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松井孝典教授の書から”人間圏”のタイプを読む [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

人類を救う「レンタルの思想」―松井孝典対談集


人類を救う「レンタルの思想」―松井孝典対談集

  • 作者: 松井 孝典
  • 出版社/メーカー: ウェッジ
  • 発売日: 2007/11/01
  • メディア: 単行本

「レンタル」も「イトイ」も芸術だ


糸井重里 X 松井孝典


2人の精神遍歴 から抜粋


糸井▼

ここ10年、20年くらい、エコロジーの考え方以降だと思うんですけれども、子孫に対し何かを残すかというとき、このまま放っておくと人間の未来はないという語り方が次第に増えてきました。


永遠に悪い循環をくい止めながら生きる時代になるとしたら、僕は永遠というものを考え直さなければいけない。

それで、思いついたのが、どこかで地球は滅びるんだというのを知っておいた方がいいということ。

つまり無限に苦労することを考えるくらいなら、どうせ滅びるんだし、その中で何をやるかを自分で決めるというふうに考えたくてね。


それで天文台に問い合わせましたら、50億年後くらいに、太陽の膨張の影響を受けて地球ごとなくなると。

どうあがいてもこれは防げない。

それを知ると、とても楽になりました。

その頃に松井さんの書かれたものを読んだんです。


この考えがみんなに伝われば、人間を精神的な苦役から解き放つことができるんじゃないかと思いまして。


松井▼

すごい宗教的になってきちゃった。(笑)


糸井▼

最初はそれ。観念だったんです。

それで松井さんの講演に行ったりもしました。

インターネットとの出会いもその頃で、僕は前々から、わかるということと、実際に肉体化してその考えを生きることの間には、ものすごく距離があるなと思っていた。

それをくっつけるのに一番最適なのがインターネットだった。

つまり、「わかる」と「生きる」が隣り合わせになる。

「せっかく生まれていた人生を、借金返済のために生きるみたいなことはいやだ」という思想を伝えるためにも、インターネットは有効だと感じました。

こういう流れなんですよ。


松井▼

どういうふうにして糸井さんの今の考えがあるのかがわかりました。

僕もなぜ今の自分に至ったかを話しておきましょう。

僕も糸井さんと同じで大学闘争の時代の学生で、全共闘的なことをやっていました。

人民との連帯だ、とかね。

でも連帯といっても、みんな世界を知らず観念でしゃべっているだけです。


糸井▼

そこで実感が欲しくなる。


松井▼

ええ。

で、半年くらいずっとユーラシア大陸を回ったんです。

今、世界が注目が集まっているアフガニスタンやパキスタン、イラン…。

生活を見聞きしながらまわって実感したのは、連帯なんかあり得ないということ。

ここで生きろと言われても、僕は生きられないと思った。

それと、それまで僕は国家に対して生理的な嫌悪感があったのですが、パスポートに日本国が守ってくれると書いてある。

そのとき初めて「あっ、国とはこういうものなんだ」と思いました。

実際、外国に行くと、パスポート一つで日本国国民として立場が保証されているわけですからね。

そういうふうに旅を通じ、いろいろな問題の捉え方も変わりました。

自分がどう生きるかも含めてね。


真の「クリエイティブ」とは から抜粋


糸井▼

宇宙や地球に関心が向ったのも、ユーラシア大陸に出かけていった時と同じ発想だったんでしょうね。


松井▼

そうですね。

時空スケールを変えて見ることの斬新さに気づいたんです。

そうして得た結論が、自分の頭で考え、自分の世界観を持たない限り、自分はここにいる意味はないということでした。


糸井▼

明快ですね。


松井▼

明快といえば、僕は学生の頃から未来なんてないと思っていました。

現在しかないと。

現在とは過去の蓄積、歴史の上にしかない。

生きることは、結局は自分の歴史を作ることです。

未来がどうであれ、今が充実していれば悔いはない。

そう思って生きてきましたから、社会的な使命感もないし、未来が明るいとか暗いとかいう発想もしたことがありません。

僕にとっては、自分が取り組んでいる「自然」というのが何なのかというのを探るのが生き甲斐で、それがパーッと見えた時が最高の感動なんです。

それだけのために生きているといってもいい。


いま何に感動して生きているかにすべてがあります。

僕の場合、興味のある自然という古文書が解読できた時、そのプロセスを含めて感動がある。

それが生きていく原動力にもなる。


糸井▼

その思想さえベースにあれば、極端な話、「僕、地球物理学やめました」と言っても、ぜんぜんかまわないですね。

つまり、生き方の問題だから。


松井▼

科学者というのは、基本的なことに関しては世界のルールがあって共通基盤を持っているけれど、それ以外のことに関しては自分がすべてでしょう。

与えられた問題を解くだけじゃなく、自分がどう問題を作れるか、なんです。


糸井▼

営業マンでも販売員でも、問題をつくる能力は必ず問われるわけで、今やっていることに感動できる人は、やっぱり問題を作る能力があると思うんです。


松井▼

それが本当に生きているということですね。

糸井さんがいう「クリエイティブ」も、そういうことでしょう?


