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「バカの壁」をぶち壊せ! :養老孟司・日下公人共著(2003年) [’23年以前の”新旧の価値観”]


「バカの壁」をぶち壊せ!

「バカの壁」をぶち壊せ!

  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2003/09/19
  • メディア: 単行本

カバー袖に、お二人のダイジェスト的なコメントから引用。


■日下公人

マクロ経済学はアメリカの大不況の前後に生まれた経済学ですから、需要はいくらでもあったが、金がないという時代の貧乏経済学です。

供給過剰の時代となったら、マクロ経済学の理論は通用しません。

だから、「エコノミスト」と言われる人たちの予測があたらないのは当然です。

かつてケインズは、

「経済学はいずれ死ぬ。みんなが満足して欠乏がなくなってしまえば経済学はいらない。それは金利が1%になったことによってわかる」

と言っています。

だから、今、経済学は死にました。

ケインズ経済学派の人たちはみんな失業していないといけません。


■養老孟司

銀行の問題となると必ず出てくるのが「不良債権」という言葉ですが、あれは、「不良借主」のことでしょう。

債権というニュートラルなものに、不良品があるという感覚を押し付けていますけど、結局は、借金を返さないっていう奴がたくさん出てきたというだけのことです。

日本も将来を考えた改革を何かしなければいけないとしたら「参勤交代」はどうかと僕は思っています。(笑)

日本人全員が都会と田舎の二つ住所を持って、一年のうち、半分は都会に、半分は田舎という風に参勤交代をすればいいんです。


これだけでは当然足りてない、


お二人の知性が横溢しまくり


一般の常識からは見えないくらいの高さまで


跳躍されている書籍だった。


 


まえがき 日下公人 から抜粋


昔、江戸時代の人は「老後」と言わず、「老人」と言って、ご隠居さんになる日が来るのを楽しみにしたというが、私にもそんな日が突然やってきた感じの対談だった。

ロジャー・ベーコンは人が無知になる原因として、

 

 ①権威を崇拝して思考停止になる

 ②旧慣墨守で新しい刺激を受け付けなくなる

 ③大衆迎合で目立たないことを第一に心がけるようになる

 ④知ってるふりをする

 

