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資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く:水野和夫・山口二郎共著(2019年) [’23年以前の”新旧の価値観”]


資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)

資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)

  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2019/04/27
  • メディア: 新書

はじめに ー 次なる時代を読む手がかりとして 山口二郎


から抜粋


平成という時代は、民主主義を求める戦いのなかで、行きつ戻りつの時代だった。

人間は未来を見通す能力を持っていない。

過去の失敗を見て、学ぶことができれば、それだけでも賢者である。

平成が終わり、令和を迎えた今、混迷のなかで自分が何を希望し、どこで失敗し、もがき苦しんだかを総括することには意味があるだろう。

この時代は、経済の世界で20世紀の、あるいは第二次世界大戦後のパラダイムが通用しなくなる大きな転換が起こっている。

その衝撃が政治の混迷をいっそう深くしている。

そのことは日本だけではなく、アメリカでも西ヨーロッパでも共通した現象である。

政治学者と経済学者の対談から、この時代に何が終わろうとしているかを明らかにすることで、次に何を目指すべきか、手がかりが見えてくることを願っている。


民主化のうねり ー 山口二郎 から抜粋


明仁天皇が即位に際し、

「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国連の一層の世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません」

と述べられています。

ご自分の立場が憲法にもとづかれていることを明言された、この「おことば」は、新時代の到来を予感させました。

(略)

元号が「平成」に変わると、政治の民主化が進みます。

昭和天皇が亡くなられて、戦争の記憶は歴史の彼方へ次第に遠ざかり、戦争を引きずる時代が終わりました。

そのことが、戦後の憲法体制と民主主義体制の正統性を、保守の側からも共有する動きにつながります。

民主化とは端的に言えば、「国のあり方は国民が決める」政治体制を形成していくことです。


昭和から平成に変わる時の


天皇陛下のお言葉に「国連」が


含まれていたというのは忘れていたというか、


若い頃だったら気にもならなかったのか覚えてなかったが


今のウクライナのような状況の時、国ではない


働きかけのできる組織が、必要だと痛感する。


今の国連がそういった機能を果しているか、


どうかは別として。


果たせてないからまだ継続なんだろうな。


この後、山口・水野さんたちの時系列に沿った見解は


戦後55年自民党体制から


民主党への政権交代、経世会の分裂、小泉政権、


同時多発テロ、リーマンショックのことなどなど


平成の三十年間を総括され、


俯瞰して分析するのは適された書籍ではあるものの


やはり自分としてはこれからどうなるかが


性急かもしれないが、気になる。


 


AI失業者への”手切金” ー 水野和夫 から抜粋


AIの急速な発達により、職場環境の激変や職を失うことが盛んに議論されています。

野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究によれば、2030年ごろには日本の労働人口の49%が自動化される可能性があるそうですが(「朝日新聞」2019年1月3日)私もAIによる失業、いわゆる「AI失業」は起こりうると考えています。

(略)

フランスの哲学者パスカルは「人間は考える葦である」との名言を残していますが、来るAI社会は

「もう考えなくていいよ」という人を、増やすことになるのかもしれません。

機械が筋肉労働をする場合、コンピュータ制御室にいる人間が監視していました。

しかし、AI社会では、それさえも人間はしないことになるでしょう。

AIを成長の切り札にしようと考えている人たちは、「考えない人」は社会にとって不要だと言い出しかねず、一級市民と二級市民に選別するようになるかもしれません。

かつて、その選別基準は能力や、それにもとづいた地位・財産でしたが、今後は「考えてほしい人」と「考えなくても良い人」になるわけです。

民主主義にとって大きな脅威になるのではないか、と危惧します。

このようなAI失業に備えて、リフレ派(ゆるやかなインフレが経済成長をもたらすと考える人々)を中心に「ベーシック・インカム(BI)」構築の主張がなされています。

(略)

2017年、フィンランドでは、無作為に選ばれた2000人の失業者に月額560ユーロ(約7万円)を支給する実験を行いました。

(2018年12月実験中止)

BI推進論者は、「BIは生活保護とは異なり、働いても給付が減らない」と言いますが、私に言わせれば、これは”手切金”です。

一律に支給するから、「あとは病気になろうが面倒見ないよ」ということでしょう。

これでは、ますます社会を分断させていくだけです。

何よりも、それによって消費が進み、経済が回り、国が豊かになるとはとても思えません。

「AIを導入する」というと、さも最先端であるかのように聞こえますが、非効率を全部、人間のせいにする経営者のほうがおかしいのです。

仮にそうであるなら、経営者もAIと交替したほうがいい。

そのほうが効率的ですし、AIはけっして平均的年収の200~300倍といった法外な高給を要求しませんから。

AIによって社会はどう変わり、どう対処していくか。

政治家はきちんと説明すべきです。


フィンランドの件、失敗だったと色々言われていて


構造に欠陥あり、とか、人数が少なすぎるとか。


しかしやったことのフィードバック検証は参考になるのでなかろうか。


AIは経営者をそれにしたほうがいいってのは、言い得て妙ですよなあ。


批判するつもりはないんだけど、仕事しない人が


高給取りという構図はどう考えてもおかしいから。


それはさしおいて、BIですぐに幸福という公式には


なかなかなり得ないというのは想像に難くない。


BIと言っても、これまたさまざまな意見があるものなのだな


と水野さんの言説を読んで思った。


 


おわりに ー 資本主義は終焉しても、民主主義は終わらせてはいけない 水野和夫


から抜粋


平成の時代、日本経済は他の先進国に先駆けて、ゼロインフレ。ゼロ金利、ゼロ成長の時代に突入した。

世界を見れば、先進国の成長の減速と呼応するように、グローバリゼーションが地球のすみずみに浸透していった。

「成長があらゆる怪我を治す」という近代の価値観からすれば、グローバリゼーションこそが成長の切り札だったはずだが、先進国のみならず、新興国においても成長鈍化が著しい。

リーマン・ショックが起きる前、FRBのグリーンスパン議長(当時)やアメリカの政治学者フランシス・フクヤマは、グローバリゼーションは中産階級を強化する、民主主義を世界に広めるなどと言ったが、平成が終わる現在、まったく逆の現象が起きている。

「成長」政策で怪我は治るどころか、ますます事態は悪化している。

具体的には現在、世界各国の巨額の政府債務残高は膨らみ、格差拡大が貧困化を生んでいる。

むしろ「成長」政策は階級社会を招来しているし、オックスファム・レポートで明らかなように、富の集中が加速している。


ここでも、この後アダム・スミスの『諸国民の富』を


引かれていて興味深かった。


「資本主義」と「民主主義」はセットで語られてきたけれど


全く異なる「主義」なのだろうね。


「民主主義」これを終わらせてしまうことは、


何かを終わらせてしまうことになるのだろうと


胃の痛くなるような書籍だった。


この書籍から3年、コロナ禍で世間が目まぐるしく変わる昨今


アメリカがまた自国ファースト、ポピュリズム路線復活なのかと


肝を冷やしていたこの週末、選挙結果は不透明なので


肝は冷えたままなのだけど、それらは昨日コロナワクチン4回目を


打った影響なのかも、と思うことにして今日のところは寝よう。


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