橋本治さんの随筆から”軍需産業”を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]
8年前の橋本治さんの随筆が
とても興味深い。
秩序と国家(2015年4月)
から抜粋
「ウクライナ紛争をなんとかしなきゃ」で各国のリーダーが集まった時、ロシアのプーチン大統領は会見で「ソ連崩壊後に西側諸国が作り上げた秩序をなんとかしたい」というようなことを言っていた。
私の記憶が曖昧なせいでなんのことやらよく分からないのかもしれないが、「秩序」という言葉を使ったプーチンが、「ソ連が崩壊した後、ロシアは仲間はずれにされている」と思っていることは確かだ。
ソヴィエト連邦を形成していたロシア以外の国は、ほとんど西側に走ってしまった。
ソ連邦が崩壊し、ロシアの国内がボロボロになって、「進歩派」だけど無能でアル中のエリツィン大統領の片腕となった20世紀末以来、プーチンは世界のリーダーの中で長い間、指導者のポジションにいる。
各国離反の中で「ロシアをなんとかしなくちゃ」と思っているプーチン大統領は「西側的秩序」に行く手を塞がれている、最も孤独なリーダーだろう。
結局のところ「軍事大国」でしかなかったソ連邦中のロシアは無器用で、中国のように「世界の工場」にもなれず、経済発展を武器にしてうまく立ち回ることもできない。
「秩序」という言葉は、今の時代のキーワードでもあるんだろうなと思った。
でも「秩序」という言葉は、簡単に侵略のための用語にもなるものだ。
日本だって昔、「東亜の新秩序建設」と言って、アジアの侵略を進めたし。
「秩序」が「守れ」という意味と「攻めろ」という意味の両方の顔を持つのは、なにを基準にして「秩序」が求められるかということがあるからだ。
既に出来上がっている「全体」の中で「自分の取り分」を得るのは「秩序を守る」で、「自分」を中心にして「自分の取り分」を取って行くのが、「新しい秩序を作る」だ。
時代は今、いろんなところで「新しい秩序を作るんだ!」という方向に動いているらしい。
中国の海洋進出とか、ウクライナ紛争とか、「イスラム国」とか。
「規制の打破!」っていうのも、「新秩序の建設」ですね。
20世紀を通して、革命というものがあまりいい結果をもたらさないものだということははっきりしてしまった。
重要なことは、悪い支配者を倒すことではなく、悪い支配者を反省させることで、
「あなたが反省しなければ、あなたのいる世界が滅びる」ということを理解させることだが、そんなことはもちろん難しい。
子供の理屈のようなものだけれど、「子供の理屈」の正しさを考えるべき時なのかもしれない。
上には引きませんでしたが、
”「物事を解決させるために戦車を出動させる」
というのが過去のものになってしまい”とされて
ロシアはニッチもサッチも行かなくなったことを
指摘されているが、それは8年前は誰しもが
そう思っていたので問題とは思えない。
問題と思ったのは、戦争・軍需という産業を
この時代に世界に確認させてしまったことで
さらに怖いのは軍需産業に関わっていないはずが
結果的に加担していた、なんてことが誰にも
あり得るのではなかろうかと訝しく思う次第。
ついでに言うならば「秩序」の在り方も。
昨日のニュース、北朝鮮とロシアの会談を見て
この随筆に出会い、ふと考えてしまう嵐の夜の
関東地方からでした。