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死後の世界:立花隆(「文藝春秋」2014年10月号) [’23年以前の”新旧の価値観”]

「知的ヒントの見つけ方(2018年)」から記事の抜粋

昨年暮れから制作にかかっていた

NHKスペシャルの「臨死体験 死ぬとき心はどうなるのか」が完成に近づき、私自身のナレーション入れが先日行われた。

一行一行内容を再検討しながら午後1時から八時間以上かかり、終わったときはクタクタだった。

これは1991年にやはりNスペで作った「臨死体験」の続編のような作品である。

あの「臨死体験」では、作ったあとに内容的にかなり不満を残したので、その不満を補うべく、「文藝春秋」で長い長い連載(「臨死体験」)を行った。

それを書くことで私はある程度満足したが、十分満足したかと問われれば、そうでもない。

臨死体験とはそもそも何なのか

というかんじんのところに明確な答えを出すことができなかったからだ。

臨死体験とはそもそも何なのかという問いに対しては、大きく分けて、二つの根本的に異なる立場がある。

一つは体験者が自分自身の確かな体験として語るすべての特異にして異常な体験(たとえば体外離脱)は、体験者が死に瀕する状況の中で活動不全に陥った脳が見た一種の幻覚であって、リアルな体験ではまったくない

とする立場である。

それに対して、もう一つの立場は、それは幻覚ではなく、ある意味でリアルに起きた事象そのものであって、そのような事象が起きたということは、死後の世界が存在する証拠と考える立場。

あるいはこの世の実体が完全物理世界ではなく、半スピリチュアルな(霊的な)世界であることの証明

と考える立場だ。

この世界は、全てが即物的な物理現象として存在するのではなく、半分以上が、物理世界を離れたスピリチュアルな現象世界として存在すると考えるのだ。

人間はその両方の世界を往復し認識できる能力を持っているという立場に立つと、それなりにこの説も合理化できる。

世界の構造とその認識に関して世の常識とはちょっとズレた世界認識、人間認識の世界に入り込んでしまうわけだが、アメリカの場合は、この認識がキリスト教信仰と重なりあい、スピリチュアルな存在との出会いが、神ないし、イエス・キリストとの出会いに翻訳されるので一般理解となる。


91年Nスペでは、


「臨死体験者の生まれ育った文化圏におけるスピリチュアル世界の要素を取り入れると、基本的に似たような認識が成立していることが示せた。」とはいうものの


「もう1段階科学的説明を深めることができず、最後まであいまいさを残して終わった。」


というのは悔いの残る仕事だったようだ。


しかし間も無く放送される今回の番組では、そこのところを徹底追求した。

この番組では、一部の人間の間で臨死体験の代名詞の如く使われている「幽体離脱」なる言葉は一切使わなかった。

なぜならこの言葉はあまりにも特殊な日本的オカルトスピリチュアルにまみれている言葉と判断したからだ。

どういうことかというと、この言葉はその前提として、そもそも人間とは肉体と幽体が結びついた存在であって、幽体はしばしば肉体から遊離して単独の霊的存在となるという考えの上に立っている。

これは江戸時代の神道思想に発し、その後丹波哲郎などが「大霊界」などで大衆に広めた理論だが、語感がもっともらしいだけで、そのようなものが存在するという根拠は何もない

そのような根本怪しげな理論は排除したのだ。


臨死体験と呼ばれる一連の不思議な現象は確かにある

それを真剣に科学的に研究している一連の学者が世界中にいる。

しかし、それはいかなる意味でも死後の世界と結びつくものではないし、怪しげなオカルト理論と結びつくものでもなかった。

しかしオカルトなしの臨死体験論は人間の脳と意識の深層世界に深く入りこむことでオカルト以上の面白世界に入っていった。


番組もNHK オンデマンドで先ほど拝見。見応えあった。


最後にがんに侵されている立花さん


「わからないから、知ろうとする、だから生きることは面白い」


と締めくくる。


脳科学研究が20年前より進んでいるとはいえ、解明まではいかなかったけれど。


 


でも、余談だけど、それでいいんじゃなですかね。解明されても何か得るものあるのかな。


解明されて何か良い方向にいくなら良いし、病気とかは治せるといいと思いますけど。


わからない領域があるからこそ人間世界なのかも。


生命科学者の柳澤桂子さん曰く、踏み込んではならない領域の一つなのかも。


 


さらに戻って、余談だけど、番組を見てていて気になった点、


ノーベル賞ホルダーの利根川博士を訪ねている。いわく


「脳が作りだす記憶からくるイマジネーションの部分が多くあり、リアルを阻害(幻覚)していると思われる。でも人間と動物の違いは、人間というのは


「アート」やるでしょ、


「サイエンス」やるでしょ、


「ミュージック」やるでしょ


それが人間を人間たらしめているわけで・・・」


みたいな部分。ちょっと言葉尻違うかもしれないけど。


この3点、思いつくままに言ったのかもしれないけど理屈ではできないものの内容を言っている気がした。


詳細が重要そうだったら補記しよう。眠れない夜にて。


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