SSブログ

2冊から来たるべき社会を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]

今西錦司さんが、吉本隆明さんとの


対談にて日本社会に触れた時


引かれていた方の書を読んでみた。


ちなみに女性で初の東大教授だった模様。



タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)

  • 作者: 中根千枝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: Kindle版

初出は1967年。


まえがき


から抜粋


本書は、現代の日本社会を分析するものであるが、日本の近代化の過程、それに伴う変化といった、従来の日本社会を扱った論文・評論の常道とは性質を異にするものである。

著者の目的とするところは、現代の日本を、社会人類学的立場に立って分析すると、どのような解釈が成り立ち、それをどのような理論構成にもっていくことができるか、という試みにある。

すなわち、日本社会の説明ではなく、日本の社会構造を材料として、社会人類学でいう「社会構造」の比較の上で、日本の社会がどのように位置づけかれるかという、社会構造の分析に関する新しい理論を提出しようとするものである。

したがって、日本の近代化はどのような問題を扱うものではない。

しかし、著者の立場が理論的なものであるために、叙述もできるだけ客観性を高めることにつとめているので、かえって本書はどのようにも扱われるだろう。


本書は『中央公論』(昭和39年・1964年5月号)に発表した論文「日本的社会構造の発見」を加筆・修正し、発展させたものである。

しかし、著者の基本的理論は少しも変わっていない。

右論文を発表して以来、多くの読者から反響があり、また、大学・研究所・企業経営・人事管理・教育研修などの各方面の諸機関・諸集会から、本論文に関連したセミナーや講演の依頼を受け、多くの方々から有益な意見を聞くことができた。


また、右論文に提出した「タテ」「ヨコ」の概念、考察方法は、すでに常識のごとく多くの人々に使われるようになり、著者としては喜びにたえない。

1966年12月 中根千枝


57年前にこのような日本の人間関係の考察を


されていたというのは稀有だったのだろうな。


(続編があるのをさっき知る、一旦おいといて)


 


今だと比較的当たり前で、こういうことを


身に持って知っておかないと世間を


渡っていけないというような基本の所作


だったりするのだけど、時は1966年だからねえ。


ビートルズ来日の年って、うーん。


あんな不良な音楽に、武道の伝統を行う場所で


コンサートなぞとんでもない!という時代だからね。


当時の知識人って。


知識人って言葉嫌いだけど


面倒くさいのでまあいいか。


何ともはや、曰く言い難し。


 


おわりに


から抜粋


本論において言及された日本社会の諸現象の多くは、断片的には、多くの人々がすでに指摘したり、また十分経験したりしていることである。

しかし、本論の主題は、そのように、諸現象を「日本的」と指摘することではなく、これら諸現象があらわれる論理的必然性、いいかえれば、日本社会に貫かれている統一された(驚くほど論理的な)メカニズムというものを提出することである。


もちろん、近代国家においては、どの社会でも共通な制度・組織をもっている。

たとえば、学校・行政機関・官僚制・企業対組織といったような。

しかし、これらは、はっきりと制度化され、誰でも明確にとらえられるものであるーーーこれをフォーマル・ストラクチュア(formal structure)と呼ぶーーー。

これに対して、一方、顕在的には表れていないが、実際の人間関係を規制するのに重要な役割をもつ、見えない潜在的な組織ーーーこれをインフォーマル・ストラクチュア(informal structure)と呼ぶーーーがあって、これこそ、その社会の機能の原動力となり、その社会の特色を出してくるものと考えられる。

現実には、このインフォーマル・ストラクチュアはフォーマル・ストラクチュアに交錯して存在しているのであるが、本書では、実は、特にこのインフォーマル・ストラクチュアを探求したのである。

このインフォーマル・ストラクチュアの追及を通して把握される、本書に提示したような日本社会の特色というときはのは、決して日本人が本質的に他の社会の人々と比べて異なっているということではない。


それでも、古い歴史を持つ文明社会においては、長い間にその社会独得の慣習を発達させ、結晶させるもので、他の社会のそれと比べると、別人種、異民族という感を深く抱かせ、その文化的な違いがあたかも決定的な生物的な生物学的な違いであるかのようにさえ感ぜられるものである。


