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ローレンツ博士の書から”異なる視点”を考察 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

攻撃―悪の自然誌


攻撃―悪の自然誌

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1985/05/01
  • メディア: 単行本

まえがき から抜粋

この書で扱うのは、攻撃性(Agression)、すなわち動物と人間の、同じ種の仲間に対する闘争の衝動のことである。


わたしは先ごろアメリカへ行ってきたが、その目的の第一は、比較行動学と行動生理学に関して、精神科医、精神分析医、心理学者たちに講演をすること、第二の目的は、フロリダのサンゴ礁での野外観察によって、ある仮説の真偽を追試してみることだった。

その仮説は、わたしが、ある種の魚の闘争行動とその色彩の種を保つ働きとについて、水槽の中で観察した事実をもとにして、あらかじめ立てておいたものだった。


大学病院では、わたしは初めて精神分析学者たちと話し合ったのだが、その人たちはフロイトの学説を、反論する余地のない教義を述べたものではなくて、どの学問の場合でもそれが当然なのだが、作業仮説を立てたものと見ているのだった。


そうとするなら、ジークムント・フロイトの学説のうちで、あまりにも大胆すぎるのでわたしがそれまで同意しかねていた多くの点が、納得できるものだった。


かれの衝動説についてその人たちと論じ合った結果、思いがけないことに、精神分析学の成果と行動生理学の成果とが一致していることがわかったのだが、この一致は、両分野のあいだで問題の立て方も研究法も違い、とりわけ帰納の土台が違うだけに、わたしにはいっそう重要なことと思われた。


死の衝動という考え方については、おそらく意見が全くわかれるだろうと、わたしは想像していた。

死の衝動とは、フロイトの説によると、生命を保つさまざまの本能と正反対の極をなす破壊の原理となっている。

生物学とは縁のないこの仮説は、行動学を研究する者の目から見ると、不必要であるばかりか、間違っている。

攻撃の及ぼす結果は、しばしば死の衝動の結果と同一視されるけれども、攻撃の本能もやはり他の本能と同じように、自然の条件のもとでは、生命と種を保つ働きをもつものなのである。


自分の手であまりにもすみやかに、その生活条件をつくりかえてしまった人間の場合には、攻撃の衝動は破壊を促すことがたびたびあるが、しかしそれと似た破壊作用は、それほど劇的ではないにせよ、他の本能にも同じくあるものなのだ。


死の衝動なるものに対するわたしのこのような見解を親しい精神分析学者たちに向かって主張したところ、意外にもわたしは屋上屋を架していることになったのだった。

その友人たちは、フロイトの著作からいろいろな箇所を引いて、フロイト自身すら自分の二元論的仮説にあまり信頼を置いてはいなかったこと、その仮説は、有能な一元論者であり機械的に物事を考える自然科学者であったかれにとって、もともと性に合わないものであったに違いないことを、教えてくれたのである。


それからほどなくして、わたしは暖かな海にはいって野生のサンゴ礁の魚を調べ、その攻撃を保つ働きのあることをはっきり見てとったとき、この本を書こうという気になった。


ローレンツ博士にこの本を書かせたのが


フロイト博士だったというのが興味深い。


しかも周りの学者の意見から察するに


ローレンツ博士の学説に近しい見解だった


可能性を匂わせるものを感じ取ったと


いうのだからダブルで興味深い。


攻撃と進化の自然淘汰の親和性ってことだろか。


自分はどちらかというとユング博士派なので


そこは一旦置いておこう。


この書はかつて読んだ対談本


日高先生と南沙織さんが話していた。


英語版とドイツ語版の考察などされている。


訳者あとがき 


訳者を代表として 日高敏隆


から抜粋


ローレンツはここでは、これまでの動物の行動の研究の中から、種を同じくするもの同士の闘いや殺し合いの問題を主題として論じている。

同類どうしの闘いや殺し合いーーーそれはバイブルによれば悪である。

モーゼは人間にそれを禁じたが、動物には禁じなかった。

じっさい、動物においては、同類個体間での闘いはたえずみられるものである。


しかし、よく調べてみると、動物においては、この「悪」はじつは「善」なのである。

それは種を維持する上には必要不可欠なものなのだ。

けれど、同類どうしの殺し合いは、動物においても禁止されている。

モーゼによってではなく、進化によって。

闘いは「儀式化」されることによって、真の殺し合いから切り離され、「悪」から「悪」を捨て去ってその善だけを残すようなてだてがこうじられているのである。


ローレンツはこの同種個体ーーー種を同じ(アルトゲノツセ)くする仲間(Artgenosse)ーーーどうしの闘い、すなわち攻撃性(アグレッション・Aggression)について、かれが歩んだと同じ道をたどりながら、読者に語る。


美しい熱帯魚は、攻撃しやすいために美しいのであること、攻撃によって個体が分散し、種が維持されやすくなること、攻撃は内的な衝動によって引き起こされること、それは自発的で抑えがたいものであること、しかしそれは、動物では進化の過程における儀式化という道を経て、悪の牙を抜かれていること、「本能」というものは単純なものではなく、多くの衝動の間に複雑に絡み合いの結果現れることなど、きわめて含蓄の深い章が続く。


ついで、もし攻撃性がなくなったら、個人的友情というものも消失するであろうという意外な認識が、いろいろな動物の例から語られる。

そうなると、連帯とは一体何なのか?

