2冊の安保先生の書から”病気”を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]
池田先生の書評をこちらで拝読していたら
面白いことを投稿されている方がいて
他のも読んでいたら、この書評があり
そちらも面白かったので、手に取った次第。
近藤誠先生ともお近いようでございました。
第6章
健康も病気も、すべて生き方にかかっている
から抜粋
白血球の自律神経支配の研究から、じつにさまざまな身体の細胞が自律神経支配を受けていることがわかりました。
身体中を動きまわる白血球も自律神経支配を受けています。
こうしたシステムがつくられている目的は、私たちの行動に見合った体調をつくるということです。
長年研究してきて感じたのは、生体反応のほとんどは身体にとって役にたつ反応だ、ということでした。
生体が自然に起こす反応というのは、たとえ症状としては不快なものであっても、じっさいには生体の状態を調整するために行われている場合がほとんどです。
けっして病気をつくるためにできたシステムではありません。
ではどうして病気が起こるのか、と考えてみますと、私たちは長い人生の間に必ず感染にさらされたり、悩んだり、仕事で無理をしたりと、さまざまなストレスを受けます。
するとストレスの刺激で自律神経に過剰な偏りが生まれます。
その影響で、身体の細胞、あるいは身体を守る白血球が過剰な活動をして、生体に負担をかけ、害を与えることになります。
それが病気といわれるものの基本的なしくみなのです。
そう考えてくると、つまるところ、病気になるかならないかというのは、私たちの生き方にかかっています。
困難や挑戦というストレスの多い機会がめぐって来た時、人間はその状況を切り抜けようとして無理をします。
無理をしても、ある程度までは耐えることができます。
しかし、やはり限界があります。
どこまでも無理をしていけば、身体がその無理から生み出される反応に持ちこたえられなくなる限界があるのです。
ですから、ここまでは無理はきくけど、それ以上は身体が耐えられない、という自分なりの限界を感じとり、破綻を招かないことが健康を保つ秘訣です。
その限界は、年齢、体力によって、それぞれ個人で違うと思いますが、自分がどのくらいの無理なら耐えられるかということはよく知っておかなければいけないでしょう。
それは、心理的な無理、ストレスについても同じです。
悲しいこと、辛いこと、我慢しなければならないことを、あまりにもためこみすぎていると、それが交感神経を緊張させて、内側から組織破壊を起こします。
まさに、ストレスが体をむしばむのです。
生き方には、生活のあり方だけでなく、人生への心のもち方という要素もあります。
健康に生きたいと願うなら、心のストレスをなくしていくことも大切です。
楽をしすぎても病気になる
から抜粋
ストレスが身体によくないのであれば、ひたすら楽に生きたらよいのでしょうか。
そうではありません。
リラックスしすぎることも、健康への害になります。
リラックスのしすぎもまた、別の意味でストレスになってしまうのです。
いちばん簡単に思いつくのは、運動不足と肥満です。
肥満も過剰になると、身体に直接的な負担をかけます。
肥満というのは、あるレベルまでは副交感神経優位のリラックス型の体調をつくりますが、さらに進むと、肥満であること自体がストレスに働いて、息が切れるとか、すぐに疲れてしまうという現象が現れてきます。
つまり、リラックスの体調ですが、ちょっとした負担ですぐに交感神経過剰優位な状態になるような体調ができてしまい、そこから病気を招いてしまいます。
リラックスでリンパ球が増えることで過敏な体質になってしまうということです。
ちょっとしたストレスでじんましんなどのアレルギー症状がでるということが起こってきます。
さらに、リラックス型でリンパ球が多ければ、病気にならないというわけではありません。
たとえば、ガンや膠原病は、ふつうは交感神経過剰優位が原因になって発症するのですが、たまにリンパ球が多いのに病気になっている人がいるのです。
二割ぐらいですが、リラックスの副交感神経優位型の体調なのに病気になっている人がいるのです。
そういう人たちの場合は、もっと機敏に生活し、運動し、食事を制限するという形で、交感神経を活性化していく必要があります。
