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自分の読書術を考察(なのかこれ?) [’23年以前の”新旧の価値観”]


井上ひさしの読書眼鏡 (中公文庫)

井上ひさしの読書眼鏡 (中公文庫)

  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/10/23
  • メディア: 文庫


不眠症には辞書が効く から抜粋


その日に届いた書物を、書庫から仕事部屋に運んで、

「すぐ読む」

「そのうちに読む」

「いつか読む」

の三つの山に分ける。

読み終えた書物は、これもまた、

「机の近くに置く」

「後日のために書架に並べる」

「郷里の図書館、遅筆堂文庫に送る」

の三種に分ける。

これがわたしのもとへ届いた書物の、おおよその動きです。

なかには仕事部屋へ運ぶのさえもどかしくその場でページをめくってしまうものもあって、たとえば、大江健三郎さんの最新作、『取り替え子(チェンジリング)』がそうでした。

冒頭の五行に途方もない仕掛けが用意されていて、そのままその場に釘づけ。

その上、文章は質が高いのに、じつに柔らかで、一語一語がこちらの体に染み込んでくるような気配、しかも事件を伝える小説家の作業が次第に「祈り」そのものまでに高まって行き、やがて、これからの人間のための新しい信仰というテーマが行間から迸りはじめ、火の気のない書庫で心を熱くしながら3時間、立ったまま一気に読んでしまいました。


素晴らしい読書体験。


そして、それをいいあらわす言葉と文章。


自分も若い頃は10時間くらいぶっ続けで


読んだりしてた。(2、3冊だけだけど)


もう今は無理。


最長2時間が限度。最短5秒。


こういうのもだんだん短くなるので


寂しいかぎりです。


そういえば、だいぶ以前、大江さんに、

「不眠症をどのように克服なさっておいでか」

と質問したところ、このの希代の読書家からこんな答えが返ってきました。

「このところ一年がかりで大野普さんの『岩波古語辞典』を読みました。

この方法だとよく眠れますよ」

試してみて、その効果にびっくりしました。

なにしろ、辞典には物語も伏線もクライマックスもありませんから、いつでもやめることができます。

「このあと、この単語の『建蔽率』の運命はどうなるんだろう』

なんて考えなくても済みますから、すぐに眠りに落ちてしまう。

それ以来、この大江式就眠法で不眠症を退治しています。


事典(辞典)も良いだろうけど、


何よりも仕事で身体が疲れると眠れますよ。


なんか、これ、三島由紀夫先生が


「太宰治の悩みなんか、寒風摩擦で治る」


みたいな物言いで、嫌な感じに聞こえるかも


でも、そうではありませんから。


体験からですから。


って三島先生もそうだったかもしれないけど。


知識を磨く二冊の事典 から抜粋


年表で読む哲学・思想小辞典


日本史事典


の二冊を購入された井上ひさし先生。


その理由の文章が素敵でございます。


わたしは系統立てた勉強を、何一つ、してこなかった。

そのくせ、年をとるごとに、さまざまな知識を取り込んでしまう。

当然、アタマの中はつぎつぎに放り込まれる知識の切れっ端が山をなして、物置同然です。

知識を持っているだけでは、単なる物知り。

これらの知識をうまく組み合わせて、なにかもっとましな知恵を産み出したい。

そこで、この種の事典が必要になる。

まず、概説的説明で、アタマの中の知識をきちんと区分けして文脈をつくり、つぎに事典的説明で、区分けした知識の一つ一つを丁寧に磨き上げようというわけです。


世界の真実、この一冊に から抜粋


ごく稀に、

「この一冊の中に、この世のあらゆる苦しみと悲しみ、そして喜びが込められている、世界の真実のすべてがここにある」

と、深く感銘をうけ、思わず拝みたくなるような書物に出会うことがあります。

中村哲さんの『医者 井戸を掘る』は、まちがいなく、その稀な一冊でした。


最近、歳のせいか、


読書の仕方が変わってきて、


面白そう、面白い、だけではなく


副次的な影響とでもいうか、


ためになる、感動まで消化される、


読んだ時間が有効だったわあ、


後でもう一回読みたい、


忘れたくない、


家族に伝えたい、日常生活が豊かになる、


確実に安い買い物感、


読み飛ばして深く考えないで次!


なんてのも思う。


(そんな理屈っぽいものじゃないけど、


あえて書き出してみると、ってことで)


その視座でいうなれば、


井上ひさし先生のこの書物は


素敵な文章で心透きとおり、かつ、


紹介された本が読みたくなる


という感じだった。


「良いもの」に出会うと


腰が浮く感じとでもいうか


こうしてはいられないって


無意味に思うのだよね。


(意味じゃねー、とは養老先生や


チャップリンさんも似ていることを


おっしゃるけど)


余談だけど、今まで言ってきた


自分の読書メソッドを


どんでん返しのようにひっくり返すけど


晩年の小林秀雄先生、


若い頃、本を読むのは


仕事ってこともあったのだろうけど、


どうやっつけてやろうかと思いながら読んでたが


最近はただ読むだけのために読むから、


楽しいですよ講演のCDでおっしゃっていた。


その境地にはもう少し、


かかりそうだなと思わざるを得ない。


いや、至っているのか?


煩悩なのかな、こういうんも。


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