フロイトは死の衝動ということをいったけれど、攻撃の衝動は死の衝動にあたるものなのか?

人間における闘いの基盤に攻撃衝動が働いていることは否定できないが、それが人間においても遺伝に深く根差したものであることも否定できない。

ではそれにどう対処したらよいのか?

このような人間の根本的な問題への問いかけと彼なりの見解が展開される。


このような議論は、従来はフロイト的な見地からの説明か、さもなくば政治・経済レベルからの説明に終始することが多かったようにおもわれる。

しかし、この人間という奇妙な動物は、そのようなどれか一面からの説明を許さない

ティンバーゲンがいうとおり、人間はいまだに「未知なるもの」アレクシス・カレルの『人間この未知なるもの』)である。

ローレンツのこの著書もまた解決ではないけれども、ここに述べられたようなアプローチをとりこんでゆかぬかぎり、人間の哲学的認識も進まないであろう。


サブタイトルの「悪の自然誌」とあるのが


なぜ「悪」なのか、日高先生の解説で腑に落ちる。


自然を無視した文明批判をされる


ローレンツ博士ならではということなのかなと


思いを馳せつつ、夜勤明けブックオフで


遺伝子系の本を購入して歩いてたら


昨年夏に会ったパパ友と偶然会って


近くの大学の食堂に移動して


ローレンツやその他昨今の読書について


熱弁を振るって2時間過ごさせていただき


そこで時の話題、小林製薬の”紅麹”問題の


パパ友なりの見解をお聞かせていただき


そういう視点だとするとまた大手メディアでの


取り上げ方や評価などとは、まったく


異なるなあ、と滋味深く拝聴した次第で


それが出来るのは紙の読書からの


思考技術がなせる技だと勝手に分析&


リスペクトさせていただきつつ


ますます読書熱からの研究及び


フィールドワークに精が出そうだと思った


のでございました。


 


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②槌田敦先生の2冊から”エントロピー”を考察 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]


脱原発の大義: 地域破壊の歴史に終止符を (農文協ブックレット 5)

脱原発の大義: 地域破壊の歴史に終止符を (農文協ブックレット 5)

