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偉人達の3冊から”眼の進化”を考察 [’23年以前の”新旧の価値観”]


脳の見方 (ちくま文庫)

脳の見方 (ちくま文庫)

  • 作者: 養老孟司
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: Kindle版


 


II 解剖


眼を創る から抜粋


眼がどのようにして成立したかは、面倒な問題である。

『種の起源』の中の「自説の難点」という章で、ダーウィンは言う。

「さまざまな距離に焦点をあわせ、種々の量の光をはいるようにさせ、球面収差や色収差を補正する、あらゆる種類の無類の仕かけをもつ目が自然選択によってつくられたであろうと想像するのは、このうえなく不条理のことに思われる、ということを、私は素直に告白する」(八杉龍一訳、岩波文庫)


眼のように「極度に完成化し複雑化した器官」が「自然選択」によって、どのようにして完成するかを、ダーウィンは考えあぐねたらしい。

ダーウィンの考えは、微細な変異が長い間に選択されて、大きな変化を結果として生じるという、いわゆる漸進(ぜんしん)説である。

漸進説では、途中のいちいちの微細段階が、それぞれ有利でなくてはならない。


この説は、眼のような場合に、困ることが多い。

中途はんぱな完成度を示す眼が、進化の過程でなぜ有利だったか。

歪んだレンズが、しだいに完成度を高めて、歪みが減少してくることになるのだが、そもそもレンズの原基(もと)のようなものを、どうやって、ほぼ網膜に像を結ぶような位置に最初に持ってくるのか。

その後は、「自然選択」によって、位置を漸次(ぜんじ)修正すると考えるにしても、である。


三葉虫も立派なレンズを持つが、その中には、レンズの形が、デカルトおよびホイヘンスがそれぞれ設計した、収差なしのレンズと同じ形をしているものを含む。


実際、生物というのは、考えてやっているのか、ダーウィンのいうように、まったく無考えでやっているのか、私は知らないが、このように立派な、考えようによってはおかしなことをするのである。


こういうレンズであれば、次第に収差が無くなるように進化したというのも、考えられぬことではない。

実際に、顕微鏡でもレンズは次第に進化したからである。

しかし、それにしても、動物は、間違ったレンズを、進化の途中でいちいち確かめ、修正したのだろうか。


眼の進化でふつう忘れられているのは、光の役割である。

光が無くては、眼があっても仕方がない。

だから、眼の進化には、光がまず最大の役割を果たしたはずである。


細胞の水準では、光と受容体の関係は、はっきりしている。

同じように、光が無くてはどうしようもないものは、葉緑体である。

これは、ご存知のように、光合成を行う。

植物細胞に住みついているが、たいへん古い昔にはおそらく、独立の原核生物だったのではないか、と想定されている。

このくらいの小さなものであれば、光との直接交渉があり得ること、だれにでも理解できる。


光があることが、細胞の集合体であるとはいえ、眼の進化にも大きな役割を果たしたことは、間違いあるまい。

その意味では、光が眼を創ったのである。


養老先生の言説だと、なぜ眼は進化したかは


ダーウィンの説をとりつつ、


ダーウィン自身がお手上げとのことで


考察するに”光”が重要な役割を


というのは間違いないだろうと。



脳が考える脳―「想像力」のふしぎ

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  • 作者: 柳澤 桂子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/09/27
  • メディア: 新書


第4章ものはなぜ見えるか


第1段階ーー網膜 から抜粋


視覚情報の入り口は、眼球の一番奥にある網膜です。

網膜には、視覚情報の伝達に関与する五種類の細胞があります。

その中で光に感ずる神経細胞は視細胞と呼ばれ、網膜の一番奥に並んでいます。


視細胞には、桿体(かんたい)と錐体(すいたい)と呼ばれる二種類の細胞があり、これらの細胞が並んで視細胞層をつくっています。

桿体と錐体は、特殊な色素を含んでいて、光があたると、この色素の化学構造が変化します。

桿体の含む色素はロドプシンと呼ばれ、特に光に敏感に反応します。

一つの眼には一億個以上の桿体があり、弱い光にも感じるようになっています。

錐体は、光に対する感受性は弱いのですが、色には敏感に反応します。

一つの眼には、600万個くらいの錐体があり、網膜の中心部に集まっています。

網膜の中心には、中心窩と呼ばれるくぼみがあります。

中心窩には約3万個の錐体があって、普通、ものを見るという機能は、ほとんどこの錐体によっておこなわれています。

ですから、私たちは像がこの小さなスポットに結ばれるよう、たえず眼球を動かしているのです。


桿体と錐体の色素が可視光線を吸収すると、その色素の化学構造が変化します。

色素の構造が変化すると、一連の化学反応を通して光のエネルギーが電流に変えられます。

この電流によって、桿体や錐体と網膜内の他の細胞との間のシナプスが活性化されます。


このように生じたインパルス(一個の細胞が出す電気信号)は、網膜の細胞間で相互作用してインパルスのパターンを生じます。

このパターンが網膜のいちばん手前にある神経節細胞に送られ、この細胞から出る視神経を通って脳へと伝えられていきます。


視細胞(桿体や錐体)が強い光を受けてたくさんの光エネルギーを吸収したときには、インパルスの頻度が高くなります。

このインパルスは神経節細胞に伝えられるので、脳は、おのおのの神経節細胞の出すインパルスの頻度の増加あるいは減少という信号を受け取ることになります。


脳までの視覚情報の伝達の様子が


なんとなくわかります。


でもだんだんにむずい領域に入ってきています。


”光”と”色”で部門が異なるってことなんですな。


さらに進化して”奥行き”とか”量”の把握が


できるようになり”知覚”ということなのか。



喰らう読書術 ~一番おもしろい本の読み方~ (ワニブックスPLUS新書)

