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夫婦で行く意外とおいしいイギリス:清水義範著(2016年) [’23年以前の”新旧の価値観”]


第12章 ロンドン から抜粋

林望の『イギリスはおいしい』という名著によれば、

フィッシュ&チップスは原則として立ち食いなのだそうだ。

わら半紙二、三枚をメガホンのような形に巻き付け、

そこに揚げた魚を放り込み。シャベルのような道具で

あきれるほどたくさんのチップスをすくって入れる。

メガホンが壊れぬように下の方を握って持って、

店に備え付けてあるビネガーをじゃぶじゃぶとかけ、

塩を振りかけ、歩きながら食べるのが正式なのだそうだ。

当然ながら手も口の周りも油でべたべたになる。

食べ終わったら紙の上の油に濡れていないところで指と

口の周りを拭いて紙を丸めて捨てる、

というのが正調の食べ方なのだ。

だが上品なご婦人などはその食べ方が似合わないので、

まれに、ちゃんと店内で、皿に盛った洗練された

フィッシュ&チップスを出すところがあるのだそうで、

私たちが食べたのはそっちだったのだ。

しかし、それはとてもおいしかった。

イギリスで食べたもののうちで一番

おいしかったというほどだ。

イギリスの料理はまずい、とよく言われる。

あれはどうも、イギリス人は料理に

あれこれこだわるなんて、上品なことではない

と思っている感じで、そこがいい加減なので味が

不揃いになるのだと思う。料理なんかに

かまけれられるか。という精神があるのだろう。

歴史的な調査・研究からイギリスを

紐解いてらして感服いたしました。

ロンドンについて、イギリスについて、重厚かつ

洗練されていてご夫婦ともに満足されたという。

余談だけど、我々夫婦は、ちょっと違ってて、

もう20年も前になるけど、もしかしたら

自分だけかもしれないけど

イギリスといえばビートルズが圧倒的なので、

ロンドンは退屈極まりなかった。ほぼ銀座のようだった。

リバプールの方が圧倒的に楽しかったと記憶している。

フィッシュ&チップスも、おいしいといえば

まあおいしいかったけど。

日本では食べられない味だったけど、それよりも

イギリスを北上してのスコットランド・インバネスで

泊まった「あじさい」というB&Bで

食べたハギスの方がおいしかった。

そこで作ってもらったオニギリ、

早朝に出た電車の中で食べたからか

これがまた最高においしかったっていう

料理という側面だけ見たら、お前らイギリス行くなよ

と言われても仕方のないような旅だったかもしれない。

けれど、解説の井形さんの文章を読むと、

イギリスの料理について膝を打ち、

もしも機会があれば正味したいとつくづく感じた。

解説 

イギリスの「おいしさに魅せられて」井形慶子 から抜粋

イギリスの話をすると、二人に一人が

「でも、料理がまずいんでしょう」と

思いっきり確信的に聞いてくる。

「いえ、いつもロンドン行きの飛行機で、

今回は何を食べようかと迷うほどおいしいですよ」

(略)

イギリスの料理をまずいと感じるのは、

材料を加熱しただけの淡白な素材料理と、

これでもかというほどの油ギトギト、

カロリーオーバーのフライドエッグなどの二種類が、

交互に出てくるからだ。

加えて、デザートは砂糖やバターやミルクを混ぜ込んだもので、

「甘すぎなくておいしい」とされる日本のスウィーツとは

全く違う。イギリスはまずいという通説は

このいずれかを食された方によって広まっているように思う。

 

確かに、いくら塩を振りかけても

「さしすせそ」調味料のハーモニーに馴染んだ

私達にとって「まずい」と感じるにはいたしかたない。

ところが、「油ぎって」「薄味」「濃厚な甘さ」の

イギリス料理は、食べ続けると不思議な作用を引き起こす。

私ごとで恐縮だが、旅半ばで禁断症状が湧き起こり、

早く和食を食べたい!もう中華でもいい!などと、

ジタバタしていたのは三十代までだった。

(略)

ところが四十代になって突然味覚が変わった。

というか、毎食何を食べてもおいしくて、帰路、

空港のレストランでもフィッシュ&チップスを

むさぼるありさま。身体のメカニズムが

どうなったかわからないが、

私とイギリス料理との蜜月がスタートしたのだ。

(略)

なぜか。分析してゆくと、二つの理由に行きついた。

 

一つはイギリスでローカルプロデュースと

呼ばれる地産地消の食材のおいしさを知ったこと。

レストランを探す時、「Use local produce」、

家族経営「family run」という二つのポイントを

クリアしていればおいしい店に当たる確率は高い。

どちらかといえばあまり肉好きではない私は、

ハム、ソーセージなどの加工品、そして肉が

ぎっしり詰まったパイも苦手だった。

ところが、コッツウォルズのとあるローカルパブで

食べたシャムロックというパイ。

時間がなくて、ハフハフと急いで食べたが、

きつね色のパイ生地と、まろやかな肉汁に包まれた、

とろけるビーフ&周りに盛られたマッシュポテトが絶妙だった。

以来、ところかまわずパブに入るとパイ料理を注文して、

やっとエジンバラで、かなり近いものに出会えた。

地元産の食材を使って作られたものらしい。

旅行会社が現地代理店を通して手配する団体旅行用の

食事は、客さばき優先となるから、

なかなかこのような店に行きつかないのは残念だ。

イギリス料理にはまった二つ目の理由は家庭料理との

出会いだ。

あちこちの家庭の食事に招かれたが、どれも驚嘆すべき

料理だと打ちのめされた。

こんな経験から、イギリスはおいしいと確信したのだ。

この国では代々家族に伝わるレシピは珍重丁重に扱われる、

ある家など、おばあちゃんのレシピノートを

金庫に保管して知的資産だと自慢したほど。

地元の素材にこだわり、代々伝わったレシピで料理する。

このおいしさはかなりレベルが高い。


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