  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: 単行本

2. 多数の農民は失業者になる

【強者のための経済学になり果てた現代経済学】


から


現代社会において、貧富の格差はますます拡大している。


現代経済学者は、その原因を検討することなく、無責任にも「政府はもっと支出と雇用を」(クルーグマン、朝日新聞12年3月9日)などと主張する。

どこから、その資金を捻出するというのか。

富者から税金を取れば良いが、富者は政治を支配しており、損になることをする訳がない。

しかし、富者から見ても、格差社会はトラブルが多く、放置すれば暴動に発展する。


そこでわずかに応ずるだけである。

これでは、格差社会は解決できない。


結局のところ日本のように消費税を値上げして、弱者から税金を搾り取り、弱者を苦しみ追い込むことになる。

同じ人間に生まれて、強者である富者の繁栄と弱者である貧困者の悲劇。

現在経済学は富者の利益だけに関心を示す学問に成り果ててしまった。


【失業と貧困の最大の原因は自由貿易】から


貧困の原因は失業である。

そして、貧困者には需要がなく、失業者は供給できない。

格差社会では多数の人々には需要も供給もなく、商取引から排除されている。

その一方、少数の富者(強者)が商取引を華々しく繰り広げている。

アダム・スミスのいう「神の見えざる手」は壊れている。


日本では、自由貿易は、農業を破壊することが最大の問題であると考えられている。

そして、農業ばかりか、その他の産業も破壊するという。

しかし、自由貿易にはもっと基本的な失業と貧困の問題がある。


はっきり言えば、自由貿易は、農業者を大量に失業させ、これらの人たちを貧困に追い込むのである。


3. 今、必要なのは弱者のための経済学


【エントロピー増大にもかかわらず、人間社会が維持される条件とは】


から


物理学のエントロピー増大の法則により、人間社会の活動は資源を消費し、廃物を発生する。

この人間活動を続けると、環境にある資源は枯渇し、環境は廃物だらけになるはずである。

ところが、現実には資源は枯渇しないし、廃物はいつの間にか消えている。

つまり、地球は人間社会に豊かな環境を提供しているのである。

これが、人間経済が持続できる第一条件である。


その理由は、化石燃料のように資源が豊富で、現在の消費程度では糖分枯渇しないことに支えられている。

これに加えて、環境に排出された廃物がふたたび資源に戻っていることも幸運である。

これは、宇宙に余分のエントロピーが捨てられて、環境に物質循環が存在するからであるが、その物質循環に人間社会も載っているのである。


これに対して、原子力の廃物、放射能を資源として、これをウランに戻す能力は自然にはなく、ここには物質循環は成立しない。


つまり、ウランはそもそも使用可能な資源ではない。

それを無視して原子力を利用した結果が、原子力の困難の原因なのである。


人間社会維持の第二条件は、環境から資源を取り入れ、廃物を自然に返すことが保証されていることである。

その作業は需要と供給という経済活動で支えられた物質循環がしている。

これを強調する学問がエントロピー経済学である。


需要と供給による社会の物質循環を維持することにより、人間社会の持続性は維持される。

これに注目しない「持続可能性」の主張はすべて誤りである。


【商取引の法則、需要と供給】から


では、どのようにして、需要と供給により社会の物質循環が成立するのか。

それは、全面的に古典経済学の正しさを認めることである。

需要者は商品を受け取り貨幣を支払う。

供給者はその逆をおこなう。

その商取引が貨幣循環を成立させる。

これが物質循環を支えている。

そして自然から資源を得て、自然に廃物を返している。


ここで、需要曲線と供給曲線の考えが導入される。

需要曲線とは、その金額ならば買っても良いという商品を価格が下がる順番で並べた曲線であり、供給曲線とは、その金額ならば売ってもよいという商品を価格が上がる順番で並べた曲線である。


その交点が取引価格となる。

この金額で取引すると、需要者は予定価格よりも安い価格で買うことができて得をし、同時に供給者は予定よりも高い金額で売ることができて得をし、両者共に利益が得られる、

この利益(余剰という)は新しい需要となるので、経済成長の原因となる。

これが、いわゆるアダム・スミスの神の見えざる手である。


エントロピー経済学は、このアダム・スミスの神の見えざる手に加えて、この商取引が社会の中の物質循環を保証していることを重視する。

ところが、現代経済学は、その条件を壊す「自由貿易」を掲げている。

これは人間社会を壊す悪魔である。

貿易では、真の自由貿易、買うの買わないの「自由」を尊重する必要がある。


国内政策では、働けるものに補助金を出してはいけない。

失業者には貸付金、就職したら返金(所得税に加算)させる。

働けない子供、病人、老人には税収により生活資金を支援する。

このようにして「アダム・スミスの神の見えざる手」は成立し、失業と貧困のない健全な社会にすることができる。


【残された問題】から


貧困者は生きるために自然を破壊する。

貧困は砂漠化への道である。

このようにして、貧困国では子孫の生活する場所はどんどん消えていく。

ここには売る商品はなく、買う資金もない。

そこで必要なのはこの半砂漠で貿易や援助なしに自給する技術である。


また、近い将来に予測される寒冷化(『新石油文明論』2002年参照)で、北方の農地は使えなくなる。

この人達は集団で移住を求めるであろう。


古典的な戦争の心配もある。

その場合を想定して、温暖化に住む人たちがどのようにして北方の人たちを受け入れるか、検討を始める時がきた。

CO2で温暖化するという騒動で浮かれていた時代はすでに終わったようだ。


すごい。


槌田先生の中では2012年時点


12年前にすでに脱炭素社会キャンペーンは


終わっているのか。


現実的には、いいのか悪いのか、はたまた


浮かれているのか、落ち着いているのかも


不明だけれども、脱炭素キャンペーンは


終わっていないし、さらにご指摘通りで


本当に悲しいが古典的な戦争を


中東ではしていて昨夜のニュースから。


 イラン、イスラエルへミサイル発射 


 「報復攻撃」実施と発表


それは置いておいていいのか不明ですが


一旦置かせていただき


”エントロピー”についての理解に補強として


他の書籍から一部引かせていただきます。



環境保護運動はどこが間違っているのか (TURTLE BOOKS 7)

環境保護運動はどこが間違っているのか (TURTLE BOOKS 7)

  • 作者: 槌田 敦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 1992/06/01
  • メディア: 単行本