しかし生物学者が指摘するように、いずれも「人類」という動物の一「種」である。

どの社会の人々も、人間という「種」として本質的に同様な特質を持つばかりでなく、これほど文明が進んだにもかかわらず、一定の条件に対しては、個人としても集団としても、他の動物に共通した反応を示すことも十分指摘できるのである。


したがって、日本人は…である、という前に、一定の同一条件を与えられた場合。日本人でなくとも、どこの国の人間だってこのように反応するのではないかと、疑問をもってみる必要がある。


著者がとくに力説したかったのは、こうした一定の「条件」というものを考慮して、日本人、日本社会の問題を考察することであった。

著者のいうこの「条件」とは、とくに社会学的条件である。

社会学条件とは、その社会の長い歴史をとおして、政治的、経済的、そしてもろもろのん文化的諸要素の発展、統合によってつくられてきたものである。

こうして形成された既存の社会組織(フォーマルおよびインフォーマル・ストラクチュアすべてを含む)自体も今日のときは日本人の行動をかたちづくる重要な条件なのである。


したがって、一定の「条件」というものは、実験室で簡単につくりうるようなものではない(実はこの点にこそ社会科学としての社会人類学的アプローチのむずかしさ、複雑さがあるのである)。


しかし、日本社会の場合、この条件を支えている一つの大きな特色が存在する。

それはいうまでもなく、社会の「単一性」である。

現在、世界で一つの国(すなわち「社会」)として、これほど強い単一性を持っている例は、ちょっとないのではないかと思われる。


この日本列島における基本的文化の共通性は、とくに江戸時代以降の中央集権的政治権力にもとづく行政網の発達によって、いやが上にも助長され、強い社会的単一性が形成されてきたものである。

さらに近代における徹底した学校教育の普及が人口の単一化にいっそう貢献し、特に戦時の挙国一致体制、そして、戦後の民主主義、経済の発展は、中間層の増大拡大という形をとりながら、ますます日本社会の単一化を推進させてきたものといえよう。


以上の考察によってもあきらかなように、本書は「日本人の特質」ではなく、あくまで「単一社会の理論」と呼ぶべきものである、というのが著者の立場である。


日本人だから…という感覚は、ありますけれど


内容的な面で隔世の感は否めないところ多々あれど


基本構造はまだまだあるような気もしつつ


だから現代でも増刷され2015年で115刷ですからね。


 


中国・イギリス・インドでの日本人の


人間関係の在り方の異なる点や


日本人の「哲学」「宗教観」について触れられ


「みんながこういっているから」


「他人がこうするから」で行動を規制していて


宗教的な規範ではない、価値の尺度を指摘されている。


今もあまり変わっていないようにも


思うところもあった。


これでちと思い出したのが、



だんだんわかった

だんだんわかった

  • 作者: 仲井戸 麗市
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1992年
  • メディア: 単行本

この書籍じゃないかも知れず違ってたら、


申し訳ない。


ロックミュージシャンの仲井戸麗市氏が


フランスの空港で、奥様(カメラマン)が撮った


フィルムを荷物検査のエックス線に通すことになり、


それをするとフィルムがオシャカになってしまうため


拒否すると空港の黒人職員が高圧的に実施、


大揉めに揉め、乱闘になりそうになり


フランスが嫌いになりそうだったが


あれは国というよりも人の問題なのだろう、という


随筆を思い出したりした。


仲井戸さんは黒人音楽にルーツを持っているので


余計このエピソードは自分には響いたものでした。


 


話は逸れづつけて、養老・池田先生対談


空港の検査なぞ、やめちまえ、時間の無駄


ってのもあったな。


 


話は中根千枝さんの書に戻り、思うに


国民性というのもグローバル化が進み、


益々単一化社会となっていくと予想され


〇〇国の人だから…とかいうよりも


〇〇さんだから…ということが多くなるのだろう。


 


コミュニケーションする上で


人格を磨いていくことは必須として


他国の人間であればその国の


また自国の人ならその人の背景・歴史も


知っておくと人間関係がスムーズになるのか


と思うとめっちゃめんどくさいけれど


その反面、面白いかも、とも思ってしまう


アンビバレンツに悩まされ


でも時代はAI、これからシンギュラリティだよ


と思いながら陽当たりの良い


庭を見ながら考えている午前中でした。


 


nice!(34) 
共通テーマ: