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中村桂子先生の書から”進化論”を読む [’23年以前の”新旧の価値観”]


生命誌とは何か (講談社学術文庫)

生命誌とは何か (講談社学術文庫)

  • 作者: 中村 桂子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: 文庫


46億年の地球の誕生からの歴史を


フローチャートとして図でご説明されているのが


ものすごく面白い。


テキストだけ抜き出してもあまり伝わらないけれど


思わずメモしてしまいました。


生きものの歴史

生命誌を中心に宇宙から地球、生命、人間に至る流れ。

この中に描かれたさまざまな現象は、この歴史の中で重要なできごとである。


ガスが凝縮してできた雲

冷える地球

水と粘土がかたまる

大気

生物をつくる簡単な分子

自己複製

区画整理

細胞分裂

タンパク質

DNA

発酵

光合成

酸素呼吸

運動

原始的な性

最初の真核細胞

真核細胞の中に単純な細胞が住みこむ

多細胞化

性の改善

中枢神経系

ボディ・プランーー植物

ボディ・プランーー動物

骨格

タネという工夫

協働社会

防水性の卵

温血

飛躍的な発明


さらに興味深い”進化論”をご説明される件でございます。


第4章 ゲノムを単位とする


多様や個への展開


共通性と多様性を結ぶ


から抜粋


生物の本質を知るには共通性と多様性を同時に知りたいのだけれど、その方法がないために長い間、共通性を追う学問が独自の道を歩いてきたと述べました。

しかも20世紀は、ぐんと共通性の方に傾いて、遺伝子がわかればすべてがわかるかのように思われてきたきらいもあります。

ところで、ゲノムを切り口に用いれば、DNAに関するこれまでの知識を100%活用した上で多様性や個性にも迫れるということは両者をつなげる見通しが出てきたということですから、興奮します。

プラトンとアリストテレス以来できなかったことができるようになる。

ちょっと大げさですが、そういっても良いと思います。

では多様性を追ってきた博物学、分類学は今、どのような状態になっているでしょう。


分類学の祖リンネの書いた『自然の体系』(1735年)には900種ほどの生物種があります。

今、私たちが手にする生物分類表には約150万種が取り上げられています。

250年でこれだけの数の新種を発見し、同定したのですから、たいへんな成果です。

しかし、研究者の好みや地域などのせいで、生物種によってはほとんど研究されていないものもあります。


地球上に果たしてどれだけの生物種があるのか。

現代なら博物学はこのような問いを持って当然と思いますが、つい最近までそのような問いはなされなかったというのも生物学の歴史として興味深いことです。


ここで注目すべきは、ニューヨーク自然誌博物館のアーウィンらが、パナマにあるスミソニアン野外研究施設で行った調査です。

熱帯雨林の昆虫はあまり陽のささない地面にはおらず林冠にいるので、アーウィンは19本の樹木を選び三シーズンに渡り下から殺虫剤を吹きつけ、下に敷いたビニールシートに集まってくる昆虫を調べました。

するとなんと、既知のものは4%しかなかったのです。


現在、多様性の研究はとても興味深い展開をしています。

アーウィンの方法は、標本蒐集にはなるけれど、実際に熱帯雨林のなかで生きものがどのように暮らしているのかはわかりません。

生きたままを調べたいのですが、林冠は低いところで40メートル、高いと70メートルもあるのでなかなか到達できません。

けれども近年飛行船を飛ばすなど、さまざまな工夫がなされるようになりました。

その中で、京都大学教授だった故井上民二さんはツリータワーとウォークウェイ(樹登り用の梯子と樹間をつなぐ橋)をみごとに設計し、マレーシア・サラワク州で生きた熱帯雨林、ダイナミックに動いている熱帯雨林を捉えることに成功しました。


ここでは彼らの仕事を詳細に紹介する余裕がないのが残念ですが、さまざまな生きものがお互いに関係し合いながら生きている姿に関してみごとな成果を上げました。


それについては、井上民二著『生命の宝庫・熱帯雨林』(NHKライブラリー)を是非読んでいただきたいと思います。

実はこれはこの本と同じようにNHK人間大学のテキストとして書かれたのに、井上さんが事故で亡くなり放送されなかったものです。

とても素晴らしい本です。


進化というとダーウィンの進化論が有名であり、彼の自然選択を進化の要因とする考え方に対して棲み分けなどの要因を出し、新しい進化論とするなどの論争がありますが、今大事なのは、進化という現象に目を向けることです。


ところで、ダーウィンは、変異が起きた場合、それがある環境の中で形態として有利であると、それが集団の中に広まって進化につながるといったわけです(日本語の突然変異という言葉が事情をよく表しています。ある日突然変わった形や色の個体が現れるという気持ちです。しかし今では人為的に変化を起こせます。しかも変異はDNA内ヌクレオチドの変化だということもわかっていますので、もう突然はとって変異でよいでしょう)。

自然選択は、常識に合う見方です。

しかし、変異はDNAに偶然起こるのであって、ほとんどの場合は、よくも悪くもない(中立)か、悪いかです。

たまたま起きた変化が素晴らしい性質を示すなどということは滅多にありません。

悪いものは消えますから、残るものの多くは中立の変異ということになります(中立変異説)。


つまり、DNAの変化、個体が誕生するか否かの選択も含めての個体の変化、集団の変化という三段階の変化があって初めて進化が起きます。


繰り返しになりますが、もう論を立てるのでなく、進化の道筋を追って、共通性を持ちながら多様化してきた生物の姿を追うことのできる面白い時代が来ているのです。


中村先生のダーウィンの解説はわかりやすい。


なんとなくグールドの言説に近いような気がした。


生命誌にたどり着くのもこの書は最適であると


タイトルが表しているので自分が言うのは蛇足そのもの。


それにしても中村先生に限らず、知の巨人たちって


本当に読書が深い。


リンネの書は1735年ですか。日本だと江戸時代で


八代将軍吉宗の頃だよ、ってのは余談でございまして


江戸時代とか歴史に疎いのに調べてみたので


言いたいだけでした。


それよりも、ここで挙げられた他の書籍も


興味深いなあ、と思わざるを得ないけれども


読みたい書って読めば読むほど


増えてしまうのだよなあと


朝5時起きで仕事した身には睡魔との


格闘でございます。


 


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