などをあげたが、そういう人生態度を超えると面白い発想が次々と汲めども尽きぬ泉のように出てくることを養老先生は示してくれた。


「自分のことは棚にあげるクセがつくと無知になる」

というのをベーコンの法則の五番目に付け加えておきたいと思ったが、それを本書のまえがきにも書き加えるとしよう。


第一章 経済学者を決して信じてはいけない


三 数字には詳しくても、経済に詳しくない経済学者


●雑学を知識だと勘違いしているのが日本人であるーー養老孟司


から抜粋


今年にはいってから、SARS(重症急性呼吸器症候群)のことが心配だとか言っていましたが、SARSのことを理解している人はいない。


タバコの害に対する影響だってそうです。

以前、イギリスが中国の数都市で、肺がん発生率の統計を取るという疫学調査をやったところ、一番多い都市と一番少ない都市との差が四十倍くらいありました。

ということは、肺がんの理由がタバコのはずがないんです。

一般的な大気汚染の影響で肺がんが増えていることは分かっています。

大気汚染ということは、ディーゼル燃料から始まって自動車エンジンは全部問題です。

それを言えないから、タバコに罪を負わせてる。

すべての航空会社が禁煙になったのもおかしい。

禁煙を許す会社があったっていいはずです。

たけど、そう言い始めた途端に、そうした意見は潰されてしまう。

どこかに政治的な動きがあって、誰か仕掛け人がいるはずですが、メディアはいっさい報道しません。

ニクソン大統領の時の反捕鯨運動がそうです。

ベトナム戦争で枯葉剤をまいたことが問題になりそうだから、矛先を他に向けようということで、反捕鯨運動をやれという話になった。

相手はノルウェーと日本だけだから、アメリカにとって全く害がない。

たぶん、タバコも何かの目くらましだと思います。

犯人像に最も近いのは大気汚染の元凶、つまりは自動車産業、あるは石油産業でしょう。

それがあるから、僕、あえてタバコを吸っているんです。


四 マクロ経済は欲望が肥大化した「地獄の経済学」


●経済活動は脳の働きが三次元化したものであるーー養老孟司 から抜粋


実体経済というのは、それ自体が脳そのものではないかと思います。

お金の単位というものは全部「一」です。

それを脳細胞でいうと、一回の信号のやりとりです。

神経細胞が興奮すると、脳の神経細胞=ニュートラル・ネットのある部分で一瞬、パルス(電気信号)が発生して、それが次々と伝わっていきます。それが「一円」ということです。一秒間にパルスが何回発生するかでどれくらい興奮しているかがわかります。

普段考えこともないかもしれませんが、人間の体というのは、眼から入っても、耳から入っても、足から入っても、全部、神経細胞の単一のパルスに変換されています。

そうすると、それは、一回の変換ですから、一回の興奮が一円になります。

興奮は生理的プロセスですから、一回の興奮には10ミリセコンド=100分の1秒単位の時間がかかります。

頭の回転の速い人も遅い人も、この速さに違いはありませんから安心してください。

その後に不応期といって、やはり100分の1秒の休みがあって、その時間はたとえ正面から叩かれても、外部からの刺激には反応できません。

神経細胞の興奮は完全にデジタルになるわけです。

「1」と「0」です。


経済用語にキャッシュフローというものがありますが、それもまた、脳の中を、一つひとつのパルスが行ったり来たりしている動きを想像すると、お金をやり取りしているのと同じです。


基本的にお金というものがなぜ生まれたかを考えると、お金と脳に入る情報の性質を外の世界に出したものだというのが僕の意見です。

人間の脳には無駄が多いというところも似ています。

犬や猫だって結構無駄なことをしています。

逆に昆虫とかはほとんど無駄なことはしません。

脳が非常にかっちりとできているからです。

ロボットと同じです。

生き物というのは色々な原則を持っていますが、その一つがいらないものはどんどん省略してしまうことです。


人間は脳を大きくしてしまったから、脳を退化させずに使うために、しょうがないから頭の中をぐるぐると無駄に回していくことがどうしても必要になりました。

神経細胞のやり取りを頭の中だけでやるようになったのです。

常にテレビを見たり、ゲームをしたりして刺激を与えています。

これが哲学者や数学者となると、刺激がなくても自分の頭の中で刺激を作って回すことができるようになります。

経済もそれと似ています。

だって、食っていけるだけのことをして、普通に暮らせるので十分だったら、こんなに財貨はいらないはずです。

それをどんどんどんどん大きくせざるを得ないから大きくしているということでしょう。


●現代人が毒されているマクロ経済学は「地獄の経済学」ーー日下公人


から抜粋


それはアダム・スミスから始まる間違いです。

彼が経済学を作ったとき、ニーズ(必要)と言わず、ウォント(欲求)とかデザイア(欲望)といいました。

欲望は無限大です。

「必要の経済学」としていれば、「もう結構」という限界があったのが、欲望という言葉で経済学をスタートさせたので、その後に続く人は、「利益の極大化」などと言い出した。

極大化とは天井知らずということで、まさに、「地獄の経済学」になってしまいました。

無間地獄です。


「ニーズ」「ウォント」とかでドキュメントを作ってた会社員時代。


スミスさんだったのかと無知の知を知る。


そしてそれをもさえ否定される方がいるのですね。


スミス氏の言説とは時代が違うから一概に間違いとも


言えないような気も微量にありますけど。


 


