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「絆」を築くケア技法 ユマニチュード: 人のケアから関係性のケアへ :大島寿美子/イヴ・ジネスト /本田美和子著(2019年) [’23年以前の”新旧の価値観”]


「絆」を築くケア技法 ユマニチュード: 人のケアから関係性のケアへ

「絆」を築くケア技法 ユマニチュード: 人のケアから関係性のケアへ

  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2019/10/02
  • メディア: 単行本

腰痛で休んでいる間、読んでいた書籍。

2022年、最後の本でした。


勤務前、コンビニの駐車場でも


読んだりしてたってのは


どうでもいいことでした。


序文 本田美和子


から抜粋


私は米国で老年医療を学び、帰国してからも臨床医として働いてきましたが、脆弱な状況にある高齢の患者さんに私たちが届けたい医療を受け取ってもらうことの難しさを日々感じていました。

とりわけ認知機能が低下している方々への対応には、医療・介護従事者のみならず、ご家族も社会も新たな取り組みが必要となる時代になってきたことを痛感する中で、フランスにこれまでとは異なるやりかたでとても穏やかに受け入れてもらえる技法があることを知り、2011年の秋にフランスに見学に行きました。

そこで見たものは

「ケアする人とは何か」「人とは何か」を考え

「あなたのことを大切に思っています」

というメッセージを相手が理解できる形で届けるために、複数のコミュニケーションの要素を組み合わせて同時に実践する、というケア技法「ユニマチュード」でした。


第一章 自律を保証するケア~フランスのユニマチュード認証施設の取り組み


から抜粋


壁際に置かれている機械をジネスト氏が見つけた。

立位補助機だ。

ジネスト氏が使い方を実演する。

椅子に座った状態で背中に柔らかなクッション付きのベルトを回す。

足を台の上に乗せ、膝を板状のパッドにつける。

ベルトをハンドルに取り付け、ハンドルを握ってもらう。

スイッチを入れるとハンドルが斜め上に上がり、身体が伸びて立てる仕組みだ。

背中のベルトに寄りかかることができるので、膝の力が弱い人でも立位を保持できる。

「これで立って保清ができます」とジネスト氏。

「これがあるおかげで職員の負担軽減にも役立っています」と施設長が言う。


「立位補助機」のある施設は、


そうそうないのではなかろうか。


知ってる施設という狭い範囲なのだけど。


ここでも格差社会は否定できない


現実なのだろうか。


だとしても、この技術で


ご利用者や患者の健康を維持向上でき


家族の負担も減るのであれば


これから多く受け入れられるのは


必定なのだろうなと感じた。


一同が驚いたのは夜間の排泄のケアについての説明だ。

看護部長のソフィーさんが言った。

「夜におむつ替えはありません」。

ジネスト氏が続ける。

「ユニマチュードでは寝ている人を特別な時以外は起こしません」。

おむつを替えるために起こすということはない。

夜間のおむつ替えをしないことでコストも安くなる。

入居者一人当たりのおむつ代は国平均の約半分に抑えられているという。


ジネスト氏によると、以前にこの施設を視察したカナダの施設の関係者が驚いていたという。

カナダの高齢者より若々しく元気に見えたからだそうだ。

「年齢が若いからではと言われたが、年齢はフランスの方が高かった。

どちらもアルツハイマー型認知症で認知機能もほぼ同じなのに、カナダの施設の関係者には軽度に見えた。

状況は同じでもケアの方法でこんなに違うんです。」

ジネスト氏によると、フランスでは行動障害のある認知症の高齢者は、平均すると約3年間施設で暮らし、そのうち2年間は寝たきりである事も多い。

