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中村桂子先生の対談から”DNA”を考察 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

人間が生きているってこういうことかしら?


人間が生きているってこういうことかしら?

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2022/02/09
  • メディア: 単行本

生きているとはどういうことか

いのちと時間とDNA


から抜粋


内藤▼

私も医療を学びながら、先生の疑問に通じるようなことを何度も感じていました。

先ほどのアメリカ流の科学的育児も、1人ひとりの違いは置いておいて、実験データから因果関係を特定し、こうすればこうなるとマニュアルをつくるわけですよね。

でも、現実の子育ては生活の真っ只中でやるわけですから、特定されない因果関係がいっぱいあって、赤ちゃんだけをジーっと見ているわけにも行きませんよね。


中村▼

そうね。

お乳は3時間おきにあげてくださいと言われても、「あれ、うちの子は飲まないな」ということがあり、それが現実です。

科学的な実験データがどうであれ、生きているのは目の前の子どもですから。

とても機械のようにはやれないし、それでは生きものを育てていることにはなりませんでしょ(笑)。


内藤▼

そんなふうに感じて「生きているとはどういうことか」と問いながら、ご自分の研究の立っているところを探っていくのは、大変じゃありませんか?


中村▼

人間が生きているとは何かを知りたい。でも、DNA研究は面白い。

DNAから離れずに、しかも機械論でない考え方はできないものかしらと悩んだんです。

その頃、人間の細胞に入っているDNAのすべて、これをゲノムと呼ぶのですが、その全塩基配列を調べようという「ヒトゲノム計画」が持ち上がりました。

提唱者のひとりはアメリカのがん研究のリーダーでした。

がんを遺伝子から突き止めようとしたらとても複雑で、けっきょく、人間のDNAをぜーんぶ調べなくてはならないとなったわけです。


内藤▼

「ヒトゲノム計画」は、そういうところから出てきたんですね。

ところで初歩的な質問ですが、DNAとゲノムは何が違いますか?


中村▼

それがとても大事なことなので、専門家じゃない方にもここだけはわかっていただきたいといつも思います。

科学の知識だと思わず、生きものを生きものとして見ようとする大事な基本なので。


内藤▼

ぜひ、教えてください。


中村▼

DNAはデオキシリボ核酸の略だから、モノの名前です。

これは遺伝子として大事な役割をします。

ところで、細胞に入っているすべてのDNAをゲノムとして見ると、そこには、ある生きものがその生きものになるために必要なすべての遺伝子があるだけでなく全体としてのはたらきという情報も出てきます。

つまり、DNAとか遺伝子というだけでは出てこない次元が、ゲノムという時には出てくるの。

「ヒトゲノム計画」はゲノムに目を向けたのは素晴らしいけれど、機械論的に、人間のDNAを端から端までぜーんぶ調べて書き出してしまえば、人間をつくっている部品がぜんぶわかり人間がわかるだろうという発想なわけね。すごく単純化して言えば。


でも、私はゲノムを全体して見たいと思ったの。

時間を入れて。


内藤▼

ゲノムに時間を入れる?

それはどういうことなんでしょう。


中村▼

生きものは38億年前に生まれた祖先細胞から始まり、現在の生きものはすべてそこから生まれたものということがわかっていますよね。

あなたの細胞の中にあるゲノムはご両親から半分ずつ受け継いだもの。

ご両親はそのご両親からというように祖先を辿ると生命の起源まで戻ります。

つまりあなたのゲノムは38億年前からこれまでの歴史が入っているわけね。

すべての人、すべての生きものすべての歴史と関係が書き込まれていることになるわけです。

歴史は一回だけのものでしょう。


内藤▼

ええ、いちど起きたものは変えられないし、それぞれに固有のものですね。

患者さんを診るときには、お会いしていなかった間にどうだったか、様子の変化をご家族に聞いたりしますが、経過や流れの中で見たいとわからないことがあります。

そこだけを取り出しても判断できない。

でも、機械ならば、昨日の調子はどうだったかを見る必要はありませんね。

壊れているところを直せばすみます。


中村▼

そうなの。

だから生きものは機械とは違う。

機械ならば、再現できますね。

設計図があって、同じ部品をそろえれば何度でも同じものを作れる。

そういう考え方では生きものは捉えられません。


内藤▼

確かに、その通りですね。

今ふと思ったのですが、私が在宅で患者さんを診る意味も、先生が「時間を入れる」とおっしゃったことと関係がある気がします。

患者さんの病気は病名がつくからには共通の特徴があります。

でも、病名はおなじでも病気の現れ方はさまざまですし、その人の暮らしの中でどう病気に向き合うか、何が良いかはみんな違います

でも、次々にたくさんの患者さんを診なければならない病院では、患者さんの人生を「時間」に注意を払う余裕はありません。

効率よくやるために、病気だけをいわば「マイナスの部品」として見がちなんですね。

「時間を入れる」と考えることで、医療にも新しい視点が生まれますね。


中村▼

その通りですね。

あなたの場合、人間そのものから始まってそう考えるようになったでしょう。

私は逆にDNAから始めて人間のほうへ向かって考えていこうとしたのです。

部分だけを見るのではなく、まず生きもの全体を見て、それがどう生きているかをよく見てそこから学ぼうという気持ちが大事です。

ゲノムには歴史とお互いの歴史とお互いの関係が入っているので、そこから考えれば、DNA研究という科学の力を生かしながらも生きものを知ることができると思ったの。


”DNA”はDeoxyribonucleic acid(デオキシリボ核酸)


の略称であるからモノの名前、


”ゲノム”は遺伝子(gene)と染色体(chromosome)を


合わせた言葉らしいが、自分が思う相違点って


ゲノムには実体がないということではなかろうか、


なんて生意気に思ったり。


「時間を入れる」というのはなんとなくしか


自分は分からない。


”時間”って”変化”のことだと思うのだけど


当然、”経過”というか、


”今”と”現在”と”過去”があるのは


わかるのだけれど。


そもそもが違うのだろうか。


というか”時間”ってなんだろうか。


実はものすごく深い話なのではないだろうか。


また新たなテーマにぶつかり


しかしそういうのも実はすでに


自分の中にあるものだったり


でもそれを掘り下げ微細に分解していくと


疑問の細胞まで辿り着くといった


これこそまさに自己疑問のゲノムなのでは


なかろうかと、むりくり繋げてみたが


浅学非才ゆえお里が知れてしまい、


空腹と睡魔にはやはり勝てないな、と


責任転嫁してしまう


朝5時起床での平日仕事終わりからの


投稿でございました。


 


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