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奇妙な果実 : 山田五郎監修(1996年) [’23年以前の”新旧の価値観”]

『ウィークエンドライブ 週刊地球TV』という

CNN系の報道・情報番組というのが

1993年から2001年まで

テレビ朝日で毎週土曜放送されていた。

若い自分はこれを観るのを楽しみにしてた。

働き始めて間もない頃で、休みの象徴としても。

キャスターやタレントさんたちが何人かいて、

それが良いバランスをキープ。

知的に世界の中の日本のポジションも

何となく知れた。

放映当初はまだインターネットが

普及前だったので世界情勢とかを

ライトに知れて貴重だった。

その中で息抜きコーナーとして、

担当されてたのが山田五郎さんで、

寄せられた投稿から世界からのおかしな日本

(例えば映画の中で取り上げられる日本が中国だったり、

外国の日本食の日本語がおかしかったり)を

紹介をまとめた本なんだけど、

その山田さんの「まえがき」から抜粋。

今から16年前、ザルツブルグというオーストラリアの地方都市の学生寮に住んでいた頃黒澤明の「影武者」が公開された。
私はたまたま渡欧前、自ら本名と同じ苗字の戦国武将を主人公としたこの映画の撮影現場で死体役のエキストラをアルバイトしていた。
ところがそれを僚友たちに話したらどこでどう間違ったかいつの間にか私は影武者の子孫になってしまった。
つまり私は歩く「奇妙な果実」だったのだ。
しかしこれを西洋人の無知と傲慢さだけのせいにするわけにはいかない。
私が侍の息子にされてしまった原因の大半は私自身の怠慢とドイツ語力のなさ、そしてシャレのわからないゲルマン民族を相手に自虐ネタでウケを狙った浅はかさにある。
無知ゆえの誤解はお互い様。
私もザルツブルグに関してはモーツアルトの故郷で、映画「サウンドオブミュージック」の舞台であることくらいしか知らず、誰もが民族衣装を着て毎日踊っていると思っていた。
だがOBのおやじたちは酔っ払いながらもかの映画で描かれているのはアメリカ人が勝手に作り上げた「ヘンなオーストラリア」であり、アルブスという観光バス会社とサウンドオブミュージック・ツアーがいかに国辱的であるかを滔々と語ってくれた。
それに比べたら私ときたら彼らが考える「ヘンな日本」やハトバスの吉原花魁ツアーを単に面白がっていただけた。
影武者の子孫にされたことは、私にとって苦痛どころかむしろ幸運でさえあった。
多少の失敗は「サムライだから仕方ない」と大目にみられ、ちょっとましな事をすれば「さすがサムライ」と絶賛してもらえたのだから。
日本人が西洋人に押し付けられた「ヘンな日本」のイメージをあえて正そうとしてこなかった理由もここにあるに違いない。
だがこの自虐的な芸風から抜け出さない限り、ザルツブルグの学生寮での私のように日本はいつまで経っても国際社会の「お客さん」のままだろう。
他国に興味ないんでしょうね。
80年代の諸外国にとって「日本」は
遠い異国の地、ファーイーストという
認識でしたからね。
面白みに欠けてたのかもその頃は。
しかし、色々考えざるを得ない、
山田さんの文章。
2022年の今、国際社会から「お客さん」を
脱したのだろうか。
というか、グローバルのくくりに入れたのか、
また、入ることが良いのか。実際よくわからない。
余談だけれど、自分は夫婦でタイに行った時、
雑貨屋さんで、何かの小物の袋を閉じている紙に
印刷されていたものが「キティちゃん」なのだが、
その絵の下には「ドラえもん」のロゴがあった。
著作権の管理、アジア、キチンとしましょうよ。
さらに余談、これまた夫婦で行ったロンドンで、
入った日本食屋さんの名前が
「OZU(小津)」だった。

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