しかし、ユニマチュードのケアを取り入れている施設では、4年間穏やかに暮らすことができ、寝たきりになるのは亡くなる前のおよそ一週間だけだという。

ジネスト氏はこうもいう。

「重度の認知症の高齢者に経管栄養を行う施設も多い。しかし見てください、ここに鼻からチューブを入れている人はいますか?一人もいないでしょう」。

言われてみれば確かに鼻からチューブを入れている人はいない。

施設は明るくきれいで、出会った入居者は穏やかに暮らしを楽しんでいるように見えた。

「そういえば大きな声を出したり、怒ったりしている人もいなかったなあ」。

ケアの仕方にもよるものだとジネスト氏は言うが本当なのだろうか。

ユニマチュードを宣伝したいからそう言っているんじゃないだろうか。

うがった考えも頭に浮かんでくる。


そういう側面ももちろんあるだろうと思う。


ジネスト氏は研究所を構え、


運営していかないとならないようなので。


とはいえ、動機は何なのか気になるところ。


それは、若い頃に端を発しているようで


ビギナーズラックとでもいうべき、


余計な知識がないから


発見しうることだったのかも、というエピソードが。


第二章 互いを認め合うケア~ユニマチュードの哲学と技術


それは驚きから始まった から抜粋


ユニマチュード誕生のルーツとなる印象的な逸話がある。

今から40年前、創始者であるジネスト、マレスコッティ両氏がまだ20代の頃の話だ。

二人は体育学の専門家として、看護師を対象に腰痛予防教育をする仕事をしていた。

ある日、ジネスト氏は、身体の大きな男性患者のケアに立ち会うことになる。

脳血管障害で半身麻痺の男性。

ベッド上の清拭、着替え、車椅子の移乗が日課だが、移乗の介助で看護師が腰痛を起こしており、見本を見せてほしいと頼まれていた。

目を閉じたまま、話をする事もない男性。

看護師たちが手際よく清拭を行っていく。

看護師も患者に話しかけることはない。

着替えが終わった。

次はベッドから車椅子への移乗だ。

実はジネスト氏にとってこれが初めてのケア体験だった。

男性の状態が見るからに重篤そうだったため、正直言ってどのようにすればいいかわからない。

混乱の中で思わず出たのが次の言葉だった。

「車椅子に座っていただきたいのですが、起き上がれますか」。

すると男性は目を開け、ジネスト氏の手を取って自分で起き上がりベッドの端に座った。

そして誘導に従ってジネスト氏の身体をつかみ、車椅子に自分で乗ったのである。

驚いたのは看護師たちだ。

というのも男性はケアの最中に自ら動こうとしたことがまったくなかったからである。

「私たちがやるときまったく反応がないのになんで?」。

しかし、ジネスト氏はむしろ彼女たちの反応に驚いたという。

なぜなら、看護師たちは、動けるかどうかを本人に尋ねていなかったからだ。

この体験からジネスト氏に生まれたのは、患者ができることまでケアをする側がやってしまっているのではないかという疑問だった。


第三章 点から面へ~日本でのユニマチュードの広がり


ユニマチュード、学校へ から抜粋


2019年4月。

北海道のある大学の看護学科の一年生約90名にジネスト氏が話しかけた。

「患者さんのことを大事にしたいと思いますか?」

学生たちがうなずく。

「人の尊厳は大切だと思いますか?」

学生がうなずく。

「日本は民主主義ですか?」

「イエス」と声が上がった。

「ありがとう。民主主義って何ですか?」

学生たちが真剣な眼差しでジネスト氏を見つめている。

ジネスト氏が黒板にこう書いた。

「DEMOS CRATOS」

「これが語源です。DEMOSは人々ということです。みなさんと私。

CRATOSは権力です。人々が力を持っているということなんです。

2500年前のギリシャの哲学者が民主主義という概念を作った。

哲学から生まれた。

でも王様や皇帝がいる国では民主主義はなかった。

1789年にフランス革命が起き、人権という新しい概念が生まれました。

人権は大事でしょうか?

