小津安二郎「東京物語」他 : 田中真澄編(2001年) [’23年以前の”新旧の価値観”]
■映画演技の性格 から抜粋映画演技とは、一口で言ってありのままの形、ありのままの気持ちでいい、現実そのままの巧まない仕種、つまり写実ということが映画演技の基本であると云ふことは、昨日も今日もそして明日も変わり無いであろう。然し、こう言ったからといって、映画演技が現実と同じ、つまり写実そのままでなければならぬというわけではない。というのは、映画劇は写実では無いからだ。映画劇というのは単なる写実とは違って現実そのものの再構成であり、もっと完全な、そしてもっと納得のできるような人生の姿を伝えることを志し努めるものである。まことに入りやすく、達し難く。そしてこの道も、結局は人格の練磨に通じるであろう。
禅問答の如く、深いですよ。
私は映画関係者だったことはないけれど、響いた。
あまりにも小津さんの言葉すぎて
「本当かよ!」とツッコみたくなるところあるけど。
余談ですが、笠智衆さんの本からも、
以下抜粋でございます。
小津安二郎先生の思い出:笠智衆著(2007年)『晩春』をご覧になった作家の志賀直哉先生が、何かの集まりの時「笠くん、あの役はいくつだね」とおたづねになったことがあります。僕が恐縮して「はい、50過ぎです」と答えると「僕も50過ぎだが、君の様に手をついて立たんよ」と言われました。うかつでした。本当の年寄りは、歳より若く見せようとするから、手を突いて立ち上がるようなことはせんわけです。そういえば僕も歳をとるほど、なるべく背筋をシャンと伸ばして歩くよう気にかけるようになった。さすが小説の大家。一言に重みがあり、いい勉強をさせてもらいました。
70年くらい前の「50歳」と今の「50歳」では、
いろいろ違うと思うので、この言葉を
そのまま今に照らし合わせることはできないけれど。
それよりも、志賀さんと小津さんと笠さんって
ものすごいトリオだよね。
もはや歴史上の人物たちと言っても
過言ではないのではないだろうか。
思わずメモってしまった。