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2冊の椎名誠さん本から”新橋”を想う [’23年以前の”新旧の価値観”]

自分は若い頃デザインスクールに通っており


本の装丁をデザイン制作するという課題があった。


今もそれは自分のリアル本棚に残っていて


その本のカバーの内側に収まっている。


あれからなんと35年経過かよ。


その時はその後、新橋の会社に10年以上


勤めることになろうとは夢にも思ってませんでしたよ。



新橋烏森口青春篇 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

新橋烏森口青春篇 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: クリーク・アンド・リバー社
  • 発売日: 2014/05/29
  • メディア: Kindle版

電子書籍版あとがき


から抜粋


男ばかり30人ほどのタバコ臭い会社で、社員もみんなどこかひとくせもふたくせもあるような、あるいは無意味にいじけてひといじけたふたいじけのような人もいて、それらの人々との触れ合いもおもしろかった。

いちばん多いのが文学青年くずれで、その次が学生運動くずれ(主に60年代安保)、さらにバクチで借金を背負った賭博師くずれ、同棲している女にかなり面倒を見てもらっている女たらし崩れ、毎日酒がないと生きていけないという酒乱くずれなど、「くずれ系」が多く人間だけみていても刺激的だった。


スプートニクが打ち上げられたとき、人工衛星はどうして落ちないで地球を回るのだろうか、と言う話が出て、それがいつの間にかほとんどの社員が参加する大議論大会になったこともある。

仕事中の話だから、なんともおおらかというか、バカ的というかむしろ魅力的というか、ぼくが14年もその会社に勤めることができたバックボーンはそんなところにあったような気がする。


2012年に『風景は記憶の順にできていく』という集英社新書のためにこのなかのなつかしのエリアを再訪したが、予想したとおりぼくが入社した頃からくらべると風景が激変していた。

けれど、新橋駅から会社までの道筋の左右は現代風になった居酒屋をはじめとしたサラリーマン誘惑装置とでもいうような、遊興娯楽の店がびっしりならんでいて、”中身”は三十数年の年月をへてもあまり変わっていないようだった。



風景は記憶の順にできていく (集英社新書)

風景は記憶の順にできていく (集英社新書)

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/07/17
  • メディア: 新書

新橋・銀座


かわらない、風もときおり吹いて


屋上のテント


から抜粋


新橋から銀座に越した会社は銀座の本通りに面していたから、立地的には大したものだったがビルは古かった。

社員も30人になっており、ぼくはその頃新雑誌『ストアーズレポート』の創刊を企画してそれが成功し、取締役編集長になっていた。

27歳の頃である。

社名も「ストアーズ社」と変わっていた。


今思うとわが人生のなかでその頃が一番真剣に働いていたように思う。

仕事が楽しくてしかたがなかったのだ。


通勤時間が惜しかったので、ぼくは屋上にある塔屋の上にテントを張ってそこで寝泊まりしている時期があった。

家から一合炊きの釜を持ってきてラジウスでご飯を炊いて自炊した。

塔屋の上である。

思えばめちゃくちゃなことをしていたが、仕事熱心、ということでもあったのだ。


その頃のことを後に『屋上の黄色いテント』という小説に書いたらフランス語訳され、フランスの女性がそのストーリーにぴったりのイラスト物語のようなものを沢山書いてくれたので、他の短編とくっつけてそれは同じタイトルの単行本になった。


昔勤めていた会社のあるビルは、今は「銀座リヨンビル」というのになっていた。

表の装飾は美しいが建て替えていないとすれば中はだいたい予想できる。


そのリヨンビルの通りを挟んで最近ぼくがよく行くようになった新しいビアレストラン「ローマイヤ」があるので、そこに行ってドイツビールを飲んだ。

むかしは銀座には個性的なビアレストランがいっぱいあったのだけれど、いまはみんななくなってしまった。

それが寂しい。


あまり飲酒できない体質の自分は


本能的なのか新橋の居酒屋が目に入ることは


残念ながら、ほとんどなかった。


後年少し飲めるようになっても


地元に帰ってきてから飲んだりしてた。


昔から飲んで電車に乗ることが嫌いだったので


そういう意味での”新橋”には共鳴できないけれど


仕事という面でのシンパシーは椎名さんには


ずっと感じてた。


サラリーマン時代、ランチに出た先で、


椎名さんのサインが飾ってあるのを発見して、


のけぞったりしてた。


改めて椎名さんの社会人遍歴を見ると


モーレツ社員だったこの時期があり


それで生活が安定されご結婚もされたようで


それ以前は、破天荒そのものの


その日暮らしをされていて


自分のそれも、破天荒からモーレツ社員って


ところが少し似ている。(才能が、じゃないですからね)


しかし、よくモーレツ社員にチェンジできたよなあ、


とも我が身に照らしても思うのだけど


仕事が面白い時期でもあり若かったということなのかと。


今は良い意味で覚めてしまったのか、


時代が変わったのか、池田先生や養老先生の


本の読みすぎかもしれない。


一番の要因は歳をとったということなのだろうな。


方丈記」の鴨長明の心境に近いような。


(才能が、じゃないからね)


それにしても『新橋烏森口青春篇 電子書籍版』を


夜勤中に購入してチラ読みすることになるとは


思わなんだなあ、と夜勤明け、目がしょぼついて


老眼鏡を新しくせんと考えているところです。


 


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