もちろんです。

私たちの社会ではとても重要な基礎概念です。」


フランスならではの発想なのかもしれない、この技術。


人権、尊厳。あと普通に、自由、平等、博愛。


これにも色々な言説ありますけど、


それはひとまず置いといて。


フランスというか、ヨーロッパならではなのかな。


イヴ・ジネスト氏インタビュー から抜粋


技法にユマニチュード(Humanitude)と名づけたのはなぜですか?

ジネスト■

ユニマチュードという言葉は特別な意味を持っています。

それは「人類」とも「人間性」とも違います。

ユニマチュードとは、人間と良い関係性を結ぶための科学と哲学です。

ユニマチュードという語を最初に知ったのはスイス人の作家が書いたエッセイのタイトルとしてでしたが、その語に私たちは独自の定義を与えました。

「ude」で終わる語は深くて重要だという意味が付け加わります。

例えば、sole(たったひとり)にudeが加わるとsolitude(孤独)、fin(終わり)にudeが加わるとfinitude(有限性)になります。

Humanitudeは、人(Human)の後にudeがついていることで、深遠な気持ちが加わるのです。

人間らしくあること、あるいは人間らしさを取り戻すこと、が意味になります。


「ヒューマニチュード」が正しくは、なのだね。


日本語にない発語で、「ユニ」になってしまうのかね。


どうでもいいことだけど。


おわりに 大島寿美子 から抜粋


ユニマチュードについては興味を持っていたものの、技術については何も知らなかった。

インストラクターが入居者に関わる様子を見学したが、何が起きているのかよくわからず、

「魔法」のように劇的に変わる瞬間もなかった。

だが、不思議なエネルギーを感じた。

ふと頭に浮かんだ言葉が、「いま、ここ」だった。

昨年1年間、フランスの施設を視察し、10週間のインストラクター研修に参加し、日本での研究や実践の現場を取材して、あの時の感じは、今この瞬間に「良い関係を結ぼう」とするエネルギーだったのだとようやくわかった。

私は、ケアの技術は、ユニマチュードしか知らない。

インストラクター研修では、それがかえって良い結果をもたらした。

他を知らなかったために、先入観や価値観が邪魔しなかったのが幸いした。

私に取っては未知の参与観察のフィールドだった。

毎日が発見の連続で、他の研修生の現場の話からも学ぶことが多かった。

ケアをする人たちの苦労や努力を知ることができた。

なにより、実習先の病院や施設でケアさせてもらった経験は強烈で、いまもその感覚ははっきりと身体に残っている。

それは、ユニマチュードの技術を見て、話し、触れたからこその経験だったと思う。

特に私は、ケアをする人とケアを受ける人の関係に注目していた。

言い換えると、援助者と非援助者の関係がどのように変わるのかに注目して、フランスで行われているユニマチュードの実践を観察し、ユニマチュードの理論と実技を学び、ユニマチュードを活用した教育や研究の現場を見てきた。

その点から見たユニマチュードの魅力は、援助者と被援助者という非対称の関係に生じている緊張を具体的なコミュニケーション技術で解消できることにある。


いろんな仕事にも通じるのだろうけど


患者・ご利用者との「良き関係性」というのは


「良い仕事」を育むのには必須だからね。


あと「エネルギー」というか「熱量」かね。


暑苦しくない程度で、実力から来るような


恬淡としたもので。


ユニマチュードについて感じたことは


「技術」とか「技法」というよりも、


ジネスト氏いうように「科学」と「哲学」なのかな。


実証実験からの検証でエビデンスを残し


2019年から日本でも学会が設立されているようで。


発行年から考えるとそのプロモーションなのだろうね。


正直に言ってしまうとフランスには


30年前、2−3日旅行した程度で何ともはや


あまり良い印象のない自分なのだけれど


営利目的ではない、こうした高い志を持った


技術、技法、哲学によって


一人でも救われることを切に願う次第です。


それよりも、早く風呂入って寝ないと!


ブログ書いている場合じゃない。


明日、仕事でした。


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