心のもち方が体調をつくる
から抜粋
ガンの解説のところで、ガンになりやすい性格に少しふれました。
がんばるということは、責任感の表れでもあり、よいことと受け取られがちですが、がんばりすぎるというのは、必ずしもよいことではありません。
がんばりすぎて、交感神経過剰優位になって病気になってしまう人は、たくさんいます。
もちろん、不可避的な苦しい状態というのも、人生にはときおり訪れます。
それが、ストレスになることは、たしかにあります。
家族のだれかが重い病気になる、配偶者や大切な人を亡くす、という場合の悲しみや苦しみはたいへんつらいものでしょう。
そういうつらさを乗り越えるのはたいへんなことかもしれません。
しかし、その後いつまでも嘆きながらすごすということが、はたして自分にとっても周りの人間にとってもよいことなのか、考えてみるべきだと思います。
強い感情の働きというのは、身体にも必ず影響を与えます。
心のもち方は、病気を防ぐ上でとても大切だと思います。
食べることの大切さーーー食生活は副交感神経へのスイッチ
から抜粋
食べ物を摂取することは、反射的に必ず消化管の動きを促して、腸管の常在細胞層を刺激します。
なにかを食べて消化管を動かすということが、いちばんてっとりばやく副交感神経を活性化する方法です。
なぜなら消化管は、副交感神経に直接つながっている最大の臓器だからです。
消化管というのは、口から肛門まで一つながりになっていて、人間の内臓のほとんどを占めるほどです。
これほどの巨大な副交感神経支配の臓器はほかにありません。
となれば、食事がいかに大切かわかってくるのではないでしょうか。
先日、「自然食ニュース」という小冊子の記事に、ある栄養学の先生が興味深い考察を書いていました。
日本人は数千年の間、米と魚を主体とした食事に適応してきたのだから、急に白人の真似をして肉や牛乳や卵の多い食事に変えると身体がついていかなくてさまざまな破綻を起こすのではないか、と述べていました。
納得できる意見だと思います。
日本人には日本人の適応・進化の長い歴史があります。
意識と無意識の両方をつなぐ呼吸が重要
から抜粋
消化管以外で大きな器官といえば、呼吸器です。
人間は、不安なときには浅くてはやい呼吸になり、リラックスしているときにはふかくて回数の少ない呼吸になります。
私たちの行う活動のなかで、呼吸だけは、意識と無意識の両方につながっています。
つまり、自律神経の、交感神経と副交感神経の両方の支配にはいっています。
呼吸は、呼吸しようと思わなくても、呼吸のことを忘れていても、行われています。
だから、深呼吸すると、酸素をたくさんとりながら、そのあとにリラックスが訪れるのです。
呼吸の生理学として、無意識と意識の世界の接点があるからこそ、あとは深い呼吸をしたあとに酸素過剰になってリラックスの呼吸態勢に移り変わります。
そういう呼吸と自律神経の関係を知ると、深呼吸のもたらす健康効果がわかります。
交感神経が緊張しているような時ほど、意識して深呼吸をしてください。
そうすれば、リラックスの呼吸が始まって、緊張が和らいできます。
身体は冷やしてはいけない
から抜粋
いままで、多くの病気が血行障害から起こっていることを説明してきました。
血行、つまり血液の循環は、リラックスの神経である副交感神経の支配を受けています。
ですから、やっぱり循環をよくするには身体を冷やさないこと、こまめに身体を動かすことが大切です。
元東京大学講師の西原克成先生は、冷蔵庫の発達でいろんな食べ物が冷やされた状態で口に入ることが多くなったことが、さまざまな病気の原因になっていると主張しています。
現代医療を良くするために~代替・補完医療が治療の選択肢を増やす
から抜粋
最近、いわゆる現代医学以外の方向から医療をとらえなおす試みが、一部の医療現場の医師たちの間でもじわじわと広がっているように思います。
たとえば、代替医学(オルタナティブ・メディスン)や補完医学(コンプリメンタリー・メディスン)に関する学会が増えています。
その背景には、西洋医学の負の部分に対して、人々が別の選択肢を求めているという現実があると思います。
西洋医学は薬の切れ味がよく、服用すればすばやく鋭い効きめを発しますが、同時に副作用も強く引き起こします。