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  • 作者: 荒俣 宏
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第3章 世界と人生を解読する「読む考古学」のすすめ

地質学で地球の時間を体験する から抜粋


まずはじめに、私たちの眠った頭をどやしつけたショッキングな本、スティーヴン・ジェイ・グールドという進化論学者が書いた『ワンダフル・ライフーーバージェス頁岩(けつがん)と生物進化の物語』です。

グールドという人は、学者にしておくのがもったいないほど博学で、文章もうまい「作家」でした。

彼の著作はシロウトが読んでも、おもしろさのあまり、ウーンと唸ってしまいます。

現代人必読の本ではないでしょうか。


なかでも話題を呼んだのが、1983年に出版されたこの一冊でした。

進化論的に見る生命の歴史は、大きな節目になったのが、いまから5億4200万年ほど前の古生代カンブリア紀だったといわれます。

このときに三葉虫など多様な動物が爆発的に生まれて、地球が動物だらけになったわけです。

ここが時代の境目であり、その大爆発以前を「先カンブリア時代」と呼びます。

動物がほとんどいないように見えた時代ですね。


ならば先カンブリア期は何年つづいたかと申しますと、よくわかりません。


地球上で一番古い岩石は、ウラニウム同位元素がゆっくり放射性崩壊して鉛の同位元素になる現象を使って測定すると、45億年前後だそうです。

しかしアポロ11号が持ち帰った月の石にはそれよりも古いのがあったので、月が地球から分かれたとすると、誤差の最大値をとって46億年前くらいにはなるでしょう。


こうなりますと、先カンブリア時代は最長40億年つづいた計算になります!

なんと、生き物なんか何もいそうにない時代が、生命発展時代の10倍以上になってしまいます。

私たちが古生代だ、中世代だ、などと言っていた生命のいる地質年代は、地球全史から見たらわずか10分の1の歴史に過ぎなかったのです。


それでは、カンブリア紀にいったい何が起こって地球が動物だらけになったのか。

これが探る手がかりになったのが、カナダにあるバージェス頁岩の地層で発見された「奇妙奇天烈」な化石動物群でした。

とにかく現代の目からは考えられないような奇妙な動物だらけでした。


この発見により、古代になるほど生物が単純で多様性も低いとされた常識がひっくり返りました。

絶滅している動物も含めると、5億年以上前のほうが生物多様性が大きかったといえるのです。

しかも化石を調べると、現在いる全動物門がすでにカンブリア紀に出そろっているので、絶滅という事件も偶然によるものだった可能性が強まりました。


つまりグールドの本は、動物をメインに置いた生命史の眺めを一気に変更したのです。

古い生物は単純で下等、しかも種類も少ないというイメージが破られ、現在にもいない動物がうじゃうじゃいた古代、という新イメージに置き換えられたのでした。


ではなぜ、この時代に動物の多様性が大爆発したのでしょうか。

最近のプレートテクトニクス理論によると、カンブリア紀の開始から、3−4億年前に成立したパンゲア大陸にテートス海という割れ目が入って大陸が分断されるまでに、生物の大爆発が起きたといいます。


大陸の変動は大きな出来事ですから、理解しやすいのですが、問題はそれだけではありません。

カンブリア紀の場合でいえば、大陸形成よりも前に、動物に「目」が誕生したことが大爆発の引き金だとする仮説が出ています。


今から5億年ちょっと前に、地球に当たる太陽光線の量や強さが増えたことで、水中がいっせいに晴れ、光線が海に差し込みました。

光線は、これを有効に使用するための感覚器官「目」を急発展させ、目に映じた像をはっきりとした色彩立体として知覚させる画像創出装置「脳」を、動物に与えたというのです。


そういえば、動物が持つ脳と目は、植物にはありません。

藻類に始まった生命史に、目と脳を持つ動物が参入したことで新段階にはいった、ということができるでしょう。


そのような理論を「光スイッチ説」といいますが、その代表が、第1章で「目から鱗」の落ちる本として紹介したアンドリュー・パーカー著『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』でした。


生物の進化に一役買ったと。


突然変異に拍車をかけ劇的な進化、分岐の派生を


促進したというグールド氏を後押しする


「目」の出現と発展。


なかなかに興味深いのだけど、その後


この言説がどうなるのかも興味深い。


余談だけれど、自分は目からの情報に


惑わされないように、電話の時など


集中して端的に正確性を欠かないことを


心がけるために目を瞑るのだけど


それと”眼の進化”とはあまり関係なさそうで


いいたいだけの久々の連休、


自宅の古くなった浄水器の交換技師待ちを


自宅待機で早く古書店巡りという名の


フィールドワークに行きたいと


思っているところでした。


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