第六章 日本共同体が21世紀の世界を救う


五 21世紀的「参勤交代」で苦境を乗り切ろう


●人口が減るのは若者にとってはチャンスであるーー日下公人


これから少子高齢化ですから、どんどん人口が減って、若い人たちにはチャンスです。

家は余ってくるし、電車は空いてくるし、病院も空いてくる。

今は一人っ子が多いでしょう。

一人っ子の夫婦で親が死んだら、家が二軒もらえるんです。


持ち家で、資産価値のある場所にあれば、って話だよねえ。


普通はそうじゃないこと、多いからなあ。逆に赤字の可能性も。


管理維持にもお金かかるしなあ。


これは当てはまらない人多いのでは。


シリアスにとらえず、楽観論でいなさいってことで。


 


●若者特有の近視眼的な見方を見直してみるーー養老孟司


若い人というのは、その時、その時の短いスパンでしかものを考えられないんです。

僕だって、若い頃のことを考えると、基礎医学の中でも解剖学なんてものをやっていたら、お金に縁がないというのは当然の常識でした。

この年まで働いてみてやっと、若い時の考えなんて、高が知れているということもわかる。

予想なんてつくものではありません。

歳を取ればさすがに長生きしている分だけ、多少は見えるようになるけれど、若い時は本当に近視眼的な生き方です。


●人生なんて予測がつかないから自然のままに生きるーー日下公人


70歳になったら、どんな人間でもみんな一緒になります。

学生時代に私に三倍も勉強した人だって、同じようにおじいさんです。

〇〇省で次官になって、どこかの副総裁になって、続いて総裁になったけど、行政改革のおかげで給料が3割カットされて、天下りもすぐにできなくて二年間ぶらぶらしていたと愚痴を言う。

庶民からすればとんでもない話だけど、本人にすれば、予測が外れて相当ショックだと思います。

本当に若い頃から真面目に働いてきた人です。

残業、残業を重ねていました。

人生は予測なんてつかないんです。

早めに官庁をやめて、田舎の大学で教授をやっている人の方が幸せで、長生きしているんです。

出世が目的だったのか、それとも老後の収入や精神的満足が目的だったのかは、人それぞれですが、彼の場合、予測が外れたとぼやくのであれば、賢明でなかったことになります。

「自分はバカだった」とは言いませんでしたが、「バカを見た」とはいってました。


養老先生、他の書籍でも言っていたけど、


アメリカの属州に日本はなれ


そうすれば、集団的自衛権の問題やら、


他のややこしいものもクリア、とか


イラク戦争を小泉首相、支持するっていうのは


「道義的には問題あるが…」を枕詞につければまだよかった


とか、東大時代の東大の滑稽さを強くバッシングされたり、


飢え死はやばいが、失業は別にやばくない


ホームレスは方丈記の世界のようで理想でもあるとか


日下先生、日本は原爆を持つべきだとか、


グローバルスタンダードはそもそも間違いとか


テレビ出演時、キャスターと雑談して本番になったら


キャスターが自分の言説をまとめて最初に話すから


言うことなくなった如く、マスコミはパクリが横行しすぎ


とか、驚愕かつ度肝抜きの論説がスパークする。


 


こういう日本の今とこれからを


短絡的に嘆くような輩もおられると察しますが


そことの決定的な違いがございまして


若い人に譲ろうよ、墓にお金や名誉は持っていけないんだから


でも、言いたいことは自分の経験から生きてるうち言っとこう


後のことは知らないよ、自分は生きてないんだから


でも子孫もいるからちと心配かなあ、それと


対談相手とシンパシーがシンクロするから


後世に残しておくとするか、


という感じだった。


 


自分はそういう大人に好感を持ってしまうし


まだ働いているものたちとしては


そういう大人になり、そして老い方をして


若い人とも融合するのが


理想なんではないかなあ、と


すべて支持するわけではないし


絶対うまくいくという保証はないけど、と思った。


 


それにしても、2022年も間も無く12月。


物音ひとつない静かな夜明けでございます。


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