SSブログ

中村桂子先生の10年前の本から”日常”を思う [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

ゲノムに書いてないこと


ゲノムに書いてないこと

  • 作者: 中村桂子
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2014/01/31
  • メディア: ムック

はしがき から抜粋

「生命誌」という新しい知を「研究館」という新しい場で創っていこうと考え、それを具体化してから20年が経ちました。

そこでは、多様な生きものたちの科学研究を通して、生きていることはどういうことだろうと考え、そこからいのちを大切にする社会をつくるにはどうしたらよいかを探る活動をしてきました。


生命誌研究館の大事な活動の一つであるホームページで月2回(1日と15日)、”ちょっと一言”というコラムを書いています。

特別なことはなくまさにその時の日常を思うままに書いているだけなのですが、今回、それをまとめてみませんかというお誘いを受け、思いきって整理してみました。


すると、研究館の日常には大勢の方が関わってくださっていることが見えてきました。

とくに意識していませんでしたが、これこそこの20年を象徴することだと思いました。


このコラムはただいま現在も継続されていて


頻繁に拝読させていただいております。


Webの方では数年前の昔のコラムは


削除されてる為、過去記事を読んでみたいなと


思っている矢先でございました。


3 仕分け人という思いもよらないものになって


そろそろこの辺りで から抜粋


JR西日本の福知山線が再開しました。

この事故は、たくさんの方が亡くなり、とくに若い方が多かったこともあって、思い出すだけで胸が痛みます。

そして、何か心の中にもやもやしたものが生まれてきます。

事故そのものの原因の究明と対応は重要ですが、それだけではすまないものを抱えているような気がしてならないからです。

正確さ、迅速さで世界に冠たる日本の鉄道。

誰もがそう思ってきました。

原則としてはそうだと思います。でも…。


どこの会社がダメとか、誰が悪いとかいう話ではなさそうです。

「社会が急ぎすぎている」。


ゴールがはっきりしている競争なら、一刻も早くとなりますが、多くの人が今の社会は先行き不透明だというのです。

どこへ向かうかもわからず、急いでどうなるのでしょう。

競争のための競争、内容が見えない改革というかけ声。


研究現場でも、若者たちがとても焦っています。

そこで「スロー」というかけ声をかける人が出てきましたが、スローならよいというものではありません。

どんな社会にするのかを考えることが必要です。


社会全体の速度を落とさない限り、事故は起こるのではないでしょうか。

皆が、自分の生きものとしての物指しを活用して、社会の活動の速度を落とす方向へ持っていかないと、生きものである人間は悲鳴を上げることになるでしょう。

もうかなり悲鳴が聞こえています。

子どもたちからも。

皆でただ忙しく過ごし、失敗した人を非難していてもよい社会にはならないと思うのです。

(2005.07.01)


右肩上がりで成長するんじゃー!と


言わされていたモーレツサラリーマンだった


暗い時代に読んでおきたかったと


一瞬思うも、もし読んだとしても


どうにもできずジレンマに陥ったかもしれない。


この文章は中村先生にまったくの同意を


示さざるを得ないただいま現在なのですが


もう会社員ではないので社会参画者として


一翼を担っていきたいと肝に銘ずる次第です。


福知山線の事故は当時のモーレツな同僚たちと


ランチ中だったことを思い出した。


担保は人間の信頼 から抜粋


すばらしい!!

今年のノーベル平和賞をグラミン銀行(グラミンは村の意味とのこと)とその設立者ムハマド・ユヌス総裁が受賞。

竹細工の製作と販売で生計を立てている女性が、一日二セントしか利益がない理由は材料費を高利で借りているからだと知ったところから始まるこの事業には「物語」があります。

必要なお金六ドルを無担保で貸したところ、利益は1日二ドル二十五セントになり、貸したお金はきちんと返却されました。

担保がないために、高利に苦しみ貧困から抜けられないだけで、意欲も能力もある人が大勢いることを知って創設したグラミン銀行。

借り手の90%は女性であり、98%の返却率とのことです。

お金ってこういう風に使われるものですよねと嬉しくなります。


女性は家に縛られていて動けないから、女性に貸せばとりはぐれがないのだという意見も眼にしました。

いろいろ論評はできるでしょう。

でも、この活動の底には、人間への信頼があります。


昨日も文科省から研究費の使用に関して、性悪説で対応しようと読み取れる書類が回ってきました。


こういうことって悪い方へまわり始めるとどんどんそちらへ進み、それを防ぐために、またお金と時間を使うことになるのです。


研究も「物語」が必要だというのが生命誌を始めた一つの理由ですが、物語には、全体を見る眼と人間を見つめる眼が必要です。


もちろん人間よいところばかりではありませんが、ダメも含めて信頼したいと思います。

(2006.11.01)


余談だけど”物語”って少し前に流行った


”ストーリー”ってのが巷に流布していたので


ございますがそれのことを予見していると思い


さすがに感性が優れていると感じた。


これまた自分はモーレツだった頃の話で。


水を差すようで残念だけど


グラミン銀行はつい最近、おかしな方向に


いっているとニュースが。


日本列島の豊かさを生かした暮らしーーなぜ一極集中なのでしょう から抜粋


原子力発電所を稼働するか止めるかと言う議論は、安全性への危惧とエネルギー供給との間の綱引きになっています。

共に大事なことなのですが、電力不足により生活の質が落ちるという脅しと身の回りの放射能はゼロであれという要求のぶつかり合いでは本質は見えません。

今の私たちの暮らし方が賢い選択なのだろうかと考える必要があります。

答えは人それぞれでしょうが、そん議論から何かが見えてくるはずです。

私は、東京一極集中と金融経済がどうも肌に合いません。

一極集中はそもそも先進国らしくありません。

北海道から沖縄までそれぞれの自然を生かした豊かな生活ができるのに、それを生かした国づくりをしなければもったいないと思うのです。


リニアモーターカーを日本で走らせるのがよいかどうかは別としても、東京ー大阪間につくることがあたりまえとされているのはなぜでしょう。

過密なところに暮らす人たちを更に忙しくし、より多くの人をそこに集めるのが望ましい未来の姿なのでしょうか。


これは極端な例ですが、身近に違うなと思うことがたくさんあります。

エネルギーにしても、自然再生エネルギーを活用しようとしたら分散型になりますし、生きものとしての暮らしやすさを考えたら答えは一極集中じゃないですよね。

(2012.07.01)


このほか、会った人や読んだ本のことなど


書かれていて興味深く、時にはシリアスに


また楽しく拝読。


岡本太郎記念館で講演会を敏子さんからの


オファーでうけ、講演直前に敏子さんが


亡くなってしまわれたというのは知らなかった。


更に意外だったのは、かの”吉本隆明”先生


にも触れていて積極的には読まなかったものの


”宮沢賢治”を通して氏のその関連書を読まれた


書評のようなものが印象的。


引用の仕方も自分の中に溶かし込まれた


紹介の仕方がかなりユニークだと感じた。


確かに吉本先生との相性はあまりよろしくない


ような”対幻想”とか”国家”とか”絶対性”とかって


中村先生を構成される要素にはなさそう


と思いつつも通底するところもあり


”言葉”とか”詩”とか”市井の生活”とか。


久々の早朝読書で休日でありつつも子供が風邪で


ダウンのため妻と交代で家のことをする


モーレツに寒い日曜の朝なのでした。


先週トイレ掃除サボったから今日はやらないと。


 


nice!(13) 
共通テーマ:

nice! 13