増補・地球温暖化は悪いことか


◉自然のサイクルとは


汚染とは、物理学のことばでいうと、エントロピーです。

地球は、このエントロピーを宇宙に捨てることのできる星です。

これによって、地球上にはいろいろな活動が存在できるのです。

地球に存在する最も大切な活動は、大気の循環です。

つまり風が吹くことです。

この循環により、大気上空で放熱して、宇宙に熱エントロピーを捨てています。

水が蒸発して雨が降るという水の循環も大切な活動です。

この二つの循環活動があるので、地球表面は熱の汚染から免れ、快適な気候が保証されています。


しかし、これだけでは、もうひとつの物の汚染が溜まってしまいます

これは、生態系での養分の循環が解決しています。

土から養分を得て植物が育ちます

これを動物が食べ、植物と動物の死骸は微生物が分解して土に養分を戻すという養分の循環です。


この養分の循環で生態系は元に戻ったのですから物エントロピーは増えていないはずなのですが、その代わり発熱して熱エントロピーになっています。

植物から堆肥をつくるとき、発熱していることからこれを知ることができます。


生態系の循環は物汚染を処理して、熱汚染に変えているのです。

この熱汚染も大気と水の循環によって宇宙に捨てているので、地球上は物汚染も熱汚染も免れることができるのです。


ところで、この養分とは、リンや窒素などの肥料のことですが、水に溶けて下方へ流れ落ちてしまう性質があります。

それを解決しているのは鳥などの動物です。

海や平地で餌を得て、これを高地に運び上げ、そこで糞をして養分を供給しています。

これが地球規模の養分の大循環です。

これにより海洋だけでなく山地を含む陸地にも生態系が存在できるのです。


これらの四つの循環が自然のサイクルと呼ばれるものです。

これらの循環の中に人間の廃棄物を繰り返す限り、汚染問題が発生することはないのです。

しかし、この自然のサイクルの能力を超えて人間社会が廃棄物を発生させると、その汚染は宇宙に捨てることができず、地球上に留まることになります。

これが汚染問題なのです。


自然の循環が大切な営みであり、


自然が人間生活に欠かせないもの、


それ以上でも以下でもない。


それを崩すことは、暗い未来しか


見えてこない。


にもかかわらず、世界や近代文明で


ただいま現在行われていることは


一体何であろうかという疑問。


心配だらけだけれども、日常生活は


キープできるよう個々で頑張って


いかなければと気を引き締めさせて


いただき、仕事や読書を続けて参ります


所存でございます。明日も夜勤なので。


 


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①槌田敦先生の論考から”違和感”と”現実”を体感 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]


脱原発の大義: 地域破壊の歴史に終止符を (農文協ブックレット 5)

脱原発の大義: 地域破壊の歴史に終止符を (農文協ブックレット 5)

  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: 単行本

現代の暴力装置=原発と自由貿易に騙されないために

弱者の視点・エントロピー経済学で考える


元理化学研究所研究員 前名城大学経済学部教授


槌田敦


から抜粋


強者(富者)は、安い電力を口実にして原発を建設し、経済発展を口実にして自由貿易を押し付け、強者の利益をさらに拡大しようとしている。

そして現代経済学は、この強者の欲望を支える道具となっている。


この強者のための現代経済学をふたたび、アダム・スミスの経済学に戻し、福祉のための学問、つまり弱者のためのエントロピー経済学を構築する。

そのため、まず、原発と自由貿易という現在の暴力装置のウソを暴き出すことから始める。


1.これは「事故」を超えて「事件」である


【福島原発事故は、これまでの原発事故と本質的に異なる】


から抜粋


スリーマイル島原発事故(1979年)の原因は、「逃し弁開閉の誤信号」だった。

弁が開いているのに、閉じていると表示され、原子炉の冷却水が流出していることに運転員は気づかなかったのである。


チェルノブイリ原発事故(1968年)は、「制御棒の設計ミス」だった。

原子炉を緊急停止しようとして緊急制御防を入れたら、かえって核反応が進み、核爆発となってしまったのである。


今回の福島事故は、このような単純なミスで起こったのではない

事故の原因は東電による安全対策の手抜きだった。


【大災害となった福島原発事故】


から


この福島事故で、東京電力は大量の放射能を環境にばらまき、強制避難で45人(NHKによれば68人という)を死なせ、数人を自殺させ、福島県民の心身を傷害した。


それだけではなく、BEIRーVII報告(アメリカ科学アカデミー2005年6月29日)によれば、100人が生涯において平均して100ミリシーベルト被曝すると1人はがんになり、またその半分はがん死する。

したがって、生涯被曝が50ミリシーベルト増と予想される福島県民200万人の場合、今回の事故によって1万人はがんになり、その半分5000人はがん死させられることになる。


【今後も安全費用の節約による原発事故継続の心配】


から抜粋


原発では事故があるたびに安全費用の追加が繰り返され、原発の単価はますます高くなっている。

その原因は、放射能という毒物が科学技術では消滅できないからである。

そこで、この放射能毒物の閉じ込めだけで対策することになる。


しかし、放射能はこの閉じ込めもすり抜けて、漏れ出してしまう

そこでまた別の閉じ込め作業の追加が必要となる。

これの繰り返しで、原発の費用は増えていく。

これが、原発の費用が火力の費用よりも高くなる理由である。


放射能は、もはや科学技術の手に負えないことを認めなければならない

原発で儲けようとして裏目に出て、損ばかり増えることになった。

経済学は、この原発の現状を認め、対策不可能な放射能を生み出す原発を廃止する側に立たなければならない。


ところが、それを許さない勢力が存在する。


原発でメシを食っている人たちである。


この人たちは直接電力会社に雇われている訳ではない。

下請けの下請けの…という形になっていて、多くの企業が原発にたかっている。

この連中が、原発停止では職を失うと騒いでいて、これだけの被害があったのに、一部の町長や町会議員に原発再開を言わせているのである


【事故原発の現状説明もウソだらけ】


から抜粋


ところで、この東電は、安全対策の手抜きをごまかすために、原子力・保安院とともに話題をすり替えてきた。

たとえば「炉心溶融」がそれで、マスコミはまんまとひっかかった。

炉心溶融(メルトダウン)とは、融点2800℃の酸化ウラン燃料が溶融することを言う。


スリーマイル島原発のように、完全な空焚きになればそのような事態になるが、福島事故では、原子炉の底には水があり、燃料を支えている構造材の鉄(融点1500℃程度)が溶けて、燃料と共に水中に崩れ落ちて冷えたと考えられる。