そういう人たちが、副作用のない、あるいはひじょうに少ない医療を求めて、代替医療、補完医学を選択しているのでしょう。
代替医療、補完医学には、漢方、鍼灸、アロマテラピー、ホメオパシーなどいろいろありますが、どれもゆっくりと身体の生体反応を刺激して治癒を促すという治療です。
免疫を高めたり、循環をよくしたり、排泄をよくしたりすることで、治療を促していく。
西洋医学は直接病変に働きかけますが、代替医学は生体反応を利用していくため、ゆっくり効いていきます。
それは、本来、人間の身体が病気やケガから回復していくときの治療のあり方に通じています。
そういう意味でも、代替医学・補完医学はこれから飛躍する分野だと思っています。
もちろん、現代医療をつくりあげてきた西洋医学を全否定するべきではありません。
西洋医学が人間の健康に果たしてきた役割は、ひじょうに大きなものです。
しかし、一方で、病気というものを分析的にとらえる方向に邁進した結果、西洋医学には弱点が生まれてしまいました。
体全体の健康というものをとらえられなくなってしまったのです。
東洋的な思考が未来の医学をひらく
から抜粋
私がみるところ、代替医学の治療は、ガン、膠原病、アレルギーなど、西洋医学の治療を長く続けると破綻をきたすような病気に効果をあげていることが多いです。
なぜかと考えてみると、こうした病気はどれも、慢性化する病気です。
慢性化しているということは、つまり自律神経、免疫系、循環系、消化器系など、生体全体のバランスが破綻しているということです。
ですから、これからは西洋医学で治療に向かわないときは早く見切りをつけて、代替医学をためしてみてほしいと思います。
代替医学の本質には、東洋的な思考法がある、と私は感じています。
全体像をつかんで病気と対応するという基本が、まさにそうです。
西洋医学を分析医学とよぶのに対して、東洋医学を統合医学とよぶことがありますが、身体をとらえることに長けているのが強みです。
しかし、東洋医学にも弱点はあります。
東洋医学は、体調全体を把握する反面、分析するという研究が進みませんでした。
歴史を振り返ってみても、東洋医学や伝統医学しか存在していなければ、生体の化学的・生理学的な謎は解くことができなかったでしょう。
そう考えてみると、東洋医学あるいは代替医学と西洋医学は、今までまったく違った方向に進んできています。
お互いがお互いを否定するところで、発展をとげてきたようなところもありましたから、これまではなかなか共存するというわけにはいきませんでした。
しかし、私はいま、この二つが、共存とまではいかなくても、対立を避けながら、ともに人間の健康に貢献していくことも可能ではないかと考えています。
代替医療をとり入れつつ、西洋医療のよいところを残していくという方向性を探るとすれば、日本という社会は、じつは地球上でいちばんうまくいく可能性があるところなのではないか、そんなふうにも考えています。
究極の健康法とは、自然のリズムに乗って生きること
から抜粋
私は若いときに、交感神経と副交感神経が1日の間に交代するように活性化しているということを発見し、自律神経や白血球の日内リズムの研究として発表しました。
続いて、自律神経が気圧の変化にも影響を受けること、一週間から十日くらいのリズムでも動いていること、さらに一年の内でも変化していることを研究しました。
つまり、自律神経というのは、いつも揺さぶられているわけです。
この揺さぶりというのは、自然環境が与えるものですから、そのリズムに逆らうことは自然に逆らうことになります。
だから、こうしたリズムを無視した無茶な生き方をすると、必ず破綻をきたすのではないか。
今までたくさんの症例を見てきて、そんな思いを強くしています。
朴訥とした東北弁だと思うが、その喋り方は
お人柄を滲ませるお優しい印象。
残念ながら2016年に大動脈解離で
お亡くなりになられている。享年69歳って
まだ若いだろう。
安保先生のおかげで沢山の方が助かったことを
伺わせるエピソードありの書籍だった。
自然のリズムとか、交感神経・副交感神経とか
薬に極力頼らないというのはよく見聞きするが
安保先生がスタートのお一人だったのか、
ちとわからないが、若い頃から研究っていうから
