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2冊の科(生物)学の書から”生命”を考察 [新旧の価値観(仕事以上の仕事)]

若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし


若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし

  • 作者: 更科 功
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

はじめに から抜粋

ルネッサンス期以降にも、この呼び名に値する人物が何人か現れた。

しかし、ドイツの文豪で科学者のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)あたりを最後に、「万能の天才」と呼ばれる人はいなくなってしまった。


科学の世界に限っても、以前には「万能の天才」的な人がいた。

イギリスのロバート・フック(1635-1703)は、物理学の分野では、ばねの弾性に関するフックの法則を提唱したし、化学の分野でも、気体に関するボイルの法則を作るのに重要な役割を果たしたし、生物学の分野でも、細胞を発見した(実際には植物細胞の中身が抜けた細胞壁を見ていたようだ)し、地学の分野では進化論を唱えていた。

だが、現在の科学はとてつもなく巨大になり、一人の人間がすべての分野に精通することは不可能になってしまった。


しかし、いくら巨大化しても、科学は一つである。

物理学、化学、生物学、地学などと分けることもあるが、それはあくまで便宜的なものだ。

科学自体が、こういう分野に分かれているわけではない。


それは科学の本質とは別の話である。


だから、本当は「万能の天才」のように、科学を広く研究したい。

でも、それは無理なので、たくさんの科学者が協力して、科学を広く研究している。

それは仕方のないことだが、そうすると科学全体を視野に収めることは、なかなか難しくなる。

それでも、少しでも広い視野を持とうとすることは大切だろう。


科学の世界だけに限ったことではない気がする。


昨今の世の中、なんでも細分化されていて


「万能の天才」が生まれにくい空気を感じる。


それは良い事も悪い事もあるのだろうけれど。


この本は「生物学のすすめ」ではない。


この本は、生物学に興味を持ってもらいたくて書いた本である。

タイトルには「若い読者に」と書いたけれど、正確には「自分が若いと思っている読者に」だ。

好奇心さえあれば、100歳超の人にも読んで欲しいと思って、この本を書かせていただいた。


第1章


レオナルド・ダ・ヴィンチの生きている地球


『モナ・リザ』を描いた理由


から抜粋


地球は生物がすんでいる惑星だが、地球そのものは生物ではない。

でも、地球を生物だと考えた人は、昔からたくさんいた。

どうやら地球は、生物に似ているらしい。


レオナルドは、科学者としては運がなかった。

しかし、画家としては、最高の評価を手にいれることになった。

中でも『モナ・リザ』は、西洋絵画の最高傑作とさえいわれている。


この『モナ・リザ』をレオナルドが描いた理由の一つは、地球と人間が似ていることを示すためだった。

『モナ・リザ』には、女性と地球(の一部)が描かれている。

たとえば、女性の曲がりくねった髪の後ろには、曲がりくねった川が描かれている。

わざと両者を対比させて描いたと、レオナルド自身の手稿に書き残している。

人間と地球という二種類の生物を、一枚の絵の中に収めたのだ。


めちゃくちゃ面白い書籍でございます。


系統立てて、現代の身近な例を引かれて


ヤマザキマリ先生や藤子・F先生の


書籍まで引かれての”生物学”講座として


更科先生の進化論を拝読させていただき


読後は満足感に満ち溢れる。


”あとがき”が、これまたすごく


再びヤマザキマリさんネタなのだけど


そこから流れて感動のフィナーレになる辺り


さすがでございますとしか言いようがない。


肝心の生物学について、歴史上の人物から


グールド博士や本庶佑博士、山中伸弥博士まで


興味は尽きませんでした。



WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か

WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2021/03/10
  • メディア: 単行本

ステップ5

情報としての生命


全体として機能するということ


情報は生命の中心にある


から抜粋


はるか昔、子どもだったころ、あの黄色い蝶は「なぜ」我が家の庭に飛んできたのだろう?

空腹だったのか、卵を産む場所を探していたのか、それとも鳥に追われていたのだろうか?

あるいは単に、世界を探検したいという生まれつきの衝動にかられて?


もちろん、私には、あの蝶のふるまいの理由を知るすべはないけれど、はっきり言えることは、あの蝶は周りの世界と相互作用して、行動をとっていたということだ。

そして、そのために、蝶は情報を管理していたはずだ。


情報は、蝶という存在の中心にあるし、あらゆる生命の中心にある。

生体が、組織化された複雑なシステムとして効果的に機能するためには、自分たちが住む外の世界と身体の世界との、両方の状態について、情報を絶えず集めて利用する必要がある。