糸井▼

そうです。


プロフェッショナルということ から抜粋


松井▼

1980年代の終わりごろ、モスクワの空港で偶然、司馬遼太郎さんにお会いしたことがありました。

僕はロシアの科学アカデミーから頼まれて火星探査の協力をしていたものだから、火星探査機や宇宙船の写真も持っていたんです。

それを司馬さんにお見せすると、「芸術ですね」とおっしゃってね。


糸井▼

まさにそうだと思います。

僕も松井さんと話していることを、現代美術の作家と話しているのと同じように受け止めています。

スポーツだって、アートとの区別がなかった時代があって、のちに市場原理で分けただけ

もとはといえば、すげえ、びっくりした、よくできたもんだ、真似できないと感動するものがアートです。

「レンタルの思想」もアーティストの仕事で、現代芸術家が展覧会のプロジェクトをつくっているようなものではないでしょうか。

僕も自分を俗っぽいアーティストだと思っていましてね。

人間はどうしようもないけれど、捨てがたいものである、というところで生まれるものを、ポップアートのように拾っているつもりなんです。


糸井さんの後方支援をされているかのような


活動の主たる目的が松井先生の対談から


よくわかるような。


あとがき 2007年秋


松井孝典 から抜粋


人間圏の現状とその課題というと、話はどうしても難しくなる

そこで、胃がんの手術をした当時講演会などでよく例えとして用いたのは、次のような話である。

胃が、以前の3分の1になると、食べられる食事の量が減る。

従って当然、70キロを超えた体重が、なだらかに60キロまで減少した。

それが現在まで続き、60キロもはや定常状態となっているが、同時に以前健康診断などで指摘されていた成人病に関わる検査の数値が、著しく改善された。

現在の人間圏は手術前の私に例えられ、いずれ成人病が発症する前期の状態にあるのではないか、と思っている。


手術前は、食べたものが胃にストックされ、人間の発展段階で言えば、ストック依存型人間圏に対応するのではないか。

胃の切除は、下部の幽閉部から癌の存在する部位までだから、手術後は食べたものが胃にストックされず、小腸にそのまま流れて行く。

要するに、ストック依存型の胃からフロー依存型の胃に変化したということになる。

目指すべき、地球システムと調和的な人間というのは、フロー依存型の人間圏であるから、胃を3分の2切り取った私のようなものである。

するといわゆる成人病につながるような血液の状態は改善され、即ち肥大化した人間圏はスリム化され、地球システムと調和的になる。


問題は胃の切除に相当するのが人間圏ではどういうことなのかということである。


それは人間圏の内部システムの変更であるが、それについてはとても1人では思考をまとめられない。

それではというわけで、世の識者といわれる人たちとの対談を通じて、この問題を世に問うてみようと思った次第である。

それを基にレンタルの思想をまとめようと意図していたのだが、今もってまとまらない。


人間圏のあり方に対してこれからも社会に提言していくのが私の使命かもしれないと、改めて強く思った次第である。


”人間圏”から発展段階の2種


”ストック依存型”と”フロー依存型”というのは


とても明快で興味深い。


”ストック”は読んで時の如し蓄積型で


いわば原理主義のようで


”フロー”は環境に合わせて


動けるフレキシブルなタイプって受け取れる。


どちらが良いということではなく


進化の過程として必要なものなのかと。


違ってたらごめんなさい。


アストロバイオロジーから見るヒトの


というか自然の世界が痛快に今は感じる。


糸井重里さんと対談も興味深く


他の方は長谷川眞理子先生以外は


自分にとって時期尚早なのか


あまり深く読めなかったのでタイトルだけでも。


妻が具合悪いので洗濯、お風呂掃除して


ご飯調達して自分は夜勤に向け準備しないと。


家族の誰かが具合悪いと家の内部システムが


正常稼働できず暗くて嫌なものだなあと


感じ入る寒い雨の関東地方でございます。


松井孝典 

人類が生き残るための提言

(初出・中央公論1997年10月号)

・6500万年前の地球環境問題

・キューバで考えたこと

・文明のパラドックス

・地球の歴史は汚染の歴史

・所有という問題

・リサイクルとレンタルの違い


対談

岩井克人 欲望の倫理学

榊原英資 アメリカの技術信仰に騙されるな

中西輝政 人類にビッグバンが起こっている

長谷川眞理子 おばあさんの誕生

鷲田清一 宇宙の発展と文化の論理

水谷三公 江戸システムが地球を救う

植島啓司 「宗教の隕石学」への挑戦

合原一幸 カオスは脳に宿たもう

西垣通 「もう一つのIT革命」でアメリカニズムを超えろ


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