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マット・リドレー氏の書からポジな進化に共感す [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

 



進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来 (早川書房)

進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来 (早川書房)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: Kindle版


長谷川眞理子先生が推薦されていたので


読んでみた。


エピローグ から抜粋


20世紀の物語には、語り方がふた通りある。

一連の戦争や革命、危機、伝染病、財政破綻について述べることもできる。

あるいは、地球上のほぼすべての人の生活の質が、ゆっくり、しかし確実に向上した事実を示すこともできる。

所得は増え、病気は打ち負かされ、寄生虫は一掃され、欠乏はなくなり、平和の接続時間はしだいに長くなり、寿命は延び、テクノロジーは進歩した。

私は後者の物語でまる一冊書き上げ、そうするのがなぜ独創的で意外に思えるのか、首を傾げた。

世界がかつてないほど、はるかに、はるかに良い場所になったことは、どこから見ても歴然としていた。


それにもかかわらず、新聞を読むと、私たちはこれまで災難から災難へとよろめき進んできて、避けようもないさらなる災難に満ちた未来に直面しているかのように思えてくる。

学校の歴史のカリキュラムを眺めると、過去の災難、そして未来の危機ばかりではないか。

楽観と悲観がこのように奇妙なかたちで背中合わせになっている状況に、私はどうしても納得がいかなかった。

悪いニュースを果てしなく提供する世界で、人々の暮らしは良くなる一方なのだ。


今ではそれがよく理解できた気がする。

そして、その理解を深めるのが、本書の目的の一部だった。


私の説明を、この上なく大胆で意外な形にまとめるとこうなる。

悪いニュースは、歴史に押し付けられた、人為的で、トップダウンで、意図的な物事にまつわるものだ。

良いニュースは、偶発的で、計画されておらず、創発的で、徐々に進化する物事にまつわるものだ。


うまくいかないのはたいてい、意図されたことだ。


訳者あとがき


2016年8月訳者を代表して


柴田裕之


から抜粋


本書『進化は万能である』は、『赤の女王』『ゲノムが語る23の物語』『徳の起源』『やわらかな遺伝子』といった、進化や遺伝、社会についての作品を手掛けてきたイギリスのベストセラー作家マット・リドレーが、前作『繁栄』に続いて昨年発表したThe Evolution of Everything: How New Ideas Energeの全訳だ。


『繁栄』では、「昔はよかった」というノスタルジーや、「それに引き換え今は」という嘆き、「先が思いやられる」という不安がじつは事実無根であるとし、その主張を裏付けるデータをたっぷり紹介し、「今は昔に比べて、けっして悪くはない。いや、これほど良い時代はかつてなかった」という結論を導いた。

合わせて、現在の繁栄に至るまで人類の進歩を促した要因として、交換(交易)と分業(専門化)を挙げた。

そして厭世(えんせい)論や悲観論に毒されがちな私たちに、共有や協力、信頼、自由、秩序が普遍化したボトムアップの民主的な世界という未来像を提示して、元気づけてくれた。


本書でも、そのボトムアップという概念と歴史的方向性に着目し、今度は進化という切り口から物事を眺め、今後も進歩が続くという明るい展望を与えてくれる。


ただし、「進化」といっても、自然淘汰による生物学的進化にとどまらない。

進化は私たちの周りのいたるところで起こっている、というのが著者の主張だ。


前作の核心である交換と分業による人類の進歩と繁栄もこの「進化」に含まれる。


この見方を取れば、ダーウィン説は「特殊進化理論」にすぎず、「一般進化理論」も存在することになる(ちなみに著者も認めているように、「特殊進化理論」という用語は著者独自のものではなく、イノベーション理論家のリチャード・ウェブの言葉だ)。


前作『繁栄』も生物学や進化、歴史、社会、経済など実にさまざまな観点に立っていたが、今回は原書のタイトルで、「The Evolution of Everything(万物の進化)」と謳うだけあって、取り上げる分野は宇宙、道徳、生物、遺伝子、文化、経済、テクノロジー、心、人格、教育、人口、リーダーシップ、政府、宗教、通貨、インターネットと、ますます多様になった。


なにしろ、著者に言わせれば「人間の文化に見られる事実上すべてのものの変化の仕方を、進化によって説明できる」からだ。

そして前作同様、当を得た事例を多数挙げて説得力ある主張を展開する。


著者の言葉を挑発的、過激と感じ、そこまで、ムキにならなくても、と思う方もいらっしゃるだろうし、全てに進化の観点を当てはめることには多少無理を見て取る方もいらっしゃるかもしれない。


それでも本書を著(あらわ)したのは、 「ニセ科学」が横行し、それに迎合する人々がいる現状への憤懣(ふんまん)に加えて、根拠のない思い込みを抱いたり、事実に反する主張を鵜呑みにしたりしがちな私たちの目を、事実に対して開きたいという強い願いがあればこそだろう。


それゆえ著者はいうのだ。

「みなさんがデザインという幻想を見透かして、その向こうにある創発的で、企画立案とは無縁で、否応もなく、美しい変化の過程を目にできるようになってもらいたいと願っている」と。


訳者の方が言うほど過激な感じは受けなかった。


ただ取り上げる事象などが、斬新な切り口というか


ジャンル分けというかで、それがしかも


じつは前から自分も思っていたんだよ、みたいな


質の高い着眼点というか、論考というか


寄り添い型の言説を展開されるのは


一言で言えば、文才の力のなせる技なのだろうか。


話替わって、この書のタイトルはちと疑問で


訳者さんのあとがきにある「万物の進化」では


いけなかったのだろうか?


この書にこのタイトルはなんかそぐわないような気も


するのだけど。


余談だけどリドレーさんの学説には


爽快であると同時にポジティブなのが


特徴なのですな。


コロナ・戦争を経ての新しい論文が


期待されてしまうのは


なかなか辛い仕事のようにも思えるのだけど


こちらも洗濯物が溜まって今洗濯機を回しており


明日朝早いので早く食事して仕事に備えようと


思っているところでございます。


 


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