構造材の融解はウラン燃料そのものの溶融ではないから炉心溶融ではない。


それから、4つの原子炉建屋ですべて水素爆発したことになっている。

しかし、水素爆発は1号機だけで、2号機は爆発そのものがなかった。

3号機では1986年のチェルノブイリ型爆発である。

水素爆発では黒い煙にはならないし、プルトニウム241(半減期13年)が環境に飛び散ることもない。

4号機は蓋の開いた原子炉から水蒸気が激しく噴き上げ、それが8月になっても続いていたから、1999年のJCOの臨界事故と同様の核暴走があったと考えられる。

この原子炉には燃料が入っていないとされているが、ウソらしい。


【放射性廃棄物はどのようにするのか】


から抜粋


原発推進の経済学者たちは、放射性廃棄物の問題に口を閉ざしてきた。

それにもかかわらず、彼らは、今でも、原発で電気を得て、経済成長しようと叫んでいる。

私は、放射性廃棄物の問題について、子孫に対する4つの犯罪を整理した。


①処理・処分の困難な毒物を製造する行為、

②毒物を取り扱い困難にする行為、

③人間集団の遺伝情報を狂わせる行為、

④子孫に毒物管理を強制する行為

(『エネルギーと環境 原発安楽死のすすめ』1993年、183ページ)。

けれども、原発推進の経済学者たちを反省させるには、私の力は足りなかった。


槌田先生の指摘が正しいとすると


今まで大手既成メディアで


報道されていることとは


違和感があるなあ、という実感。


福島原発事故以前から、槌田先生は警鐘が


無視され続けている現状。


権力は自分たちでは手を下さずに


自粛警察と化している人々が動いている


いびつな構造。


なんかテーマが同じだからか


池田清彦先生に似てきてしまったな。


(どこがだよ!)


何を支持するのが良いのか、は


自分で調べてより正確な”知識”に裏付けされた


”考え”なのだろうと思った久々の日曜早朝読書


梅茶をすすりながらそろそろ朝食をとり


風呂とトイレ掃除しないと。


先週サボっておりますから。


 


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2冊から原発の是非を問うてみる [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]


環境保護運動はどこが間違っているのか (TURTLE BOOKS 7)

環境保護運動はどこが間違っているのか (TURTLE BOOKS 7)

  • 作者: 槌田 敦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 1992/06/01
  • メディア: 単行本

あとがき 1992年5月 から抜粋


この世の中はまったく嘘だらけである。


私もできることなら「嘘だ、嘘だ」などとは言いたくはない。

だが、嘘と知ってしまったら黙っていられない性分だからしかたがない。


かつて、ナチの宣伝相だったゲッペルスが「嘘を100回繰り返すと真実になる」と言ったとか聞いた。

この話が本当かどうかは知らないが、騙しに乗せて動かす政治の世界をよく表している。

しかし、この表現はすこし違うような気もする。

そこで、もう少し正確に表現すると、「100人の人が同じことを言うと嘘も真実になる」とすればいい。

本当に嘘をついているのは1人でいい。残り99人がその1人の言う嘘に騙され合唱すれば、それが真実になるのである。


取るに足らない嘘なら、騙されるのは馬鹿だと言ってすますこともできる。

しかし、戦争問題、エネルギー問題、環境問題などで、政府の騙され大衆が合唱すると、とんでもないところに連れていかれる。


現段階での嘘の筆頭は原子力である。

約40年前のアイゼンハワー大統領の「平和のための原子力」は実は「軍事利用を維持するための平和利用」であった。

日本の原発関係者はこのことをよく知りながら「日本は被爆国、だからこそ平和利用」と我々の親たちを騙し、また「地球寒冷化」と「石油30年枯渇」で脅かして、「原子力しかない」と大合唱させ、原発を建設したのであった。


最近は、「原発は地球温暖化を救う」との大合唱が演出されている。

これによって、青森六ヶ所村にウラン濃縮工場と再処理工場という軍事施設が建設されている。

また、福井県敦賀に建設された高速増殖炉は高性能原爆用の高純度プルトニウムの製造を目的にしている。


最近は、これらが軍事工場であることを隠すために、科学技術庁はウランとプルトニウムについて一切を秘密にする方針を指示した。

以前から、日本も原爆を持つべきだと主張する人々がいたが、とうとう日本政府も原爆製造を決意したと理解される。

とくに、六ヶ所村に建設されるプルトニウム貯蔵所で何がされても、この科学庁指示で外からは何もわからないことになる。

日本版『アルザマス16』(旧ソ連核兵器製造所)への道がここに始まったと思われる。

さらに自衛隊とこのプルトニウムとの結合が、まず海外からの輸送の護衛という名目で始まろうとしている。


政治権力の思うままに引き回されると、自分だけでなく子孫までも不幸にする。

そのようなことのないようにするには、政府の言う嘘に合唱してはいけない。


槌田先生は柴谷篤弘先生との対談で


興味が湧きこの書を拝読。


この約20年後、東日本大震災での原発事故は


言うに及ばずでございますが


その論考はまた改めるとして、脱原発の


反対側の意見として考えるとすると


吉本隆明先生が真っ先に浮かぶのだけど、


不遜ながらブックオフに売ってしまったため、


かつ詳細は忘れてしまったのでございまして


その前にこの本を昨日読んでたら


興味深いというか、そうなるのか、と


思ったのがあったので引かせてください。



コロナ後の世界 (文春新書 1271)