内側と外側の世界は変化するから、生命体はその変化を検出して反応する方法が必要となる。

そうでなければ、あまり長生きできないだろう。


蝶が集めた情報には、何らかの「意味」があったはずだ。

蝶はそれを利用し、特定の目的を達成するために、次に何をすべきかを決めた。

つまり、蝶は「目的」を持って行動していた。


あらゆる生体は、自らを維持し、組織化し、成長し、そして増殖する。

これらは、生物が自分と子孫を永続させたいという、基本的な目的を達成するために発達させてきた、目的を持った行動なんだ。


DNAの重要な機能


から抜粋


情報処理は、生命のあらゆる側面に浸透している。

情報という名のレンズを通して、複雑な細胞部品と細胞内プロセスを覗いてみよう。


最初の例は、DNAとその分子構造が、遺伝を説明している点だ。

DNAについての決定的な事実は、それぞれの遺伝子が、A、T、G、CというDNAの四文字アルファベットで書かれた、情報の「直線配列」でできていることだ。

直線配列とは、ようするに、「(文字などの)情報を直線的に並べた」という意味に過ぎないが、情報の保存や伝達にとても有効な戦略なんだ。

読者が今読んでいる単語や文章に使われているのも直線配列だし、机の上のコンピューターやポケットの中のスマホのプログラムも直線配列になっている。


こうしたさまざまな情報は「デジタル」になっている

ここでいうデジタルとは、「情報が少数の桁のさまざまな組み合わせで保存されている」という意味だ。


英語は基本的にアルファベットの「26桁」を用いている。

コンピューターやスマホは「1と0」のパターンを使用し、DNAの桁はA、T、G、Cのヌクレオチド塩基四つといった具合だ。

(少数の桁で意味をあらわす)こういった符号化の大きな強みは、一つの方式から別の方式へ容易に「翻訳」できることなんだ。

DNAの符号をRNAへ翻訳し、さらにタンパク質に翻訳するとき、細胞が行っているのはまさにこれだ。


細胞は人間が人工的に作り出したシステムが足元にも及ばないような、スムーズかつ柔軟な方法で、遺伝子情報を物理現象へと翻訳する。

さらに、人間のコンピューターは、情報を保存するために、別の物理的な媒体に情報を「書く」必要があるわけだが、DNA分子は「そのものが」情報であり、これはデータをコンパクトに保存する方法なんだ。


訳者あとがき から抜粋


ポール・ナースは生物学の世界における巨人である。

2001年にノーベル生理学・医学賞も受賞している。

でも、日本の一般読者には、もしかしたら馴染みが薄い人かもしれない。


生きものの増える仕組みが、あらゆる生きもので同じだということから、本書の245ページでポール・ナースが述べているように、現在の地球上の生きものの誕生は、35億年の歴史の中でたった一回だけ起きた奇跡であり、全ての生きものは、われわれと親戚関係にあることになる。

これほど壮大な物語はないであろう。

私はよく思うのだが、教科書風のまとめなんぞ、どうでもいい。

大切なのは、こういった驚くべき発見をした本人による「生の物語」を読んだり聴いたりすることだ。

そこにこそ、科学という営みの本質が隠されている。


この壮大な物語こそが、若きポール少年が葛藤の末に捨てた聖書に代わるものであり、現時点における人類の知の到達点なのだ。


ただし、ポール・ナースの立場は神の存在は証明できず、知ることが不可能だという不可知論であり、単純に神を否定しているわけではない(きわめて科学的な態度だと感じる)。


なぜ今、このような一般向けの科学書を彼は書いたのか。

この本の随所で、彼は、現代社会の危機に言及している。


私は文系だから科学なんぞ知らなくていい。

私は経済人だから、私は政治家だから科学はいらない。

そう考える人が多ければ、人類は、ウイルスとの戦いで劣勢に立たされてしまう。

新型コロナだけではない。

人種やジェンダーで人を差別したり、地球温暖化を否定したり、科学を学ばないことによる弊害は極めて大きい


私は数々の科学書を翻訳してきたが、これだけ心を打たれた本は、初めてだ。

それほど、ポール・ナースという科学者の家族・友人・先輩・同僚・部下・人類、そして生きものへの愛情を感じた。


竹内薫先生の訳者あとがきも感動的ですが


本編ももちろんそれに負けず


というか本編があるから、竹内先生の


あとがきにもつながるわけでございまして


両方素晴らしいというのは


言わずもがでございます。


こちらも山中伸弥先生が出てこられます。


日本の誇りだなあと感じ入る今日この頃です。


生物学とは直接の関係ないのかもしれないが


自分としてこの書で印象的だったのは、


ポール博士の実の母親と思っていた女性が


実は歳の離れたお姉さんだったという件で。


よくネガティブにならずにおられたなあと。


誰でも幼少期というのは思うようにならない、


幼少期に限らず人生が、ってことなのだけど


このエピソードは何故か胸を潰されるような


思いがしましたことをここに謹んで


ご報告させていただきたく存じます。


 


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