そうなのだろうなと。
病気は”対処”するのではなく、QOLを重視して
”理解”して”和らげ”、できれば”防止”の生活をするべし
という、ざっくりとだけど納得できます。
「まじめ」をやめれば病気にならない 簡単! 免疫生活術 (PHP新書)
- 作者: 安保徹
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/10/07
- メディア: Kindle版
はじめに
から抜粋
いまの日本には二つの不思議な現象があります。
1つ目は、豊かで平和な時代なのに病人が多く、長生きしても寝たきりの人が多いということ。
そして2つ目は、りっぱな病院が多いのに病気をなかなか治せないということです。
病院に行っても満足している人は少ないでしょう。
こんな変なことが起こったのには、じつは理由があるのです。
第一の問題として、時代とともに病気の原因や種類が変わるということに、一般の人も医師も気づいていないことがあげられます。
50年前の日本なら、冬の寒さ、飢え、肉体的重労働のような過酷な生き方が病気の原因だったのです。
しかしいまの日本には、このような原因で病気になっている人はほとんどいないでしょう。
病気の成り立ちが見えてくると、それに合わせて生き方を変えれば病気は治ります。
いまの日本人は、全体的に働きすぎ、まじめすぎなのです。
無駄に生まじめな生き方をすこし見なおしてほしいのです。
「まじめ」をやめれば病気にはなりません。
今日の日本の医療は薬を出して病気を治すという流れになっていますが、本来、薬はつらい症状を軽減するための対症療法なわけです。
長期間飲むには適さないということを医師も一般の人も理解することが必要です。
病気の成り立ち、病気が発症する、あるいは治るときのからだの反応なども学び、ともに成熟した日本社会をつくりたいと思います。
それが、この本の役割です。
2007年11月
付録 免疫力を高め生きる力を発揮するための13ヶ条
から抜粋
最後の一つだけ全文引用
1. 働きすぎを見直す
1. 食事は食べ過ぎないが基本
1. パソコンを使って仕事をする場合には、1〜2時間に1度は休憩をとる
1. 夜更かしをしてまで、パソコンやテレビゲームに向かう生活はやめる
1. ストレス状態が長く続かないように、うまく処理する
1. 怒りすぎたり、感情を抑えすぎたりせずに、心をおおらかにして人生を楽しむ姿勢をもつ
1. 日頃から顔色、肌の色艶、胃腸の調子、疲れやすいかどうか、風邪をひきやすいかどうかなど、自分の体調のチェックを心がける
1. からだを動かす習慣をつける
1. 薬は極力使わない
1. 前向きに感謝の気持ちを忘れず、笑みを絶やさない
1. 人間に必須なものであっても、とりすぎず不足せずが原則
1. いつまでもボケずに元気でいたければ、できれば70歳くらいまではペースダウンしながらも仕事を続ける
1. 安らかな死を迎えるには過剰治療をしない
(自力で食べること、ひとりで歩くことができなくなったら、それは「もう死んでもいい」という、からだのサインととらえることができる。点滴など受けずに、自分の生命力にまかせれば、痛みもなく安らかな死を迎えられる。)
基本的にアグリーなのでございますが、
最後の1点だけ、
大変僭越で恐縮の極みでございますが
これは”安らかな死”になるとは限らないと思う。
最期は苦しいこともあるというのを
仕事上、ターミナルケアを経験したり
自分の両親を看取り損ねた経験も併せ
本当のところは本人にしかわからないとはいえ
とてもそうとは思えないので、この点だけ
疑問符であることを提示させていただきます。
しかし、過剰治療しない、自力で食べれなくなったら
お迎えを身体が希望しているってのは
同意なのでございます。
何はともあれ、安保先生の書はわかりやすいです。
「共に成熟した日本社会を」という高次な志が
まぶしいのでございます。
平易でとっつきやすく、内臓が大切とか
西洋と東洋の融合であるとか
三木成夫先生のドクター版のようでございました。
余談だけれど、本日は朝早くから
コオロギのような虫が外で鳴いておりました。
秋がそこまで近づいているのだなあ、と思う
静かな日曜日、お風呂とトイレ掃除してからの
夜勤のため出勤でございます。