コロナ後の世界 (文春新書 1271)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/07/20
  • メディア: 新書

第4章 認知バイアスが感染症対策を遅らせた

スティーブン・ピンカー


AIへの不合理な恐怖から抜粋


新しいエネルギーについては、原発も選択肢の一つです。

原発はみなさんが考えるより安全なエネルギーです。

原発ができてから約60年で、死者は1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故での31人だけです。

2011年のフクシマでは原発事故による直接の死者は出ていません


一方、火力発電による大気汚染や、化石燃料の採掘、輸送中の事故で多くの人が死亡しています。

発電1キロワット時あたりの死者数は、原子力を1とすると、石油は243、石炭は387にもなります。

原発についての報道方法が、我々を根拠のない恐怖に陥れているのです。

次世代の原子炉はモジュラー式で小型ですし、冷却システムも改善されて安全です。

AIに対する恐怖も、不合理です。


この後のAIに対する論考になりまして


それはそれで興味深く、巷に流布される


AIにまつわる恐怖や不安については


落ち着いてよく考えれば払拭される的な


いたって至極冷静なものですが、そちらは


一旦割愛し原発についてだけフォーカス。


”フクシマ”の原発事故を


”直接の死者が出ていない”とされているが


それで本当に良いのだろうかという疑問。


チェルノブイリの事故も死者31人だけ、


という認識でそれも本当に良いのだろうか。


それこそ、認知バイアスなのではないか?


って”認知バイアス”のなんたるかを知らないので


ピンカー先生に何もいう資格はないのだけど


ここでまた与えられた新たな研究材料に


悶え苦しみつつ、原発論とは異とする


大量の未読の書たちへの詫び状を


心で作成しつつ夜勤明けでの


朦朧としてきた思考能力であるため


このテーマは改めたいと存じます。


どもすみません。


 


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3冊からやんわりハラリ氏の肩を持ってみる [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

『サピエンス全史』をどう読むか


『サピエンス全史』をどう読むか

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/11/27
  • メディア: 単行本

スーパーヒューマン

柴田裕之


から


力強い声だった。

インタビューに答える著者の声は、自信に満ち、力強かった。


昨年(2016年)9月下旬、『サピエンス全史』の日本語版刊行に合わせて、版元の河出書房新社の招待で来日した著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、4日にわたって各種メディアの取材を受けた。


初日の朝、ホテルのロビーで待ち受ける私たちの前に姿を現したハラリ氏は、物静かな方だった。


ところが、上階の取材会場に移ってインタビューが始まったときに私の耳に飛び込んできたのが、冒頭に書いたあの声、華奢な体のどこから出てくるのかと思うほどの声だった。

頭が切れる人であることは一目瞭然で、さまざまな問いに、澱みなく的確に応じていく。


核心を衝く質問に対しては、熱弁を振るうこともあるが、けっして興奮するわけではなく、あくまで冷静で、ときどき喉を潤すために口に運ぶグラスは、毎回丁寧に、きちんとコースターの中央に戻す。

理路整然と語るけれど、無機乾燥ではなく、ユーモアを交え、わたしたちにもわかりやすい日本の例を引く。


圧巻はやはり最終日、午後遅くのNHKでのスタジオ収録だろう。

『サピエンス全史』を特集する「クローズアップ現代+」(2017年1月4日放送)のためのもので、インタビュアーは池上彰氏。


このインタビューのうち、実際に放映されたのは正味4分にも満たなかったが、じつは収録は予定の1時間を大幅に超えて続いた。


途中で英日担当の同時通訳者がギブアップし(同時通訳は15分ぐらいで交代するのが標準らしい)、休憩後、収録再開となった。


これがまた見事だった。

ハラリ氏も池上氏も、中断前の雰囲気や勢いをそのままに、全く途切れを気取らせない形でインタビューを続けた。


収録を終えたハラリ氏は、疲れも見せず、


新宿の紀伊国屋書店本店に直行し、


『サピエンス全史』にサインした。


その後、ようやく遅い夕食となった。

場所は近くのベジタリアンの店。

そう、ハラリ氏は原則としてヴィーガン(肉や魚ばかりでなく、卵やチーズ、牛乳などもとらない人)なのだ。

しかも、瞑想を日課としている。

インタビューの合間にも、ホテルの部屋に戻ってしばし瞑想をしていた。


『サピエンス全史』をお読みになった方は、ハラリ氏と仏教の近しさを感じ取られたかもしれないが、それはこうした背景があるからだろう。

ただし、ヴィーガンであるのは宗教的理由からではない


私たちが人間以外に生き物を物扱いにしていることに気づき、それに与(くみ)したくないと考えたからだ。

だから、単に殺生を嫌うのではなく、動物の扱いに問題があると思われるのであれば、食肉産業ばかりか酪農の産物も口にしたくないという。

他人にも菜食を勧めるが、できるかぎりでかまわない、間違っても菜食を宗教に変えて狂信してはならないと説く。

イデオロギーの孕(はら)む危険を知り尽くした、いかにもハラリ氏らしい発想が生まれ、『サピエンス全史』でも幸福を大切な軸としたのだろう

しかも人間だけではなく動物までも対象にして。


ところで『サピエンス全史』を読んでいると、大きくかけ離れたものを結びつけ、話に織り込むのが実に巧みなことに感心する。


こうした形で結びつきを提示するのは、遊び心もあるのかもしれないが、言わんとすることを読者にどう伝えるかにいかに腐心しているかの表れでもある。


さらに、物語(ストーリー)として語るということをとても重視している。


ではなぜそこまで心を砕くのか?

