだと養老先生は言っています。

養老先生の考え方に従えば、死に近づいていく「老い」もまた自然です。

人間にとって死が避けられないように、老いもまた避けることができません。

これに対し『ライフスパン』では、老い(老化)は病気だと言っているのです。

老いや死が自然であると言っていた養老先生が、「老いは病気」だと言うのは、宗旨替えとも言える発言です。

それで私は驚いたのです。


中川さんも以下の池田清彦さん同じ感想のようなのだけど、


シンクレア氏はやや楽観すぎるとおっしゃる。


中川さんはそれでも、その一部は未来で


実現するだろうとされていた。


年寄りは本気だ: はみ出し日本論 (新潮選書)

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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

第二章 お金と頭は使いよう


老化が病気なら治せばいいだろ から抜粋


■池田

ハーバード大学で老化を研究しているデビッド・シンクレア教授は、2020年に翻訳のでた『LIFE SPAN』という本の中で、はっきり「老化は病気だ」と主張しているでしょう。

僕はあの本を読んで、ちょっと楽観すぎると思ったけど。

 

■養老

あの本で、シンクレアがいっているのは「老化は病気だから、治療して若返らせることができる」ということだよね。

その治療も簡単な薬を飲むだけでよくて、実際にその実験をやっている。

それによって、人間の寿命はどこまで伸びるかわからないといっている。

まあ、いくら老化を防いで寿命を延ばしたって、いずれは死ぬよという話だけど。

でも、普通の医療はその「死ぬ」方ばかりを見て、「老化」そのものにはあまり焦点を合わせてこなかったという反省はあってもいいと思う。

研究の是非は別として、日本人の死因の上位を占めるがんや心臓、脳の疾患は、加齢とともに増える「老人病」だから、それを個別に予防したり、治療したりするより、老化そのものを止めてしまった方が、話が早いことは間違いない。


老化が本当に病気みたいに治せるなら、医療費は大幅に削減できるよ。

今の日本で、高齢者医療にかかっている費用はものすごいでしょう。

介護みたいな社会的負担も減るから、人材を経済活動に回すこともできる。

老いや死のような自然の流れを止める研究については、当然、反論もあると思う。

でも、日本の経済や社会の先行きを考えたら、これからはそういう技術も重要になっていくんじゃないか。

コロナだ、戦争だ、不景気だと暗い話題に右往左往するより、いっそ明るい未来を信じて、そういう分野にお金を回したらどうだろう


そういう流れになるといいし、


そういう流れにできるよう


動きたいし、考えたいと思った。


『LIFE SPAN』自体は深い良書だと思ったけれど


著者近影や生年の記述がないので、


ちと気になって調べたら


ハーバード大学教授ってことでTEDでの講演もあり


確認すると自分とそう年齢変わらなそうで


同年代という視点でも


今後の動向に興味があるなあ、と感じた。


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