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オードリー・タンさんの推薦書から”コモン”を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]


ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀: 公正な社会への資本主義と民主主義改革

ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀: 公正な社会への資本主義と民主主義改革

  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 単行本

表紙袖に書かれたおそらく

出版社からの要約文から。


富裕層による富の独占

膠着した民主主義

巨大企業によるデータ搾取

21世紀初頭の難題を解決する

まったく新しいビジョン!


序文の引用から


ミルトン・フリードマン

資本主義と自由』(1961年)

19世紀の自由主義者は、物事を根底まで突き詰めるという語源の意味でも、社会制度を大きく変革することを目指すという政治的な意味でも、ラディカルだった。

その後継者である現代の自由主義者も、そうあるべきだ。


ラディカル・マーケットとしてのオークション から抜粋


問題の根源は思想にある。

というより、思想の欠如にあるというべきだろう。

右派とか左派が生まれた19世紀、20世紀の初めには、両者の主張には伝えるべきものがあったが、その潜在能力はもはや尽きている。

大胆な改革が推し進められることはなく、漂うのは閉塞感だ。

社会の可能性を開くには、社会をラディカルに再設計する事に私たちが心を開かなければいけない。

問題を根本から解決しようとするなら、経済と政治の制度がどう機能しているのかを理解し、その知識をもとに対応策を組み立てなければならない。

本書ではそれを試みていく。


オークションが世界を救う から抜粋


われわれが思い描くラディカル・マーケットとは、市場を通した資源の配分(競争による規律が働き、すべての人に開かれた自由交換)という基本原理が十分に働くようになる制度的な取り決めである。

オークションはまさしくラディカル・マーケットだ。


オークションでは参加者は互いに入札し合うルールになっているので、競売にかかるものは、それをいちばん必要としている人の手に渡ることになる。

ただし、入札価格の違いは、それをほしいと思う気持ちの差によるものだけでなく、富の格差によって生まれている場合もあることに注意しなければいけない。


ラディカル・ヒーロー から抜粋


われわれの議論は、アダム・スミスに遡る知的伝統に拠っている。

スミスはこのところ、市場原理主義をはじめとする保守派の思想家に頻繁に引き合いに出されている。

しかしスミスは、エピグラフで明確に示されている二つの意味で、ラディカルだった。

まず、経済組織の問題を根本まで深く掘り下げて、いまも影響力を持つ理論を提示した。

さらに、当時の支配的な思想や制度を攻撃し、大胆な主張と改革を打ち出した。

スミスのアイデアがいまでは「保守的」とされているのは、当時の政策や考え方を大きく変えたからにほかならない。


日本語版解説


過激で根本的な改革の書


安田洋祐(大阪大学大学院経済学研究科准教授)


2019年10月


から抜粋


「ラディカル」という単語は、「過激な・急進的な」という意味と「根本的な・徹底的な」という意味の、二通りで用いられる。

本書は、まさに両方のラディカルさを体現した「過激かつ根本的な市場改革の書」である。


市場が他の制度ーーたとえば中央集権的な計画経済ーーと比べて特に優れているのは、境遇が異なる多様な人々の好みや思惑が交錯するこの複雑な社会において、うまく競争を促すことができる点にある。

市場はその存在自体がただちに善というわけではなく、あくまで良質な競争をもたらすという機能をはたしてこそ評価されるべきだ。

もしもその機能が果たされていないのであれば、市場のルールを作り替える必要がある。

今までのルールを前提に市場を礼賛する(=市場原理主義)のではなく、損なわれた市場の機能を回復するために、過激で根本的なルール改革を目指さなければならない(=市場急進主義)。

では、著者たちが提案する過激な改革とは、いったいどのようなものなのか?


著者たちは、現状の私有財産制度は、投資効率性においては優れているものの配分効率性を大きく損なう仕組みであると警告している。

私的所有を認められた所有者は、その財産を「使用する権利」だけでなく、他者による所有を「排除する権利」まで持つため、独占者のように振る舞ってしまうからだ。

この「独占問題」によって、経済的な価値を高めるような所有権の移転が阻まれてしまう危険性があるという。


代案として著者たちが提案するのは、「共同所有自己申告税」(COST)という独創的な課税制度だ。

COSTは、1.資産評価額の自己申告、2.自己申告額に基づく資産課税、3.財産の共同所有、という三つの要素からなる。

具体的には、次のような仕組みになっている。


1. 現在所有している財産の価格を自ら決める。

2. その価格に対して一定の税率分を課税する。

3. より高い価格の買い手が現れた場合には、

3-i. 1の金額が現在の所有者に対して支払われ

3-ii. その買い手へと所有権が自動的に移転する。


仮に税率が10パーセントだった場合に、COSTがどう機能するのか想像してみよう。

あなたが現在の所有している土地の価格を1000万円と申告すると、毎年政府に支払う税金はその10パーセントの100万円となる。

申告額は自分で決めることができるので、たとえば価格を800万円に引き下げれば、税金は2割も安い80万円で済む。

こう考えて、土地の評価額を過小申告したくなるかもしれない。

しかし、もし800万円よりも高い価格を付ける買い手が現れた場合には、土地を手放さなければならない点に注意が必要だ。

しかもその際に受け取ることができるのは、自分自身が設定した金額、つまり800万円に過ぎない。

あなたの本当の土地評価額が1000万円だったとすると、差し引き200万円も損をしてしまうのである。


このように、COSTにおいて自己申告額を下げると納税額を減らすことができる一方で、望まない売却を強いられるリスクが増える。

このトレードオフによって、財産の所有者に正しい評価額を自己申告するようなインセンティブが芽生える、というのがCOSTの肝である。


著者は二名で、何をされている方なのか、気になった。


エリック・A・ポズナー

シカゴ大学ロースクールのカークランド・アンド・エリス特別功労教授。


E・グレン・ワイル

マイクロソフト首席研究員で、イェール大学における経済学と法学の客員上級研究員。


なかなかに興味深い書だけど、ぶ厚過ぎて、


全く読みきれませんがポイントだけ押さえてみた。


超浅いのだけれども。


1年くらい前、”コモン”に興味があって


それ関係の書をいくつか読んでいたので


入りやすかった。


これも養老先生の影響なのだけど。


こういう書のイメージって、


どうしてもコミュニズムとかに


なってたのでございますがそれはもう


おじさんである証左でございますが


さすがに最近はその認識が上書きされた。


さすが、台湾デジタル発展部部長さんが


推している書だけのことはあります。


日本にもこういう感性の方が政治を


取り仕切っていただけないものだろうかと


痛切に感じる今日この頃でございますが


話をこの書に戻してまして、


過去の世界情勢を丁寧に考察されての


分析なので、感嘆しましたが


日本のことも調べて、かつ仏教的な


考えもミックスしての言説なので


これも世の流れなのか、さすがだなあなんて


自分なぞに感心されてもまったく


響かないだろうけれど


興味以上にそそられる書でございましたことを


夜勤明けのこれまた朦朧とした頭で


思った次第でございます。


 


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