それは一つには、伝えるのが科学者の使命であるという信念を持っているからだ。

それも難解な文章や専門用語だらけの文章で学者仲間だけに伝えるのではなく、広く世間に伝えることが大切なのだ。

そしてまた、なるべく多くの人が歴史に関心を持って欲しいと望んでいるからでもある。

なぜなら、現代にとって歴史は重要だからだ。

読者にも新しい目で世界を見てほしい、先入観を打破してほしい、問いを発し、何が虚構で何が現実かを考えてほしい、人間は過去に支配されているがそれに気づいていないから歴史を学んで自己を解放してほしいーーーそれが、「現実をあるがままに見て、知る」のがモットーであるハラリ氏の願いなのだった。

そしてそれが、現代の問題の解決策へとつながるというわけだ。


それにしても『サピエンス全史』は大部の書物だ。

なぜ現生人類にまつわるこれほどスケールの大きい物語を描いたのか?

それは、母国イスラエルの大学で教壇に立つうちに、教育がグローバル史を教えていないことに気づいたからだそうだ。

歴史の大問題にはマクロの視点に立たなければ答えられない。

グローバルな現代世界が抱える問題に取り組むには、大局的な見方をすること、いわゆるビッグピクチャーを捉えることがぜひとも必要だから、というのがハラリ氏の答えだった。


同行していたハラリ氏のマネージャーのヤハブ氏との話が、たまたま本のこの部分に及んだ。

生物工学やサイボーグ工学の力を借りて永遠の命を得たいですか、と私が水を向けると、いっぺんに非死(アモータル)の超人になるというのは自分には想像がつきづらいから、少しずつ、たとえば30年寿命を延ばして、それからまた30年という具合ならいいかもしれない、という趣旨の答えをいただいた。


ハラリ氏はどう考えていらっしゃるのでしょうね、と問うと、

「He’s already superhuman.(彼は、もうすでにスーパーヒューマンだから)」とのこと。

まさに膝を打つ思いだった。


かなりストイックな生活をされていそうなのは


風貌や喋り方を見ても感じ取れますが


身近でご覧になった柴田先生の印象もそのようで


得心(とくしん)いたしました。


Book Guide

『サピエンス全史』を楽しむためのブックガイド





身ぶりと言葉 (ちくま学芸文庫 ル 6-1)

身ぶりと言葉 (ちくま学芸文庫 ル 6-1)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/01/10
  • メディア: 文庫



ビッグヒストリー入門-科学の力で読み解く世界史-

ビッグヒストリー入門-科学の力で読み解く世界史-

  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 単行本


負債論 貨幣と暴力の5000年

負債論 貨幣と暴力の5000年

  • 出版社/メーカー: 以文社
  • 発売日: 2016/11/22
  • メディア: 単行本



人類がたどってきた道 “文化の多様化

人類がたどってきた道 “文化の多様化"の起源を探る (NHKブックス)

  • 作者: 海部 陽介
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2005/04/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る (NHKブックス)

暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る (NHKブックス)

  • 作者: 山極 寿一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2007/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2015/01/28
  • メディア: 単行本



人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

  • 作者: 西田 正規
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/03/09
  • メディア: 文庫



森は考える――人間的なるものを超えた人類学

森は考える――人間的なるものを超えた人類学

  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2016/01/07
  • メディア: 単行本



カイエ・ソバージュ

カイエ・ソバージュ

  • 作者: 中沢 新一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/03/06
  • メディア: 単行本


「人類の思考能力とそれが生み出してきた宗教と経済や哲学などとの内在的な関係を探る」講義の記録である本書は、『サピエンス全史』に比肩(ひけん)しうる長大な射程で書かれた著者の思考の集大成的な意義をもつ巨編です。



猿と女とサイボーグ ―自然の再発明―新装版

猿と女とサイボーグ ―自然の再発明―新装版

  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 単行本



ダーウィンの遺産――進化学者の系譜 (岩波現代全書)

ダーウィンの遺産――進化学者の系譜 (岩波現代全書)

  • 作者: 渡辺 政隆
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

  • 作者: 吉川 浩満
  • 出版社/メーカー: 朝日出版社
  • 発売日: 2014/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



生物圏の形而上学 ―宇宙・ヒト・微生物―

生物圏の形而上学 ―宇宙・ヒト・微生物―

  • 作者: 長沼毅
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 単行本



動物のいのち

動物のいのち

  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2003/11/01
  • メディア: 単行本



動物的/人間的 1.社会の起原 (現代社会学ライブラリー1)

動物的/人間的 1.社会の起原 (現代社会学ライブラリー1)

  • 作者: 大澤 真幸
  • 出版社/メーカー: 弘文堂
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



新版 動的平衡ダイアローグ: 9人の先駆者と織りなす「知の対話集」 (小学館新書 468)

