ガンディー 獄中からの手紙 (岩波文庫)



  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 2010/07/17

  • メディア: 文庫




無所有 即 清貧(1930年8月26日火曜日朝)から抜粋


無所有は不盗と関連があります。


たとえ、本来は盗んだ物でなくとも、わたしたちが必要でない物を所有しているならそれは盗品とみなされなければなりません。


所有するというのは、将来のために貯えることを意味します。


真理の探求者、すなわち愛の法(のり)の信奉者は、明日に備えて何ひとつ貯えてはなりません


神は明日のために貯えるようなことはしません。


言いかえれば、神はその時どきにどうしても必要な物以外は、けっして創造することはありません。


したがって、もしわたしたちが神の摂理を信じるなら、神は日毎に日常の糧を、ということは、わたしたちが必要とするすべての物を与えてくださることを確信していなければなりません。


古来このような信仰に生きた聖者や信仰者たちは、彼らの経験からつねにこのことが真実(まこと)であることを立証してきました。


日々われらに日常の糧を与え、余分なものはお与えにならないという神の法をわたしたちが無視したり蔑ろにしたりすることが、不平等や、それに伴ういっさいの不幸をひきおこすのです。


富者は、要りもしない余計なものをふんだんに貯め込み、結局はそれらをなおざりにし、浪費します。


いっぽう、幾百万という貧者は、食べ物がなく餓死するのです。


もし各人が必要な物だけを所有するなら、ひとりとして困窮する者はなく、万人が満足に暮らしていけるでしょう。


(以下略)



厳しい…ストイックすぎるのでは…


「必要でない物を所有しているのなら」=「盗品」って公式は。


しかも「貯えてはなりません」って…。


そんなふうに思う感性がある自分は、


コロナで所有欲から目が覚め、本・レコード・CDなど大量に売り


「必要な物を必要な分だけ」をコンセプトにしたサブスクに変えたはずが、


まだ西洋文明の価値観と合理性に掠め取られている精神がある証なのか。


まあ、ここは、難しく考えず、もっと断捨離できるのは確かだし


みんながそう思えば、世界はもっと良くなるのは間違いない。


<解説>ガンディー思想の源流をたずねて 森本達雄 から抜粋



(中略)


イギリス留学中のガンディーは、いじらしいまでの情熱を持って、留学中に母と交わした約束の履行に努めるいっぽう、当時のアジアからの留学生の多くがそうであったように、一時期ではあったが、完全に西洋文明の熱病に罹患してしまう。


その病状たるや重症で、想像するだに吹き出してしまうほどである。


(中略)


ガンディーを読んでいて思うのは、この人の人生の振り子の振幅の大きさである。


あれほど、文明病の熱にうなされていたガンディーが、やがて鏡の前に立って、己の恥ずべき「猿真似」の愚に気づくと、早々に、西洋社会の俗物根性(スノべリー)と訣別する。


文明受容のために故郷の兄からの仕送りを惜しげもなく浪費していたガンディーは、ある日から暮らしをギリギリまで切りつめ、弁護士試験の合格を目ざして涙ぐましい勉学を始めたのである。


お陰でガンディーは、三年たらずで、ロンドンのイナーテンプルの弁護士試験に合格することができた。



イ(ン)ナーテンプルとは、Wikiから引くと


「 (The Honourable Society of the Inner Temple) は、


ロンドン中心部のテンプル地区にある法曹院」


とあり法曹界の中でもエリートみたいなところかと。


それにしてもガンディーって、人間的興味が尽きない。


ひとつ分かったことは、西洋にかぶれて得た知見、


「やってみて分かった」ことがあるんだなと。


余談、全く関係無いけど、思い出した句が


あるのでそちらで締めでございます。


 


 おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな by 松尾芭蕉