新版 動的平衡ダイアローグ: 9人の先駆者と織りなす「知の対話集」 (小学館新書 468)

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2024/04/01
  • メディア: 新書


歴史を変えた気候大変動 (河出文庫 フ 8-2)

歴史を変えた気候大変動 (河出文庫 フ 8-2)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/02/04
  • メディア: 文庫

歴史の研究 1

歴史の研究 1

  • 出版社/メーカー: 社会思想社
  • 発売日: 1975/11/01
  • メディア: 単行本


今はあまり振り返られることがなくなりましたが、世界史を文明の発生と解体という巨視的な視野で書いた歴史書はトインビーにはじまります。


世界史の中に宗教を積極的に位置付けて鈴木大拙にも強く支持されました。

『サピエンス全史』の遠い先達として読み返してみたい一冊です。



現象としての人間【新版】 新装版

現象としての人間【新版】 新装版

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2019/02/26
  • メディア: 単行本



スラムの惑星―都市貧困のグローバル化―

スラムの惑星―都市貧困のグローバル化―

  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2010/05/20
  • メディア: 単行本



人工知能と経済の未来 (文春新書)

人工知能と経済の未来 (文春新書)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/07/19
  • メディア: 新書


『サピエンス全史』は人類の終焉の後に新たな種「ホモデウス」が出現することを予言しています。

その未来の象徴が人工知能であることは言うまでもありません。

では人工知能は私たちにいかなる社会をもたらすのでしょうか。

これに答えた多くの本の中でも本書が出色です。


ハラリ氏の聡明な言説に打たれた後に


反対側の意見も気になるところ。


真実やいか、を思わずにはいられない。



国難のインテリジェンス (新潮新書)

国難のインテリジェンス (新潮新書)

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/04/17
  • メディア: 新書


はじめに から抜粋


年一度、全世界から政治エリート、経済エリートが集まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、2018年と20年に基調講演をつとめたのがイスラエルの歴史学者で未来学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏(1976年生まれ)だった。


ハラリ氏は、人類は飢餓と疫病と戦争をほぼ克服することに成功したと宣言した。

そして近未来に生命科学とAI(人工知能)を運用した紙のような人間「ホモ・デウス」が出現すると予測した。


しかし、ハラリ氏の前提は、過去3年でことごとく覆された

20年春からパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症(COVID−9)で人類が感染症をほぼ克服したという前提が崩れた。


22年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した。


ウクライナ戦争は事実上、ロシアVS.(ウクライナを支持する)西側連合(その中には日本も含まれる)の本格的な戦争になった。


ハラリ氏に代わって「第三次世界大戦はすでに始まっている」と主張するフランスの人口学者で歴史学者のエマニュエル・ドット氏(1951年生まれ)の方が説得力があると現在では受け止められている。


そのため中東やアフリカでは飢餓が深刻さを増している。

人類は飢餓をほとんど克服したというハラリ氏の前提も成り立たなくなった。


世界は再び激動の時代に入った


佐藤先生の言い分もわかるし、この書の


佐藤先生方のの対談のどれもシャープな分析で


さすがと言わざるを得ませんが


ハラリ氏をちとフォローしたくなるのは


ハラリ氏がダボス会議で言った”戦争”とは


”国家間の戦争”という意味だったのでは


ないでしょうか、と言う疑問は拭えない。


そもそもダボス会議での講演を聞いてないので


どのような力の入れ方で物申されたか不明ですが


文字だけで見ると、確かに”感染症”も”飢饉”も


前提が崩れているのは否めない。


佐藤先生も実はそんなことは調子しているのだよ


単純に”国家間の戦争”ではないことくらい


想定しておられると思うが、仮にハラリ氏の


講演内容が勇足だったとしても、


ハラリ氏の言説の本質は大きく崩れないのでは


ないかなあ、特にホモ・デウスの出現は、などと


『サピエンス全史』も『ホモ・デウス』も未読の


自分が論考深めても、全く説得力のない


夜勤前のバスで読んだ本でございましたことを


唐突に付記させていただきます。


唐突の付記つながりで、最後にもう一冊


引かせていただきたく存じます。



コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線 (朝日新書)

コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線 (朝日新書)

  • 作者: 養老孟司 他
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/08/11
  • メディア: 新書


ユヴァル・ノア・ハラリ


脅威に勝つのは独裁か民主主義か分岐点に立つ世界


から抜粋


我々にとって最大の敵はウイルスではない

敵は心の中にある悪魔です。

憎しみ、強欲さ、無知

この悪魔に心を乗っ取られると、人々は互いに憎み合い、感染をめぐって外国人や少数者を非難し始める。

これを機に金儲けを狙うビジネスがはびこり、無知によってばかげた陰謀論を信じるようになる。

これらが最大の敵です。


我々はそれを防ぐことができます

この危機のさなか、憎しみより連帯を示すのです。

強欲に金儲けをするのではなく、寛大に人を助ける。

陰謀論を信じ込むのではなく、科学や責任あるメディアへの信頼を高める

それが実現できれば、危機を乗り越えられるだけでなく、その後の世界をより良いものにすることができるでしょう。

我々はいま、その分岐点に立っているのです。

(2020年4月15日)


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